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「危ない危ないって言うけどさぁ……」
「お兄さん、教えてあげたらどうだい?」
あたしはバッと、勢いよく、お店のおじさんを見る。ついでに、目をキラキラさせて、ありがとーって全身で言ってるふうで。
将軍のため息が聞こえたけど、気にしない!
「お嬢ちゃんは小さいけど、聞けば理解できそうじゃないか。下手にごまかすより、ちゃんと教えた方がいいんじゃないかい?」
援護射撃に、あたしはぴょんぴょん跳んで、さらに子供っぽさを強調してみた。
もう、これ、絶対、あたしが十六だって信じてもらえない。多分ここ、二度と来れないね……。
「ユノさんがダメだと言われるようになった頃、この国は帝国に攻め込まれたんです。王都が陥落し、どこもかしこも帝国兵だらけでした。そんなところに、セイライ国の人間とわかるユノさんが入り込むと、傭兵と間違われてしまう。まだ幼くて戦えないのに、殺されてしまうかもしれない。ですから、こちらへ来るなと言っていたんです」
っていうか、将軍って、結構頭の回転いいよね。
細かいこと、何も考えてなかったけど、うまいこと合わせてくれるし。しかも、やけにそれっぽいし。
あと、あたしが人畜無害の子供ってこと、メッチャ強調してくれるし。
ホント、ありがたい。
「じゃあさぁ、何で今はいいの?」
「解放軍が組織されて、ほとんどのところから帝国軍がいなくなったからですよ。この辺りも、比較的安全になりましたからね」
「はー、それでおばあちゃん、あたしに会いたいって手紙くれたんだね!」
そのお手紙で遊びに来た、孫のあたし。うん、完璧!
まあ、マーハルニーファの血が混ざってると、ホントはイハル兄みたいに年相応になるけどね。
ちなみに、あたしくらい、年下に見える人も少ない。ホント、少ない。ってか、父さんの若い頃って、実はあたしみたいに童顔だったんじゃ……って疑ってんだけど。
母さんに聞いても、教えてくんないんだよね。父さんに聞くと、ゲンコツ来るし。
「んでも、解放軍って強いんだね! すっごいなぁ……あたしもおっきくなったら、解放軍に入れる?」
「お嬢ちゃんが大きくなる頃には、この国は平和になってるよ」
おじさんに突っ込まれた。
いや、うん、もちろん、そのつもりなんだけどさぁ。子供の夢は、できるだけ持ち上げようよ。
どうせ、子供の夢なんだし。
「……ああ、でも、どうだろうな。今度、王都で捕虜の公開処刑が行われるだろう?」
うっわ、ちょっ、何、その情報!
一瞬で、パッと目の色が変わった将軍を遮って、あたしはおじさんに聞いてみる。
「公開処刑って、みんなの前で殺しちゃうことだよね? それってさ、やっぱ解放軍が助けに行くの?」
「あー、いや、どうだろうな……王都で公開処刑があるって噂は聞くんだが、それを解放軍は助けずに見捨てる、って話でな」
よーし、いい情報!
ってか、解放軍としては、そんな話知ってたら助けに行くよ! だって、王女様、仲間を見捨てるなんてできない人なんだから!
あっさりばっさり、スパッと切り捨てられる人だったらさぁ。捕虜が数人しかいないような、ちっちゃなとこ、襲わせてないでしょ!
「他の捕虜は助けたのに、王都の公開処刑だけ見捨てるってのも、変な話だって……」
「そうですよね……」
余計なことは言わずに、将軍はサラッと同意する。
そこでグッと我慢したの、すごいよね。
だって、将軍は、王女様の性格も知ってるだろうし。将軍自身、軍の指揮執ってるわけでしょ? まだ生死不明の仲間がつかまってるって、将軍もわかってんだし。
多分、本心は、今すぐ助けに行きたい、だと思う。
「じゃあ、あれじゃない? 助けに行かないって振りして、敵もだまして、いきなりワッて押しかける、みたいな」
帝国側が流した噂と、全然違う話。これ、他の人に話してくれたら、ますます混乱していい感じだよね。
敵側も、わけわかんなくなりそうじゃん?
「そうだなぁ……そうだと、いいねぇ」
んー、どっちかっていうと、帝国側の噂に分があるっぽいね。
ってことは、あたしが言ったとおりになればさ。解放軍じゃなくっても、一気に盛り上がるかも?
「ねね、お兄ちゃん。解放軍が勝ったら、あたしまた来てもいいんだよね?」
「そうですね」
「じゃあ、あたし、解放軍に勝って欲しい! そしたら、またここに連れてきて?」
腕にギュッてつかまって、将軍をジーッと下から見上げる。目があったとたん、パッと顔を背けられた。
何で?
「お嬢ちゃん、お兄さんが大好きかい?」
「うん、大好き!」
何でかニヤニヤしてるおじさんに、あたしはニッコニコの笑顔で返す。
今のあたしは、無邪気な子供。だから、人の裏は読まない。言葉は、額面どおりにしか受け取らない。
「お兄さんも、お嬢ちゃんが大好きみたいだよ?」
へ?
ニタニタしてるおじさんにつられて、ひょいっと見上げたら。将軍が、これでもかってくらい真っ赤になってた。
……将軍って、結構モテそうなのに。ひょっとして、近寄りがたいとか思われてて、言われ慣れてないのかな?
「あ、いえ、その……き、聞き慣れない、言葉……でしたので……」
完全にどもってる。
もう、メッチャ挙動不審。
端から見たら、完璧、不審者じゃん?
「お兄ちゃん、モテそうなのに……何か、人生損してるって感じで、かわいそうだね」
おじさんが横向いて、ブフッて噴き出した。




