第四話 ルディオの商人
ヘンリー達が去り、酒場の馬鹿騒ぎが大きく聞こえはじめる。
「敗者をすぐ煽って。ろくなもんじゃねぇ」
サマジが皮肉たっぷりにいう。
「ほんとなんだかんだでへタレくんのこと好きだよねー。ダイちゃんは」
「俺たちとは別人種だからな。ダイはああいう奴に小憎たらしい嫌がらせすんの生きがいだもんなぁ」
サマジはヤレヤレといったジェスチャーを大げさに行った。
「ま、なにより戦利品だ。どれくらいの値がつくかね?前回の鎧一式には劣るかねぇ」
リーはダイの手から魔剣を取り、眺めなが値踏みをしている。
「ここで競売でもはじめてみるか?手練の冒険者の皆さんならいい値つけてくれねーかな?」
サマジは酔っ払い共が騒ぎ暴れる酒場の中を見渡す。
「酔っぱらい相手ではロクなことにはならないだろうよ」
ダイは手をひらひらさせる。
「そういうことなら私にお譲りいただけませんかね?」
そう言いながら物腰の柔らかい壮年の男性が物陰から男たちに近づいてきた。
その男をみてダイが笑いながら声をかける。
「なんだ。ヘタレくんをつけてきたのかね。タイミングがよすぎるじゃあないか?ハーラムさん。」
男はにこやかな笑顔を称えながら
「いえいえ、たまたまですよ。たまたま。まぁ彼は私が紹介した宿を利用してくれてるので出かけたのは小耳にはさんでおりましたがね。」
ハーラムと呼ばれた男は悪びれもなくそう答えた。
中肉中背だが身なりはかなりよい。顔立ちは悪くはないが整えられた口髭が似合っていない。年は40手前くらいだろうか?
なにより物腰がやわらかいのに油断のならない雰囲気が漂っている。
「彼の持ち込み品なら良い物なのでしょう?どうせ手放すのなら今回もわたくしにお譲りいただけないかと」
男はわざとらしい礼をしながら言う。
「ま、おたくに売るのはかまわないんだが。今のところ俺たちにこいつの価値が分からない。
安く買いたたかれるのも癪だしなぁ」
リーは剣を抜き差ししながら言う。
「いやいや、お得意様相手にそんな阿漕なことはしませんよ。まぁ安くお譲りいたただけるならそれに越したことはないですがね。」
ハーラムはそう言いながらリーに笑いかける。
リーは肩を竦めて「怖い怖い」と小さく呟く。
突然、ガタンと大きな音をたててダイが立ち上がりハーラムの方へ歩き始める。途中リーから剣を受け取りながら
「わざわざこんな夜分遅くに足を運んでくださったんだ。私としては是非ハーラムさんに買い取って頂きたいねぇ。」
満面の笑みを浮かべながらダイはそう言うとテーブルの横に置いてあった押ベルをチンチンッと鳴らしながら
「アル、アルフィナ嬢〜、少しお手伝いをお願いしていいかな?」
騒がしい店内でも通るような大声でダイは長身の女性の名を呼んだ。




