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 今の陣営から一番近い街は、そんなにおっきくない。まあ、小さいってわけでもなくて、割と普通。

 大通りにはお店が軒を連ねて、賑やかで。ここにいるだけで、楽しくなっちゃう。

「賑やかだね!」

「そうですね」

 まあ、相変わらず、将軍とは話が弾まないんだけど。初対面の遠い親戚ってごまかすには、いい感じの距離感かもね。

 ほら、ベタベタ懐く年下の子に、ちょっと戸惑うお兄さん、みたいな。

「何か、見たいものはありますか?」

「えっと……甘いお菓子が食べたい!」

 あたし、十六だって言っても、まず信じてもらえないからねー。

 みんなに言われる、十三くらいの子になりきっとけば、あたしはそこまで注目されない。……と思う。

 むしろ、将軍がジロジロ見られそうで、ちょこっと心配だけど。

「では、ゆっくり見て回りましょうか」

 はい。って感じで、ひょいっと出された手と。将軍の顔と。あたしは交互に見比べた。

「迷子になるといけませんから」

 あー、なるほど!

 髪の毛は珍しい色だけどさ。確かに、あたしが人の中にまぎれたら、わかんないよね。

「お兄ちゃん、ありがと!」

 手にギュッてつかまったら、将軍にふいって顔逸らされた。どーゆーこと?

 んでも、将軍の手って、強い人の手だ。硬くって、剣ダコがあって。こういう手、割と好きなんだよね。

 あたしはまだまだだなぁ、って実感できるし。

 女の子としては、グレースみたいな子にも憧れるけどさ。やっぱ、あたしは傭兵だし。少しでも、強くなりたいって思ってるから。

 将軍に手を引っ張られながら、あたしは街の中をトコトコ歩く。こういうとこに慣れてない子っぽく、あちこちキョロキョロ見回して。

 ……んー? 何だろ……何か、妙な視線を感じるんだけど。

 何ていうか、嫌な雰囲気。不穏な空気。そんな気になる、変な視線。

「この辺りでしたら、甘い菓子がありそうですね」

 んでも、将軍は気になってないっぽい。あたしより、気配に鈍感ってことはないだろうし……気のせい、なのかな?

「お兄ちゃんも、一緒に食べる?」

「あ、いえ、甘い物は苦手なので遠慮します」

「そっか……じゃあ、あたし一人で食べるね」

 ちゃんと、お金も持ってきたし。

 どれがおいしそうかなぁ……どこも、いい匂いするよね! うわぁ……迷う、迷っちゃう!

「ふふっ、迷いますか?」

 ……さすがに、キョロキョロしすぎたかな? 将軍に笑われちゃった。

「食べられるのでしたら、どれでもお好きなものを、お好きなだけどうぞ。お金が足りなければ、私が出しますから」

「えっ、や……あたしが食べるのに、お兄ちゃんから借りるわけにいかないっしょ?」

 自分の食い扶持は、自分でまかなうもんだし。そのために、ちゃーんとお金持ってきたんだしさ。

 まあ、ホントのお兄ちゃんやお姉ちゃんたちだったら、おごってもらうかもしれないけど。イハル兄には、あたしはおごらせたことないよ?

 お姉ちゃんたちは、バッチリおごらせてたけどね。しかも、イハル兄の初稼ぎから。

「あなたが我慢するくらいでしたら、私が出しますよ」

 ……将軍って、戦ってなくても、十分カッコイイ人なんだからさ。そーやって、ニッコリ爽やかに微笑むのは……ちょっと、意地悪だよ。

 なーんか、心臓に悪いし、さっさと情報収集して帰ろう、うん。っていうか、早く帰りたい。

「じゃあ、どーしても足りなかった時だけ、お兄ちゃんに借りるね!」

 ってことにしといて、借りなくていいように、少しひかえめにしようっと。

 並んでるお店を、覗きながらフラフラ歩く。もう手はつないでないけど、将軍はあたしのすぐ後ろにいる。

 将軍、メッチャ保護者っぽいよね。

「これ、ください!」

 とりあえず、目についた焼き菓子をちょこっとだけ、買ってみたんだけど。いろんな形してて、おいしそーっ!

 お店の目の前で、ひとつ。口にポイって放り込んでみた。

 甘くって、サクサクしてて、おいしーっ! これ、当たり! 大当たり!

「やっぱり、もう一袋ください!」

 ……ひかえめのつもりだったけど、これは無理かも。

「お嬢ちゃん、セイライ国の子かい? 珍しいねぇ」

「うん、そうだよ。今日はね、おばあちゃんのとこに泊まりに来たの! で、たまたま来てた親戚のお兄さんが、ここに連れてきてくれたんだよ!」

「そっかそっか、よかったねぇ」

 お店のおじさんがニコニコしてる。疑ってる様子は、多分ない。

「ずっと来たかったんだけど、危ないからダメって言われてて。おじさんは、何で危なかったか知ってる? 聞いても、みんな教えてくれなくって」

 一瞬、おじさんが怯んだ。ちょっと、一気に突っ込みすぎちゃったかな?

「ユノさん、そうやって質問攻めにして、みなさんを困らせないようにと言われたでしょう?」

 うわぁ、将軍、すっごい!

 何度もやられました、みたいな、呆れ果てた言い方。

「だって、四年くらい前はオッケーだったんだよ? 急にダメって言われて、理由教えてくんなくて、何でまたオッケーになったわけ?」

「ユノさんにとって、危なかったからですよ。それでは、納得できないのですか?」

「あたしが危ないなら、お兄ちゃんだって危ないっしょ?」

「大人と子供を一緒にしてはダメです」

「えーっ!」

 この場は本望なんだけど、なんだけど……やっぱ、子供扱いされると、腹が立つよね。


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