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「ねえ、グレース。最近、困っていることはない?」
さりげなーく、王女様が将軍をスルーした! だけど、将軍も無視されたことをスルーしてる!
この人たち、すっごいなぁ……。
「エレン経由でイハル隊長から報告は受けているけれど、実際の程度を把握したいの。先に言っておくけど、これは将軍にも大いに関係のあることよ?」
将軍にビシッと鋭い目を向けて、王女様はニッコニコの笑顔であたしを見てきた。
……何であたし? グレースを見るとこじゃないの?
「えっと、その……最近、私に、話しかけようとする方が、増えました……その、男の方は、悪い方向で、です……」
ああ、グレース、緊張してんね。
メッチャたどたどしくって、そこが可愛い。多分、エレンさんがそう思ってる。そんな顔して、グレースをジッと凝視してるし。
ん? エレンさんと目が合った……かも?
「その時期が、志願者が急増した頃と、ちょうど一致するの」
王女様は話を進めてるっぽいけど、何か、エレンさんが、あたしを見てる。すっごい爽やかな微笑みを浮かべてんだけど……目が、獲物を狙ってる猛禽類っぽい。今すぐ舌なめずりしても、納得できそうな感じ。
「そうですか……こちらも手が足りず、きちんと確認も取らないままの、単なる流れ作業になっていた感は否めません。信頼できる者による見回りの回数を増やし、不埒な行動を見かけたら即座に籍を剥奪する。そういった方向で動かせていただきます」
「じゃあ、お願いね」
視界の端っこに見えた王女様は、満足そうに笑った。
「グレースたちから他の女性に、なるべく複数で固まって行動することと、何かあったら、各隊長か、近くの騎士に助けを求めるように、周知してちょうだい」
「はい、わかりました」
あたしも頷いて、承諾の意志は伝えとく。
困った時にどうしたらいいか。ちゃーんと知ってんのと知らないんじゃ、全然違うしね。
「あ、将軍」
エレンさんがしゃべった。
なーんか、すっごいヤな予感が……。
「これはもう、オーレリア様が決めたことなんですけど、オーレリア様がグレース嬢たちを招く際に、送迎の護衛として、将軍も同行をお願いしますね。いくら女の子といっても、私に加えて三人は、やはりドナが飛べないんです。一人じゃ、さすがにちょっと、守りきれるか不安なんですよね」
「……そういうことでしたら、可能な限り引き受けましょう」
え? 犬猿の仲なのに、一緒に行動してへっちゃらなの? っていうか、こっちが気を遣って、死ぬほどぐったりしそうで嫌なんだけど……。
ホント、よくわかんない人たちだなぁ。
「ふふっ。やっぱり将軍も、美少女たちに囲まれるのは楽しいのかしら?」
あのさぁ、リディとかグレースは、確かに美少女でいいと思うけど。あたしじゃ、そこに当てはまんないでしょ。
王女様は楽しそうだし、わざわざ否定して空気を悪くする気はないけどさ。
「与えられた任務をこなすだけですから、そういった観点に興味はありません」
あー、やっぱ将軍って、メッチャ真面目な人なんだなぁ。何て言うか、ホント、イハル兄みたいな人だね。
こーゆー時はさ、ユウガ兄みたいに、嘘でも「役得ですよね」とか言っとけばいいのに。いや、うん、言い過ぎんのもよくないけどさ。
「……そうですか。では、送迎はイハル隊長に頼みますから、将軍はお好きなだけ、陣営内の見回りでも何でもしていらっしゃい!」
えっ? エレンさんってば、何で急に怒ったわけ?
あたふたして、グレースとリディを見たら、二人もわたわたしてた。んでも、王女様とアルヴィン様は、何でもないみたいな顔でお茶飲んでるし。
あ……よく見たら、何でエレンさんが怒ってるか、将軍もわかってるっぽい。
「……私は、可能な限り、引き受けると約束しました。とりあえず今日は、同行させていただきます」
つまりさ、あれかな? ホントは嫌なんだけど、王女様の命令だから、しょうがなく、ってこと?
面倒なこと押しつけられたって、思ってるわけ?
……そういう人じゃないと、思ってたんだけどな。可能な限りって、見回りとかいろいろお仕事がある中で、暇だったら、って意味だと思ったんだけど。
ちょっと、見損なったかも。
「あのさぁ……王女様の命令だからしょうがない、って気持ちなのかもしんないけど、嫌なら嫌ってちゃんと言えば? わざわざ将軍じゃなくっても、あたしたちには問題ないしね。グレースのことがあるし、イハル兄も、いつもの仏頂面で引き受けるっしょ」
まあ、イハル兄が仏頂面で怖い時って、たいていがどんな顔していいかわかんない時なんだけどさ。
困ったらニッコリ笑っとけば? なんて、イハル兄に言っても無駄だし。ってか、ニコニコされたら、裏があるって警戒しちゃいそうじゃん?
多分、リディもその辺は何となくわかってる。グレースは、そもそも気にしてないっぽいし。だから、問題はないわけ。
んでも、将軍は違う。
あたしたちは、将軍のことなんて、ほとんど知らない。どんな人かも、よくわかんない。ぶっちゃけると、信頼していいのかすら、はっきりしてない。
そんな人が、義務感丸出しで言ってると、全然いい気がしないのはホント。




