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第39話 最後の一本

この度レビューをいただきありがとうございます!

今後については後書きで。




 とはいえ、辛辣な伊桜を受け続けたいと思うほどにドMでもなければ趣味でもない。ただ思い出という縛りを鎖に、お互いの片腕を繋いでいる状態の俺たちには、罵る罵られるの関係は重くてバカバカしい。


 優しくも軽く、それでも薄っすらと残る思い出。それを刻むのならば良いのかな、なんて思う。こうして伊桜にダメ人間にされそうなのは誤算だった。


 只今花火を俺に向けて回しているが、悪意満載なのがポイント高い。


 「ストーカーに花火向けると行為悪化するぞ?」


 「何するの?具体的には」


 「……思いつかない」


 「うわ、思いつかないほど優しい男っていう、優男感出してポイント稼ぎに来てる」


 「当たり前だろ。美少女に好かれるためには猫かぶるのが常識だ」


 否。個人差はある。冗談だが、本気で猫をかぶる人も居るため一概に常識とは語れない。冗談でも本気でも、伊桜の言う罵りにはノリよく対応するのが俺のいつも。


 「相変わらず清々しい性格だね」


 何度見たか、そのジト目を呆れてますと言わんばかりに細めて、まるで俺と反目するかのよう。それに変わらず対応を。


 「好みか?一歩近づいたな」


 「私と会ってる時って、それしか考えてないの?」


 「んなわけ。ちゃんと伊桜のことしか考えてない」


 「……ダルい。そんなわけしかないじゃん。日本語勉強してこいよ」


 「教えてくれるのか?」


 「やば。何言っても対策してくるじゃん。今時のなんで?を繰り返す小学生よりウザい」


 ごもっとも。俺自身めちゃくちゃイライラすることを伊桜にやっている。これではまだ嫌われない範囲だとは思っているが、人間の限界は底が知れない上にラインも測れない。故にやり過ぎは注意。


 「あの好きな子にイタズラする小学生の気持ちも合わさってるから、めちゃくちゃ厄介だぞ」


 「ならせめて、好きになってやってよ。いつもこれはしんどい」


 「善処するわ」


 会話だけで疲れそう。それでも止められない。どこぞのお菓子のCMの言いたいことが分かる気がする。


 会話を止めれば天啓のように話題が降り注ぎ、それを口に出せば嫌がられることなく伊桜は付き合う。だからこそ、俺は気兼ねなく会話を続けれる。


 そもそも何を話したら伊桜との空気が悪くなるのか、それが分からない。どのジャンルでも結局、楽しく会話を出来そうなのは相性からか、俺の勘違いか。


 下ネタですらゴミを見る目で隔たりを作ったあと、すぐに機嫌は戻してくれそう。運命と言い張る言葉があるのなら、少しくらいは期待してもいいのかもしれない。


 花火を散らせながらも、この至福の時間をしっかりと噛みしめる。無限に味のするガムのよう。あり得ない感覚ながらも、この暗闇に照らすスパーク花火の火花が更に彩りを添える。


 すると、不意に花火と顔の間に一本の花火が見せられる。


 「何?」


 先には伊桜で、花火は散らさず、その本性である相好を俺の紫の火花でちらつかせながら花火を持つ。


 「これ、最後っぽいから」


 「ん?俺に?」


 「うん」


 そうだよ?と首を傾げ、最後の一本を大切に持つ。キリッとしていても若干ジト目。そのせいで可愛さに拍車をかける。


 「私満足した。だから後は天方が。なんて言うなよ?」


 「……私の真似なら世界1下手」


 「でも思ってることは大正解。だろ?」


 図星か。拗ねるように花火をペチペチと膝に叩きつける。痛くも痒くもない。早く取れと圧だけかけられるよう。


 「一緒にするって手段もあるけど?」


 「断りづらい聞き方」


 「断りたくないの間違いだろツンデレ」


 「うるせぇ唐変木」


 日本にこのような関係を築く人たちは、幼馴染ですら珍しいのではないだろうか。悪口でもないが、言い方は強く、でもお互いに傷つかない。むしろやり返す。


 言い過ぎれば傷ついても、ラインを超えない。


 「ツンデレよりも唐変木の方がダメージ大きいな」


 「倍返し」


 まさに。


 「まぁ、今回は一緒じゃなくていいだろ。じゃんけんで勝った方が最後のスパーク」


 一緒にやるならば距離もそれなりにあるということ。人を1人2人挟むほどの距離ならば問題はないが、ピッタリとなれば、少し落ち着かなくなるため、提案した俺から下げさせてもらう。


 何よりも、幸せはもう満足だ。今日はダメージを負いすぎた。辛辣も――。


 「いいねー。それなら勝つよ」


 「負けず嫌い出てるぞ」


 無意味なのに腕に念を込める伊桜。似たようなことをするいつメンを思い出すが、それは邪念として取り払われる。目の前の勝ちだけを狙うそれに、俺も念を込める。


 これは花火をどちらが手に入れるかだが、伊桜は勝ち負けしか興味はない。相手が俺であり、悲しくも絶対にボコボコにしたい思いが強いので、それなりに願いが長い。


 「いいか?」


 「来い!」


 気合は目の奥に見えるほどに熱い。生死を分けるほどのことか、俺への敵対心が並のものではない。


 「じゃんけん――ポン」


 と、出したお互いの手。俺がグーなのに対して、伊桜はチョキ。


 始まります。煽りの儀が。


 「念は?あれ、何込めてたんだ?チョキで負けるために優しさを込めてたのか?なるほどな、優し過ぎてわざととは思わなかった。全く、唐変木な俺にマジでありがとうな」


 「……くっ……」


 若干唐変木を根に持つ俺は、それを煽りの材料に、伊桜を追い込む。悔しそうに下を見て目を合わせんと頑張る姿は、愛おしい。

本当は短めに終わるつもりでしたが、少し書きたいことを増やして、長々と2人の絡みと、その他の絡みを混ぜて書いて行くことにします。

長くなるとは思いますが、出来るだけ毎日投稿を続けますので、毎日覗きに来ていただけると嬉しいです。

改めましてレビューとしての応援、重ね重ね感謝です。

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