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 広間は、名前のとおり、だだっ広くて天井が高い、キラキラした部屋だった。シャンデリアとか、ランプとか、そういうの、王都が落ちた時に壊されたと思ってたけど、無事だったのかな? まさか……王都を取り戻してから、全部作ったとかじゃないよね?

 あたしは、このキラキラに負けそう。ってか、もう負けてる。

 キラキラ眩しすぎて、間違った場所にフラッて入り込んじゃった気がするんだよね。

 入った瞬間、視線がいっぱい、ザクザク突き刺さった。……んー? 前に、将軍と街に行った時にも、こんな感じの空気を味わったような。

 今なら、これが何か、あたしにもわかる。

 悪意。嫉妬。憎悪。そこまではっきり形になってないのかもしれないけど、そういう、すっごくよくない感情。

 グレースが、シャラガラの攻撃に参加するって、なかなか言えないでいた時、解放軍はそんな空気でいっぱいだった。いるだけで心が荒みそうな、嫌な空気でさ。

 あれは、高まってる士気に水を差されてる気がする人が多かっただろうから、しょうがないかなって思ってた。

 んでも、今は違うよね。もう、戦争は、一応終わってるし。

 つくづく、モテる人は大変なんだね、って思う。

「あら、ヴァージル様。お久しぶりですわね。かれこれ、もう十年ほど、お会いしていなかったと記憶しておりますわ」

 将軍に声をかけてきたのは、すっごい可愛い子。グレースみたいな、キラッキラしたドレスがよく似合ってる。口元隠して、お上品で、お貴族様なんだろうなぁ。

 多分、他の人が見たら、十分美少女だよね? あたしは、グレースとかリディとかエレンさんに慣れちゃったから、そこまですっごい美少女には見えなくなってるだけだと思うし。

 うーん、綺麗な子とは思うけど……何か、いい感じはしない。リディですら、見た目そのままって感じだけど、この子は違う。

 何がどうってことは、言葉ではうまく言えないんだけど。

「申し訳ありませんが、どなたでしょうか」

 うっわ。それはいろいろ、直球すぎるでしょ? ってか、将軍があの子の憧れの人だったら、一気に幻想が粉々になるレベルじゃない?

「まあ……何度もお会いしたことがありますのよ? じっくり記憶をたどっていただければ、きっと思い出せますわ」

 あ……将軍がため息つこうとした。それ、やっちゃいけないんだね。必死に我慢してるっぽい。

 確かに、これは面倒くさい。

 ここに将軍置いてくから、あたしは今すぐ帰っていい? って聞きたいくらい、面倒くさそう。

 しかも、お貴族様相手だと、強行突破とか、できそうにないよね。渋々ひたすら相手するなんて、鬱憤たまってイライラしそうじゃん?

「まったく覚えていないことを思い出す不要な労力を、今ここで割く理由はありません」

 ちょっ……待って。エレンさんよりひどいから、それ! さすがに、はっきり言いすぎじゃないの?

 んでも、お貴族様は何とも思ってないみたい。フフッ、って感じで笑ってて、余裕たっぷりだね。

「わたくしたちのことは忘れてしまっても、そちらのお嬢さんのことは覚えているのかしら? ぜひ、ご紹介いただけます?」

 げっ……標的があたしに移った……。

 ってか、将軍に紹介させるんじゃなくって、あたしが自己紹介すれば話は早いじゃん? それしないのが、お貴族様ってこと?

 ……ホント、面倒くさい世界だよね。

 将軍が迷ってる顔で、フッと目を違う方向に向けた。とたんに、あたしの左のほっぺたに、軽く何かがぶつかる。

 ペチッ、って音がした。

「傭兵ごときが……この恥知らず!」

 別に、全然痛くない。痛くないけど、叩かれた上に、そんな暴言吐かれるいわれなんて、あたしにはない!

 衝動的に、あたしの手は彼女のほっぺたを叩いてた。もちろん、左手で、メッチャ手加減して、当たった瞬間に止めるくらいの勢いだよ?

 んでも、後でもめるだろうね。

 まあ、もめごとドンとかかってこいって、今はそんな気分。

「誰が恥知らずなわけ? お貴族様ってのは、最前線には出てないでしょ? 後ろでふんぞり返って、戦場がどんなとこかも知らないで、のほほーんとしてただけじゃん。誰がどこでどんだけ死んだって、知らんぷりでしょ? そんで今さら、戦争に勝ってよかった、なんて、どの面下げて言えるわけ? そっちこそ恥知らずじゃん!」

 将軍の手に乗っけてた手が、ギュッと握られた。

 悪いけど、そんなので止まるあたしじゃない!

「あんたの家、解放軍に何かしてくれたの? 一部のお貴族様は、物資とか資金とか、援助してくれたの、あたしは知ってる。どーせ、何にもしてないんでしょ? それなのに偉そうな口利くなんて、どんだけ偉いわけ? 実際に帝国兵を殺してきた人間より、安全なとこでのほほーんと生きてたあんたが、どんだけ偉いっての?」

「ユノさん!」

 将軍の声は、ちゃんと聞こえてる。でも、止められない。

「偉いお貴族様だってなら、今すぐ戦場出てきなよ。んで、誰でもいいから殺してきたら? あたしみたいな小娘にだって傭兵が務まってんだし、帝国兵を殺せるんだから。もちろん、あんたにもできるんでしょ? やってから『恥知らず』なんて薄汚い言葉、吐きなよ!」

 平気で人を殺せる。そんな自分が怖くって、グレースは泣いてた。魔法が撃てなくなった。でも、ちゃんと乗り越えて、最後まで一緒に戦ったんだよ。

 綺麗に着飾って、安全な場所でのうのうと生きてた人間に、とやかく言う資格なんて絶対ない!

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