表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

151/157

不純なき魔石

著者の別作品「おっさん船医ですが処刑されました。しかし生きていて美少女美女海賊団の船医やっています。ただ、触診をセクハラというのはやめて下さい。お願いします」も更新致しました。

興味のある方はぜひお読みください↓

https://ncode.syosetu.com/n7090eo/


「ほぉ、なるほど。凄い人だかりだな。この灯都に来る商人達は全て集まっているのは確かなようだ」


 俺達は今、灯都の中心に位置する商会館に来ていた。そこには此処に訪れる商人全てが集まっている。全員が衣服がととのい、中には護衛としてか戦闘系の職業(ジョブ)らしき人を伴っていたり、『鍛冶屋』等生産系の職業(ジョブ)らしき人もいた。


 その時、くいくい……いや、ぐいぐい(・・・・)と俺の腕を引く感覚。俺は引かれる先に目を向けると、フィアの紫色の瞳と目が合った。


「ねぇ、ねぇ、アニィ」

「どうした?」

「なんであたし達、商会館に来ているの? "地下迷宮(ダンジョン)"に潜るんなら、そういった情報が集まる所の方が良いんじゃない?」


 そう尋ねるフィア。


 周囲の人々が、きちんとした身なりの者が多いせいで、少し居心地が悪いのか、いつもより距離も近い。そんなフィアに安心させるように微笑む。


「勿論、そっちも後で向かうつもりだよ。でも、その前に俺達は何を求めてこの街に来たか、わかるかい?」

「えーとねー、魔石?」

「そう。魔石だ。なら先に魔石とは何なのか知っておく必要があるからね」


 何故、と思うだろうがこれはやはりこの灯都が"地下迷宮(ダンジョン)"と共に栄えた事に由来する。


 元々何かしら特産品がある街では商人が集まる傾向がある。その規模も他の街と比べ物にならない。更には魔石そのものを取引としているのだから、至極当然と言っても良い。


 だからこそ、魔石を買い取る場には当然"地下迷宮(ダンジョン)"についての知識も集まるだろうと言う思惑の元、俺達はここにやって来た。


「アヤメ殿、参られましたよ」


 エドアルドの視線の先、豊かな恰幅をし、にこやかな笑みを浮かべた男性が俺達を見るや否や、礼をした。丁寧な対応に、俺も慇懃に礼を返す。

 俺とエドアルドが頭を下げたのを見て、フィアも慌てて、真似をしていた。


「初めまして。今日は貴重ない時間をとって頂きありがとうございます」

「ほほほ、いやはや、我が商会の商人も貴方方には道中助けられたとお聞きいたしました。であれば、足を運ぶことくらい何という事はございません。ほほほ」


 頬を揺らしながら、独特な笑い方をする目の前の商人。


 俺達がこの"白亜の灯都スティーニオ"に訪れる際に乗っていた幌馬車。そこの商人が属する商会へ会いに来たのだが、そこで受付と話すと一番偉い人が出て来ることになっていた。


「さてさて、色々とお話を伺いたいところですが、此処ではなんです。どうぞこちらへ」


 恰幅の良い商人は、小部屋へ案内してくれる。


 俺たちはそれに続く。

 周囲の商人達が、興味深そうにこちらを見てくる。念の為、俺とエドアルドはさりげなく、フィアは視線から隠すように挟み込む。


 やがて二階へと通路を上がり、部屋へと案内された。その際に、飾られている陶器に目がいった。




 純白。




 陳腐だが、その鉱石を表すならばこの言葉が正しいだろう。

 汚れやシミひとつない白は、女神教の神殿に使われていてもおかしくない荘厳さもある。俺が見ている事に気付いたのか、恰幅の良い商人が語りかけてくる。


「気になりますかな?」

「え? あぁ、はい。そうですね。かなり質の良い鉱石を加工して造られた装飾品と見受けます。他の国や都市では見たことがないなと」

「ほほほ、それには理由があるのですよ」

「うん? どういうことですか?」


 見た感じ鉱石に何か問題があるようには思えない。


 これだけの美しさだ。欲しがる好事家は数多くいると思うが。


「この白色鉱石(ホワイト・ライト)は、この都市から離れれば離れるほどに色がくすんでしまうのです。土地の力に連動しているやら言われているが、詳しい理由は未だ分かってはいないのですよ。ほほほ」

「そうなのか。こんなに綺麗なのにもったいない事ですね」

「ですが、此処でしか採れないってことから、此処に住む人達にとっては、己のステータスシンボルとしてこの鉱石を使った調度品がかなりの人気を誇ります。これだけの為に来る『鍛冶屋』の職業を持つ方も多いんですよ」


 確かに先程待っている間に、『鍛冶屋』らしき人が居たなと思い出す。


 しかし、一定の範囲でしか純白を保てない鉱石か。

 何か理由があるのだろうか。考えられるのは、その土地由来の環境によるものだが。


 帰ったらアイリスにも聞いてみようか。


 もしかしたら、理由は分からずとも似た現象を知っているかもしれない。


「さてさて、貴方方の事はお聞きいたしました。襲い来る魔獣を容易く撃退したとか。いやはや、お強いですなぁ。それで、この灯都に来た目的はやはり例の魔石ですかな? であるならば、貴方方は冒険者なのですか?」

「いえ、俺達は冒険者ではありません」

「ほ? ですが、襲い来る道中魔獣を容易く倒したと聞きましたが」

「それは事実です。ですが、色々と都合があり冒険者にはなっていないのです」

「むぅ、なるほど。いやはや、それは勿体無いですなぁ」


 何か少しだけ惜しい様子で語る。

 その様子に、俺達が首を傾げると、商人は理由を語る。


「"地下迷宮(ダンジョン)"においての魔石の採取は冒険者ギルドが取り仕切っているからですよ。"地下迷宮(ダンジョン)"に潜る冒険者はその全てを冒険者ギルドに金と引き換えに渡す契約なのです」

「何と。では、"地下迷宮(ダンジョン)"に入るには冒険者になるのが必要不可欠ということでしょうか?」


 エドアルドが尋ねると、商会は頬を震わせて笑う。


「ほほほ、安心なされよ。一応、冒険者でなくとも"地下迷宮(ダンジョン)"に入ることは出来ます。そのような者達は探索者(シーカー)と呼ばれております。ですが、なろうとする者は殆どおりません」

「それは、何故でしょうか?」

「単純に旨味が少ないからです。探索者(シーカー)は、確かに冒険者でなくとも"地下迷宮(ダンジョン)"に潜って良い代わりに半分の得た魔石を冒険者ギルドに上納する決まりなのです。これは、この灯都における絶対のルールです。加えて、外に持ち出せる量も制限されている。だから殆どは冒険者となります」


 冒険者ギルドそのもののサポートも受けられないと考えたら、探索者(シーカー)になる旨みが少ないと言う訳か。


 まぁ、俺は冒険者になるつもりはないから必ず魔石の半数は持っていかれるということか。そう考えると確かに損が多いな。


「そもそも、探索者(シーカー)は殆どが冒険者にはなれなかった力無き人がそれでもと、"地下迷宮(ダンジョン)"に夢を見た者がなる果てです。そして、そんな人達が得られる魔石の量は知れてます。その上で半分を持っていかれるのだから、探索者(シーカー)になろうとする人など一部(・・)を除いてほとんどおりません」

「なるほど……ならば流通する魔石は冒険者ギルドが全て仕切っていると言う事ですか。これだけの莫大な利益、一組織が供給の担い手を請け負うとは。それほどまでに冒険者の質が高いのか、それとも、それを周囲に認めさせるだけの実績を勝ち取った組織人を褒めるべきでしょうか」


 エドアルドの言葉に、恰幅の良い商人は頷く。


「えぇ。実際前までは好き勝手に皆、魔石を求めて"地下迷宮(ダンジョン)"に潜りました。しかし、当然それによる利権争いや裏組織の犯罪によりこの都市が荒れました。しかし、そこへレイモンド・リューゲンと呼ばれる男が台頭致しました」

「レイモンド・リューゲン?」

「えぇ。彼は人々をまとめ上げ、裏組織を壊滅させた。よって、この都市はより繁栄した。今ではこの灯都で、その名を知らない者はいませんよ。何せ、今の彼は冒険者ギルドの総統となのですから」

「へぇ……」


 冒険者ギルドにおける総統か。


 冒険者ギルドとて、組織だ。それもほぼ国家を跨ぐほどに強大な組織。


 魔石という資源。そして多くの思惑が絡み合うこの都で、冒険者ギルドの地位を確固たるものにしたその手腕は、なるほど恐れ入るな。


「ねぇ、結局魔石ってどんなのなの? あたし、直接見たことない」


 会話の最中、蚊帳の外だったフィアが唇を尖らせながら尋ねて。


「こら、フィア。尋ね方が失礼だよ。……でも、確かに興味はあります。倒せば必ず魔獣が落とす魔石がどういうのなのか」

「ほほ、ではご覧になりますか? 少々お待ちを」


 商人はは棚から袋を取り出し、そのまま中身を手のひらへと転がした。

 そこにあったのは半透明な不揃いな粒。しかし、微かに漂う惹きつけるような気配。


「これが魔石……通称"不純なき魔石(サンポ)"って言われるものです。元々、魔獣は種族や特殊な個体によっては体内に宿す事がございますが、この"地下迷宮(ダンジョン)"に生息する魔獣は大なり小なり必ずこれが出てきます」


 小指の爪ほどの魔石だが、確かに透き通っている。通常であれば必ず澱みのようなものがあるはずだ。


「更にこの"不純なき魔石(サンポ)"は街中で至る所にも使われおります。貴方方も見たのではないでしょうか? 入り口近くにあるこの灯都の地図を表した球体を」

「確かに拝見致しました。やはりあれにも魔石が使用されていたんですね」

「アヤメ殿。この街の繁栄にはこの魔石が深く関わっているというのは確かのようですね」


 俺とエドアルドが納得したように頷く。


「それでその、"地下迷宮(ダンジョン)"とは内部はどうなっているのですか?」

「ほほほ、申し訳ないのですが、冒険者ギルド以外に"地下迷宮(ダンジョン)"内部の情報はあまり出回っていません。だから、もし"地下迷宮(ダンジョン)"に入るなら素直に冒険者ギルドに行った方が良いでしょうなぁ」

「そうですか……」

「ほほほ、お力に添えず、申し訳ない。しかし、代わりにこの灯都にいる間は我々が貴方方の力となりましょう。何かあれば、すぐ頼りください」

「それは、良いんですか?」

「もし魔石を手に入れられたら是非ともわたくしにお話をしてください。冒険者であれば魔石は全て冒険者ギルドに買われますが、探索者(シーカー)であれば半数は取られても、残りは好きにして良いそうですので。やはり、大きな魔石を得られる程の実力者は希少ですから」


 やけに親切だとは思ってはいたが、今までの会話で俺が冒険者になる気がないのは薄々わかっていたのだろう。


 そもそも、道中共に行動した商人から話を聞いていたのなら、冒険者の証であるカードを持っていなかったから、最初からわかっていた可能性が高い。


 それで、俺達の実力をこの灯都の来る時に乗った帆馬車の商人から聞いていたから、探索者(シーカー)になった際に冒険者ギルドを介さずに高品質な"不純なき魔石(サンボ)"を手に入れられたらと思ったのか。


 こういう所は、商人らしく強かだなと思った。

 だが、ある程度商人の協力を得られるのは悪くない収穫だ。







「うぅむ。思ったよりも複雑かつ奇妙な処だね、此処は」


 結局、"不純なき魔石(サンボ)"については深く知れたが、詳しい"地下迷宮(ダンジョン)"の内部だとかは、わからなかった。


 彼らは"不純なき魔石(サンボ)"を売るのが仕事であり、流石にそこはお門違いと言う奴だろう。


「やはり一番情報が集まるのは冒険者ギルドか。だが、それ以外の所でも情報を集めたいな。だが、商会がダメとなると……」

「でしたらアヤメ殿。ご提案がございます」

「エドアルド?」


 彼の言いたい事がなんとなくわかった俺は、一応確認の意味も踏まえて彼に問いかける。


「古来より情報とは酒場に集まるもの。良くも悪くも酒は人の口を軽くします。貴方の言う通り、情報は多方面的に集まり、初めて意味を持つ。私は別の筋から探ってみることとします」

「しかし、酒場は荒くれ者が集まりやすい傾向も……ん、いや、そうだな。情報は多ければ多いほど良い。俺では腹芸には向いていない。任せられるか?」

「御意」


 途中まで否定しかけた俺だが、考え直した。

 エドアルドなら、大人の対応も出来るだろう。それに、確かに情報は多い方が良い。


 俺の言葉に頼もしく頷く。


「えぇー、やっくんどっか行っちゃうの?」


 俺たちの会話にフィアが不満そうに口を尖らず。


「えぇ。なので、アヤメ殿をよろしくお願い致します。これは貴方にしか任せられないことです。イフィゲニア殿」

「うーん……わかった! アニィの事はあたしに任せて!」

「君達の中で俺はどういう扱いなんだ?」

「「すぐ無茶する(かと)」」


 ひどいよ。


 その後、俺達は集合場所と時間を決め、別れることになった。


「では、アヤメ殿。私は、一度失礼致します」

「あぁ、うん。気をつけて」

「また後でねー!」


 すれ違う時に、ボソリと呟く。


「お気をつけて」


 どっちの意味で、と思わなくもなかったが俺は頷く。

 俺達は人混みに消えていったエドアルドを見送った。


「さて、彼も行ったから俺たちも情報を集めるためにおもむこうか」

「うん! やっくんにも頼まれたし、アニィの事はあたしが守ってあげるよ。どーんと、任せて!」

「はは……お手柔らかに頼むよ」


 やけに自信ありげに意気込むフィアに、俺は笑いかけながらそう語りかけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ