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 やっぱり、あの中隊はただの囮で、王女様のいる本陣が狙いだったみたい。いきなり攻め込まれて、ちょっと動揺して、王女様も必死に戦ってたんだって。

 んでも、イハル(にぃ)の隊が戻ったことで、形勢逆転。っていうか、相手が援軍にびっくりして、勝手に崩れたって感じだったらしいけど。

「……ふがいない、ばかりです」

 ベコベコッ、って音がしそうなくらい、将軍が落ち込んでる。いつぞやのグレースみたいで、ちょっと嫌。

 ウザい、邪魔、いらん、とか容赦なく言われて、エレンさんにほっぽり出されて。イハル兄が、あたしにかまっとけって置いてった。

 悪いけどさぁ、あたしもいらないんだけど。

「っていうかさ、将軍が本気で追っかけてたから、帝国兵も安心して本陣襲ったわけでしょ? んで、囮も本陣のも、ちゃーんと全滅させたじゃん? それで、何が不満なわけ?」

 そう。どっちの敵も、きっちり全員倒したんだよね。まあ、本陣側の死体は、後始末が必要だったけど。

 そりゃあ、囮なんかに引っかかって、本陣に攻め込まれたんだし。そこを反省するのは、あたしもアリだと思うよ? でも、被害はほとんどないんだし、そこまで落ち込むこと?

「それとも、囮にだまされたのが、そんなに恥ずかしいわけ?」

 あ、しまった。

 将軍が、ずしーん、って、もっと落ち込んだっぽい。

 ヤバッ……後で、イハル兄に怒られるかも。

「……ねえ、将軍」

 返事はない。ないけど、ちゃんと聞いてるはず。そういう人だってのは、さすがにわかってきた。

「その鎧脱いで、普通の服着て、ちょっと近くの街に行かない?」

 うわっ……いきなりこっち、向かないで欲しいんだけど。死にそうな顔で驚かれたら、あたしだって驚くよ!

「囮まで使って、本陣襲撃ってさ、相手がなりふり構ってない感じ、するじゃん? ひょっとしたら、変な噂とか、流れてるかもって思わない?」

 たとえば、解放軍があちこちで略奪とかしてる、とか。王女様が、実は王様の血なんて引いてない、とか。

 ウソも大ウソの話が、まことしやかに流れてたり、するもんだし。

「戦争ってさ、国と国の争いなわけ。勝つか負けるかしか、基本的にはないもんだし。勝つために、この国の人にウソを吹き込むって、帝国ならやりかねないもん」

 無理矢理よく言えば、勝利に対して貪欲。ぶっちゃけると、卑怯でさいってー。

「王女様のこと、悪く言われてたらムカつくじゃん? 父さんにも、街に行くことがあったら聞き込んでこいって言われたし。ちょこっと、調べてみない?」

 ホントだったら、リディかリアムあたりと行こうと思ってたんだよね。んでも、あたしが余計なこと、ズバッと言っちゃったわけだし。

 ちょちょいと気分転換して、ちゃっちゃと頭切り替えてくれたらいいな。って程度なんだけど。

「で、鎧とかあると、警戒されちゃうし。そーゆーのなしで、ちょっと遊びに来たって感じで、行ってみない?」

 イハル兄とだったら、年の離れた兄妹、ってごまかせるけどさ。将軍とだと、何て言ったらいいかなぁ? 初めてこっちにきた遠縁の子、とか、そんな感じかな?

「……わかり、ました」

「よし、決まり! じゃあ、パパッと着替えちゃおっか」

 言いながら、あたしが革鎧を外しにかかったとたん。将軍が、あたふたしながら逃げてった。


 あたしも、一応私服ってものは持ってる。いっつも着てる、赤茶のワンピース。あれ、セイライ国の女の傭兵なら誰でも着るって、知られちゃってて。観光に来た一国民でーす、なんて言えないんだよね。

 情報収集なんてのも、大事な仕事のひとつだし。こういう時にごまかせるようにって、ちゃーんと私服は用意してあんの。

 それも、傭兵してる時とは、全っ然違う格好。

 下に青色の、肩紐のアンダー着て。その上は、肩にギリギリ引っかかるくらいの長袖チュニック。袖先と裾はヒラヒラ広がってる。丈は、お尻が隠れるかどうかって長さ。んで、下はショートパンツに、おしゃれ用のショートブーツ。踵は低め。色は、基本的に明るい色。

 あたしは、上は薄めの水色で、下が白。靴は薄茶にしてるんだよ。これだと、髪の毛の色とかと、合わないってことないし。

「…………」

 あー、うん。将軍が無言になんのも、わかる。

 これだから、リディとかリアムと行きたかったんだけどね。あの二人なら、からかってこようが、何も言わなかろうが、あたしも気になんないから。

 あたしの見た目に合わせて、かなり子供っぽくしてあるからさぁ。……まともな格好の将軍と一緒だと、ホント申し訳ないんだけど。

 っていうか、ただのシャツとズボンなのに、将軍は普通にカッコイイ。でもって、ますます、騎士(エクエス)様には見えない。

 もう、どっからどう見ても、将軍は完全にあたしの保護者だろうね。

「ちゃちゃっと行って、パパッと済ませてこよっか」

 あたしが歩き出したら、将軍もちゃんとついてきた。

 ……ひょっとして、あたしから話振らないと、またずっと、ひたすらだんまりだったりするのかな?

「あ、そうだ。街に着いたら、将軍のこと、お兄ちゃんって呼ぶから」

 斜め後ろで、ブッて噴き出された。その後、ゲホゴホってむせたっぽい。

「だって、将軍って呼んだらバレバレじゃん? 全然似てないから兄妹ってのはないし、でも一緒にいるのって変だし。遠縁の親戚ってことにしとけば、わざわざ突っ込まれないっしょ?」

「……その、でしたら、恋人……と装うのも」

「将軍が、生ぬるーい変な目で見られていいなら、あたしはどれでもいいけど? ちなみに、イハル兄でも、あたしがイハル兄って呼んでんのに、相当怪しげにされてたし」

 だからさぁ、親戚のお兄ちゃん、でいいと思うんだよね。

 何でか、背中側から、今にも死にそうなため息が聞こえてきた。


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