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夏蚕の意見 真相編

奇病■■専門―奇人

⻆谷 春那

夏蚕の意見 真相編

 男の友人―椛田 石竹は、確かに夏蚕に深く同情した。また、この真実に気が付けなかった自身を恥じた。当時は、長い時間を共にしていたからだ。また、彼女がそこまでの狂人だったことに、全く気が付いていなかったからだ。

 しかし、何か違和感が生じる。彼は、自身の友人である、この狂った男の性根を、十二分に理解していた。勿論、手放しに「狂人」と言うレッテルを、張った訳ではない。尊敬と、若干の「ひき(・・)」をもって、この判断をしたのだ。なので、彼は一瞬の後、こう思った。そして、口にした。




 「それは本当に、全て真実かい?」




 勿論、只の一般人ならば。見抜く手段もなければ、気付けるきっかけもないだろう。しかし現に椛田 石竹には、気付かれてしまった。勿論、この男も、それを分かった上で、言っているのだ。この男は、誰かに同情される事が、嫌いなのだ。「同情」とはそれ即ち、他者に「自分より下な境遇・状況にある」と判断される事。つまり、社会的立場・イメージの損傷に繋がりかねない。勿論、それで世を渡る「生活タイプ」を選ぶ人物も一定数居り、状況によっては、それが最も合理的な手段であるケースもありうるだろう。しかし、男は自ら、茨の道を選んだ。それは、高潔とも言い、プライドが高いとも言い、強情とも言うが、マゾヒストとは言わないだろう。

ともかく、そんな男が、誰かに同情されるような身の上話を、するはずがない。もししたとしても、その相手は、彼ではないだろう。彼に弱みを握らせたところで、何のメリットも無い。教えたところで、弱みを教え返してくれる訳でもなければ、信用度が必要な場面でもない。強いて言えば、返って来るのは、「配慮」だけであろう。

そう、この男は、「配慮」を求めている。しかし、その「配慮」を得るために、真の弱みをわざわざ握らせるほどの事でも、ないだろう。要するに、この男は、駄々をこねているのだ。

しかしだ。たかが「駄々」。即ち、一時の幸福・私情。その程度で、ここまで重大な弱みを明かすような人物では、ない。椛田 石竹は、それも知っている。




そしてこれは、「茶番」。究極の、内輪ネタだったのだ。究極に知的で、醜悪な戯れだ。




 「どういう事だい?」

「いや、君が僕に、こんな話する訳、ないと思ってね。それに、どうせ分かってて言っているんだろう?この、サイコパスめ。」

「酷いな。名誉毀損で、訴えようか?」

「事実だろう?君が僕に、弱みを握らせたことなんて、一度だって無いんだからさ。」

「・・・じゃあ、当時のお前と変わらないところを、見せてくれよ。他でもないこの、に。外見以外、変わってしまったとは、言わないよな。」

「君さ。本当に、昔から性格が悪いよね。」

「別に、悪くはないさ。ただのゲームだろ?お前にとってはさ。」

「だからと言って。言っても良い嘘と、いけない嘘の区別もつかないのかい?」

「良心の自由さ。」

「公共の福祉だよ。」

「ここは、プライベートな空間だろ?」

「・・・事実は、『真理愛は、夏蚕の事が好きだった』。これだけだろう?君が、そんな『危険分子』を放置する訳、無いからね。放置するくらいなら迷わず、証拠引っ提げて警察にGOしてるよな、君は。用意が良い男だからな?・・・何か、反応したらどうだい?」

「まだ、『Q.E.D.』を書いていないじゃないか。」

「・・・本当、君は変わった方が良いよ。図体だけ、デカくなった。その性根は、全く変わらない。」

「変わらなくても、仕事は出来るさ。それに、意外と有利だぜ?」

「随分と、良い猫の皮を持っているだけだろう?」

「で?『これ』で、まさか提出とは、言わないよな?」

「・・・ただ『好かれていた』『だけどこちらには、その気がなくて気まずくなった』、程度じゃ、配慮なんてされない。それは君だって、分かっているだろう?あぁ、と言うか。君に、『気まずい』なんて感情、あるのかい?」

「ない事はない。」

「嘘だね。君は嘘を吐く時の癖、自分で理解しているかい?」

「へぇ、そんなもの、あるのかい?」

「いや、無い。」

「なんだそりゃ。」

「ま、良いよ。どうせ、君に恋なんて、早いものさ。異性の方が、可哀想になってくる。どうせ、『想定以上に執着されて、面倒くさい』程度の感情だろう?」

「失礼だな。」

「事実だね。」

「どうしてだよ(笑)。」

「『嘘をつく時の癖』は無いけどさ。・・・あー。やっぱり、言うのやめとくわ。」

「え、そんな馬鹿な。」

「・・・まぁ、『立派なメンヘラ・ヤンデレを発揮した』。これは、嘘だろう?君が、そんな危険人物を、放置する訳がない。『世間的体裁より、合理的忖度』。君の判断基準の優先順位だ。今度こそ、これで『Q.E.D.』。友人にしか解けない、最悪な悪問だったな。二度とやるか、こんなクイズ。」

「私は意外と、楽しかった。」

「解かされる身にもなれ。本当に、心臓に悪い嘘だ。慰謝料払え。キョトンとするな、気持ち悪い。」

「〈そんな~、酷いです~♡〉。」

「糞、夢を再破壊してくるな!!」

「〈金は払うので、後はお任せしますね、先生♡〉。」

「あー、うぜー!!あと、それは許可できない!!」

「何でだよ。」

「さっきの診察で確信した。あとは検査キット待ちだが、十中八九。いや、九割九分九厘。君が原因だよ、責任取りなよ。」

「・・・〈はにゃ?〉。」

「だから、女声で言えば許されるって訳じゃないぞ。ただ僕の精神のヒットポイントが減っていくだけだ。」

「0になったら、白旗上げてくれるかなと。」

「分かっててやるな、確信犯。」

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