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 新顔に、不用意に女の子に近づかないよう、教育的指導。誰でもいいからさ、早いとこ、やって欲しいよね。

 そんなことを、リディやグレースと話してたら。あたしたちは三人まとめて、王女様の天幕に拉致された。

 うん、ホントに拉致、もしくは誘拐って感じ。いきなりエレンさんが徒歩で来て、グレース引っ張ってちゃって、あたしとリディが追っかけて。着いた先が王女様の天幕。

 これ、もう、どう見ても、さらわれたとしか思えないでしょ。

 グレースは、よく連れてかれてたみたいなんだけど。あたしはそーゆーことなかったし、リディもほとんど来たことないんだって。

 まあ、これは、お互いにコソコソって話してわかったんだけどね。

 ちなみに、グレースは、アルヴィン様も平気っぽい。いても大丈夫なんだって。

「お邪魔しまーす……」

 エレンさんが入り口の布を持ち上げてくれてる間に、ササッと入った。

 王女様の天幕なんて、あたしは用がないし。ちゃんとした解放軍になってからは来たことないから、メッチャクチャ緊張するー。

 入って二歩、前に進んで。中をキョロキョロ見回してみた。

 中心辺りに、大きめのテーブル。多分これ、軍議ができるように置いてると思う。んで、向こう側に座ってる王女様と、立ってるアルヴィン様。

 天幕の中は、余計なものは何にもない。

 右手の奥に、お湯が沸かせる設備があるのが、一番の違いかな? 他は、あたしのとこやイハル兄(にぃ)のとこと、そんなに変わんない。

 グルッと一周しかけたところで、隅っこにいる人影に気がついた。

 白銀の鎧と、腰に下げた剣。短く刈った薄茶色の髪に、優しそうな薄茶の目に。真面目そうな上に、戦場だと違和感満載の爽やかさがついて。

 うん、さすがに、誰かわかんないとか、もうないよ? 他の騎士(エクエス)様とは、何か、雰囲気とかも違うし。

「……ヴァージル将軍?」

 ビシッと直立不動でさ。気配、全っ然なかったんだけど。

 あっと思って、あたしはグレースを振り返ったけど、ガタガタしてなかった。将軍に気がついたグレースも、不思議そうにしてる。

 ってことは、アルヴィン様はともかく、将軍も、イハル兄の同類ってことかぁ。

 将軍って、人畜無害って言葉どおりの人っぽいね。

「あら、ユノ嬢は、将軍と面識がおありでしたか?」

 エレンさん、メッチャしれっと言ってるけどさぁ。将軍の周りの空気が、パキンって音立てて凍ったよ。

 ホント、何でこの二人、そこまで仲悪いの?

「ふふっ、グレースは、将軍も怖くないのね。よかったわ」

 ふんわり、ほんわり。そんな感じで、王女様が笑って言う。

 この際もう、誰でもいいからさ。何か、面白い話題でも振ってよ。あたし、捨て身の全力で乗るから!

「えっと、あの……こちらの方は……?」

「騎士団長代理で、解放軍全体の指揮を任せているヴァージル将軍よ。三年前に亡くなられた前騎士団長の、ご子息なの。……といっても、私は直接面識がなくて、彼と旧知のエレンが教えてくれたのだけど」

 ってか、エレンさんと将軍って、旧知の仲なの? そうは見えなかったんだけど……。むしろ、何かあって犬猿の仲になった、みたいな。

 そうそう、元々マーハルニーファ王国には、宮廷騎士団があったんだよね。騎馬隊と、歩兵隊の混成で。

 大半が三年前、王様と一緒に死んじゃってる。それでも、若手だけはって逃がしたらしいんだけど、歩兵や騎馬の一部は捕虜になっちゃったんだってさ。その人たちは、ほとんど助け出せたみたいなんだけど。

 まだ何人か、生死不明って人もいるみたいだから、どこかでつかまってんのかなぁ?

「将軍は、役職でも名前でも、呼べば返事をすると思うけど……どう?」

 サラッと将軍に話題振ってる……さっすが王女様! ちょっとだけ、空気もやわらかくなった気がするし。

「私と認識できれば、返事はします」

「というわけだから、グレースの好きに呼んでね」

 ……へ? こないだは、呼びかけても返事しなかったじゃん?

 なーんか、納得できないんだけどさ。でも、王女様が「座って?」って言うから、あたしは目の前の椅子にさっさと座ってみた。

 滅多に右向かなくていいように、一番右の椅子。隣がグレースで、その向こうがリディ。で、エレンさんはお茶淹れてる。

「ところで殿下。私はなぜここに呼ばれたのでしょうか。陣営内の見回りもありますし、用がないのでしたら、これで失礼させていただきたいのですが」

 真面目だねぇ、将軍って。そーゆーとこ、いいと思うけど。


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