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異世界召喚された勇者たちは酒場からでない。  作者: 新居部留源
いつもの夜に~深淵の海豚亭~
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第五話 アルフィナ、舞う

 少し待つと面倒臭いをあからさまに顔と態度に出しながら長身の女性がだるそうに姿を表す。


「オキャクサマー、ナニカゴヨウデショウカ〜」


 やる気のない顔でやる気のない棒読みをしながらアルフィナが立つ。


「やぁやぁ、アル。少しお手伝いをお願いしたいね。チップも出すぞー」


 そう言いながらダイはにこやかに魔剣をアルに差し出す。

迷惑そうだったアルが一転、興味のある顔に戻り剣を受け取る。


「お、これはさっきの剣じゃないか?ヘンリーのものじゃなかったのか?」


 差し出した剣を見ると興味深々らしく、先程とはうって変わって表情が明るくなった。


「賭けの対価としていただいたのだ」


 少し偉そうにダイは胸を張る。そう聞くと少し渋い顔をしながら


「なんだ、またヘンリーのやつ負けたのかよ。そろそろ悪党と相性わりーって理解したほうがいいのにな。」


 アルは呆れ顔で4人を眺める。


「んで?あたしに何を手伝えって?悪党の片棒を担ぐことはあんまりしたくねーんだけど?」


 剣を両手で弄びながら嫌そうな顔でダイを睨む。


「なぁに。そいつのデモンストレーションに付き合ってほしいのだよ。こちらの御仁がその剣を買い取ってくれるのだがいい値で買い取ってもらいたいのでね。」


ダイはニヤリと笑う。


「・・・ふぅん。まぁいいか。」


アルはやや不満そうだったが優しい目で手に持つ剣を懐かしそうに眺めている。

ふいに顔を上げると大声でカウンターに立つ蝶ネクタイをした筋肉粒々の大きな男性に声をかける。


「マスター!!」


 そして手に持った剣を男性に見えるように掲げる。

店のマスターはそれを見ると片手を挙げてうなずく。


「マスターの許可が下りた。ちょっとだけ付き合ってやるよ」


 少し楽しそうに笑みを浮かべ、アルフィナは剣を引き抜く。

狭い空間しかないのに長身の魔剣をこともなげにスルリと鞘から引き抜く動作から剣を扱い慣れてるのが分かる。手に持った黒い剣を軽く片手でクルッと回し


「さて魔剣のようだがどんな剣なんだ?」


 真っ黒な刀身に指を滑らせながらアルが尋ねる。


「魔神剣ハヴォールというそうだ。ところで魔剣ってどんなものなのかね?」


 少し楽しそうに剣を眺めるアルを優しい目で見ながらダイはアルに質問をする。


「魔神剣ハヴォール!?またすごいものを持ってきたな。しかもよくわかってないものを人様に売ろうとしてたのかよ。買う方も売るほうもどうかしてるがヘンリーも浮かばれねーな。まぁいいか。」

 軽く振った剣がヒュンと小さな風切り音を立てる。


「魔剣ってのは魔人が作ったもので強力な魔力が込められている一品だ。だいたいの物は人の手には余るものだから使い道がないんだが、魔人にも変なのがいるみたいで人の手でも扱えるものがいくつか作られている。こいつはその1振りだな。」


そこで一息ついてアルフィナは少し離れる。


「魔神剣ハヴォール。冒険者なら一度は耳にしたことある1本だ。ブランディナ迷宮の最深部に安置されている。ってね。誰が流した情報かは定かではないけどまだ誰もたどり着いてなかったはずだ」


精神を集中するように剣を眼前に掲げ肩の力を抜くアルフィナ。


「曰く、ハヴォールは漆黒にして炎の剣。そのひと振りはすべてを焼き尽くす、ってね」


 アルティナはそこまで話すと剣を構え直して狭い空間ながら器用に剣を振るった。

すると剣の軌道に炎が一瞬燃え上がり剣閃を描いていく。ひと振り、二振りと舞うように剣を振るう。一通り舞うと露を払うように剣を振り剣身を眺めながら


「……なるほど。これはいい剣だな」


 アルは感心しながら嬉しそうに言う。やはり楽しそうだ。

ふいにダイがアルに向かって何かを投げる。

投げられたのはアルの持っていたお盆だった。

アルは見向きもせずに軽やかな動きで飛来物に剣を滑らせる。

お盆は空中で真っ二つになり炎上し消滅した。消し炭すらのこっていない。


「おおっ!!」


「すげぇ。あんなの初めて見た」


「アルちゃん、かっこいぃ」


男たちは驚きと感嘆のの声を上げる。


「……思った以上に強力だな。」


 アルは少し眉をしかめる。


「そのようだ。これは使い手を選ぶな。」


「そこはあまり心配じゃない。魔剣を使うのにはコツがいるんだ。素人じゃあただのちょっと切れ味のいいだけの剣さ。」


「こいつは買い手はつかないかもしれないよ?ハーラムさん」


ダイも少し真顔だ。


「それはそれでお前の投げた私のお盆は弁償な」


アルは冷静に突っ込む。


「あ、ハイ」


 ダイは苦虫を潰したような変な顔をした。


「いえいえ。買い手は付きますよ。ただ選ばねば危険だということですね。」


 拍手をしながらにこやかにハーラムが答える。


「それ以前にそれなりに魔剣について知識がないとと使えないよ。ま、剣の美しさだけでもほか

に類をみないからね。調度品にはいいんじゃないの?」


 アルフィナは納刀して剣をダイに渡しながら言う。


「なるほど。普通はあんなふうに使えないと。アルフィナ、お手伝い感謝しているよ。ついでにビールを5つお願いしてよいかね?」


 剣を受け取りながら逆の手で小袋を差し出しダイは酒を注文をする。

小袋の中身を確認してアルはニンマリと笑い小袋を掲げて


「サンキュ、そのビールはあたしの奢りにしといてやるよ♪」


 そういいながら颯爽とアルフィナはカウンターに向かって歩き出す。


「あ、お盆代は別だからな!!」


 思い出したように振り返って意地の悪い笑顔を残してアルフィナは去っていった。


「アルちゃんかわいいなぁー」


 コマシはアルフィナの後ろ姿をうっとりと眺める。


「……お前はなんでもいいのかよ。」


リーが突っ込む。


「なんでもいいわけじゃないけどねー。魅力ある女性は大好きだよぅ?」


「それは同意だがな」


「女の子は2次元が一番だが今はそんな話ではない。商談を始めようか。ハーラムさん」


 2人の話を遮りながらダイは席に座る。


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