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お城に戻ったけど、まずは王女様に報告なんだって。命令だったから、結果を報告するのは当たり前だよね。で、あたしも一緒に行くことになっちゃって。まあ、ヘザーのこともあるからなんだろうけど。
相変わらず、お城の中は道がゴチャゴチャしててわかんない。宿舎みたいに、どの階でも同じだったらわかりやすいのに。
そうそう、傭兵部隊の宿舎って、横に長くて一番おっきな部分と、キュッと曲がって両側にちょこっと飛び出してるとこがあって。あたしの部屋は、その曲がったとこのひとつ。階段は真ん中の真ん中で、出入り口は一階の真ん中。
出入りは楽じゃないけど、まあ、しょうがないよね。一番上は女の子だけ集めてて、階段すぐの部屋は母さんが陣取ってる。夜は階段も封鎖しちゃうし、一応安全は確保してあるらしいよ?
母さんが怒ったら怖いってのは、傭兵部隊ならだいたい知ってるし。新しい人は、もう早々入ってこないっぽいし。入るにしても、かなり厳しく試験されるんだって。
ついでに、下の階の階段横は、リアムとかイハル兄とかユウガ兄を配備してあるって聞いたし。
どこ通ったかさっぱりなまま、謁見室に到着。
ドア番してる騎士様たちに、エレンさんと将軍は何にも言わない。騎士様たちは黙ってドアを開けてるし。さっさと入ってっちゃうエレンさんたちに、あたしは置いてかれそうになったんだけど……。
急いで中に入って、ちょっと遠い正面に王女様が見えた。んで、あたしから見て左手側に、アルヴィン様が立ってて。
スタスタ歩いてくエレンさんと将軍に追いつくだけで、あたしは精一杯。
うーん、床に敷いてある絨毯、メッチャふわっふわ!
「ただいま戻りました。報告します」
「まず、ジリアンですけど、いつもどおりでした。ただ、ユノ嬢をお気に召したようで、ヴァージルはお役ご免でいいしょう。それから、竜たちは順調に成長しているようです。新たな卵も確認できているので、里自体は問題ないでしょうね。最後に、ヘザーですが……」
それまでスラスラしゃべってたエレンさんが、いきなり言いよどんだ。将軍も言いにくそうにしてるし。
「……その、ユノ嬢を主に選びました……」
「……あらまあ」
王女様が驚いたのか、そうじゃないのか、よくわかんなかったんだけど……顔を見る限り、全然驚いてないよね?
ひょっとして、あたしが行ったら気に入られるって、薄々感づいてたわけ?
「現状では、しばらく里で面倒を見てもらうほかありませんが、当面、ドナで世話の仕方を教えつつ、時々ヘザーに会いに行く形で、ジリアンからの承諾は得ています」
「そうね。引退した竜騎士に竜の世話係をお願いしているけれど、ユノも基本はできた方がいいわ。中には、世話係が気に入らなくて、主がどうしても世話を焼かないといけない竜もいるくらいだもの」
呆れた苦笑の王女様が言い切って、エレンさんが小さく噴き出した。
エレンさんが笑うってことは……その、主が世話焼きする竜ってさぁ……。
「ひょっとしてそれ、ベネットの竜だったりする?」
ベネットってさ、なーんか、やけに竜にかまってるなぁ、って思ってたんだよね。んでも、拾い食いしてお腹壊す竜だから、そのせいかな、とか考えてたんだけど。
「確かに、クレメンタインもひどい方ね。でも、世話係が基本的に気に入らないのは、ドナなの。私が大丈夫と保証しても、嫌がっちゃって。昔は竜舎にも入ってくれなくて、本当に苦労したわ」
へぇ……何か、意外。ドナって、エレンさんみたいに、クールで割り切っちゃう女の子って感じだから、そこまで神経質だなんて気、全然しなかったのに。
……って、あれ? 竜舎なんて、どっかにあったっけ?
そういえば、竜はその辺で見ないし……やっぱどっかにあるんだよね?
「竜舎って、どこ?」
「ヘザーがこっちで暮らすようになったら、きちんと教えるわ。そもそもドナは、あそこに入りたがらないから、いつも離宮のそばにつないでいるし」
「離宮?」
そんなのあったっけ?
あたしが散歩してた範囲には、そんなのなかったけど……さすがに、誰が使ってるかわかんない建物があったら、いくらあたしでも気がつくし。
「ああ、城の地下通路からしか行けないので、あること自体知っている人間が少ない場所です。陛下は離宮暮らしでしたから、乳兄弟のエレンも知っていて当然です」
あ、なるほど。王女様が暮らしてた場所なんだね。ってことは、エレンさんって、お城とか宿舎じゃなくって、その離宮で寝泊まりしてるのかな?
考え込んでたら、四人分の笑い声が聞こえた。
「ん? どしたの?」
えー、ひょっとしてあたし、何かやってたとか?
「笑ったのは、首をこてんこてん動かしてるユノ嬢が、あんまりにも可愛かったからよ。私は確かに、今も離宮で暮らしているわ。兄さんやヴァージルに近いこの城より、あっちの方が落ち着くの。ドナの居場所も確保できるしね」
……うっわ。目に入る場所にいるのもダメなくらい、嫌いなんだ? ホント、徹底してるよね、エレンさんって。
ってか、あたし、そんな変なことしてたんだ……。
「竜の世話の仕方をする時には、離宮に案内するわ。その方が、人目につかなくて私もありがたいの」
「はーい」
そっか、お世話は離宮の方でするんだね。
うわぁ……今から楽しみ!




