第4章 表
奇病専門■■―奇人
⻆谷 春那
第4章 表
「・・・まりあさん?」
「・・・夏蚕君?夏蚕君なの?」
全く、焦点の合っていない目というものは、恐ろしいものであろう。「正気」というものを、微塵も感じられない。ただ、どちらかと言うと、「焦点の合わなさ」は比較的起きやすく、また偽造しやすい点でもあるだろう。つまり、「キッチュ」だ。
「あぁ、私の夏蚕君夏蚕君夏蚕君。」
「こんにちは、まりあさん。」
「・・・どなた?」
「椛田 石竹です。医者です。」
「医者?!」
女は数歩後ろに下がり、「医者」と言う言葉を反芻する。
「夏蚕君の、お友達?」
「え、まぁ、そうだね。」
「あらあらまぁまぁ!いらっしゃい!よく来たね!!お茶でも飲んで、お話しましょ!」
家具はテレビ以外備え付けの、上質な個室だ。冷蔵庫は勿論の事、まさか台所まで完備されている。
「はい、どうぞ!!」
冷蔵庫から、作り置いていたと見られる茶を取り出す。麦茶では無さそうで、綺麗な黄緑色をしている。
しかし、防護服を着ている以上、口にできない。口にするには、防護服を脱ぐしかない。
「・・・お嫌いかしら?」
「・・・いえ、頂きます。」
そう言って、防護服の頭部部分を脱ぎ、医者は茶を口にする。
その様子を見て、義理の弟―友人―男は、「あ。」と言う顔をする。キッチンから戻って来た時点で、既に「ハラハラ」していたが、さらに「ハラハラ」で「板挟み」な状況が「あ…。」に変わる。
「どうかしら?」
「美味しいです。」
「そ!良かった~!」
「・・・あ。もうこんな時間。すみません、まりあさん。仕事の予定が入っておりまして…。」
そう言って、自然な「一時撤退」を切り出す「夏蚕」。
「そっかー。夏蚕君、『エリート』だもんね~。また来てね!!」
「えぇ、また来ますよ。」
「ばいばーい!!」
「かちゃり」と、自動で施錠された音がした。




