表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/128

29

「危ない危ないって言うけどさぁ……」

「お兄さん、教えてあげたらどうだい?」

 あたしはバッと、勢いよく、お店のおじさんを見る。ついでに、目をキラキラさせて、ありがとーって全身で言ってるふうで。

 将軍のため息が聞こえたけど、気にしない!

「お嬢ちゃんは小さいけど、聞けば理解できそうじゃないか。下手にごまかすより、ちゃんと教えた方がいいんじゃないかい?」

 援護射撃に、あたしはぴょんぴょん跳んで、さらに子供っぽさを強調してみた。

 もう、これ、絶対、あたしが十六だって信じてもらえない。多分ここ、二度と来れないね……。

「ユノさんがダメだと言われるようになった頃、この国は帝国に攻め込まれたんです。王都が陥落し、どこもかしこも帝国兵だらけでした。そんなところに、セイライ国の人間とわかるユノさんが入り込むと、傭兵と間違われてしまう。まだ幼くて戦えないのに、殺されてしまうかもしれない。ですから、こちらへ来るなと言っていたんです」

 っていうか、将軍って、結構頭の回転いいよね。

 細かいこと、何も考えてなかったけど、うまいこと合わせてくれるし。しかも、やけにそれっぽいし。

 あと、あたしが人畜無害の子供ってこと、メッチャ強調してくれるし。

 ホント、ありがたい。

「じゃあさぁ、何で今はいいの?」

「解放軍が組織されて、ほとんどのところから帝国軍がいなくなったからですよ。この辺りも、比較的安全になりましたからね」

「はー、それでおばあちゃん、あたしに会いたいって手紙くれたんだね!」

 そのお手紙で遊びに来た、孫のあたし。うん、完璧!

 まあ、マーハルニーファの血が混ざってると、ホントはイハル(にぃ)みたいに年相応になるけどね。

 ちなみに、あたしくらい、年下に見える人も少ない。ホント、少ない。ってか、父さんの若い頃って、実はあたしみたいに童顔だったんじゃ……って疑ってんだけど。

 母さんに聞いても、教えてくんないんだよね。父さんに聞くと、ゲンコツ来るし。

「んでも、解放軍って強いんだね! すっごいなぁ……あたしもおっきくなったら、解放軍に入れる?」

「お嬢ちゃんが大きくなる頃には、この国は平和になってるよ」

 おじさんに突っ込まれた。

 いや、うん、もちろん、そのつもりなんだけどさぁ。子供の夢は、できるだけ持ち上げようよ。

 どうせ、子供の夢なんだし。

「……ああ、でも、どうだろうな。今度、王都で捕虜の公開処刑が行われるだろう?」

 うっわ、ちょっ、何、その情報!

 一瞬で、パッと目の色が変わった将軍を遮って、あたしはおじさんに聞いてみる。

「公開処刑って、みんなの前で殺しちゃうことだよね? それってさ、やっぱ解放軍が助けに行くの?」

「あー、いや、どうだろうな……王都で公開処刑があるって噂は聞くんだが、それを解放軍は助けずに見捨てる、って話でな」

 よーし、いい情報!

 ってか、解放軍としては、そんな話知ってたら助けに行くよ! だって、王女様、仲間を見捨てるなんてできない人なんだから!

 あっさりばっさり、スパッと切り捨てられる人だったらさぁ。捕虜が数人しかいないような、ちっちゃなとこ、襲わせてないでしょ!

「他の捕虜は助けたのに、王都の公開処刑だけ見捨てるってのも、変な話だって……」

「そうですよね……」

 余計なことは言わずに、将軍はサラッと同意する。

 そこでグッと我慢したの、すごいよね。

 だって、将軍は、王女様の性格も知ってるだろうし。将軍自身、軍の指揮執ってるわけでしょ? まだ生死不明の仲間がつかまってるって、将軍もわかってんだし。

 多分、本心は、今すぐ助けに行きたい、だと思う。

「じゃあ、あれじゃない? 助けに行かないって振りして、敵もだまして、いきなりワッて押しかける、みたいな」

 帝国側が流した噂と、全然違う話。これ、他の人に話してくれたら、ますます混乱していい感じだよね。

 敵側も、わけわかんなくなりそうじゃん?

「そうだなぁ……そうだと、いいねぇ」

 んー、どっちかっていうと、帝国側の噂に分があるっぽいね。

 ってことは、あたしが言ったとおりになればさ。解放軍じゃなくっても、一気に盛り上がるかも?

「ねね、お兄ちゃん。解放軍が勝ったら、あたしまた来てもいいんだよね?」

「そうですね」

「じゃあ、あたし、解放軍に勝って欲しい! そしたら、またここに連れてきて?」

 腕にギュッてつかまって、将軍をジーッと下から見上げる。目があったとたん、パッと顔を背けられた。

 何で?

「お嬢ちゃん、お兄さんが大好きかい?」

「うん、大好き!」

 何でかニヤニヤしてるおじさんに、あたしはニッコニコの笑顔で返す。

 今のあたしは、無邪気な子供。だから、人の裏は読まない。言葉は、額面どおりにしか受け取らない。

「お兄さんも、お嬢ちゃんが大好きみたいだよ?」

 へ?

 ニタニタしてるおじさんにつられて、ひょいっと見上げたら。将軍が、これでもかってくらい真っ赤になってた。

 ……将軍って、結構モテそうなのに。ひょっとして、近寄りがたいとか思われてて、言われ慣れてないのかな?

「あ、いえ、その……き、聞き慣れない、言葉……でしたので……」

 完全にどもってる。

 もう、メッチャ挙動不審。

 端から見たら、完璧、不審者じゃん?

「お兄ちゃん、モテそうなのに……何か、人生損してるって感じで、かわいそうだね」

 おじさんが横向いて、ブフッて噴き出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ