第54章「歴史に埋もれていたもの……それは単なる秘密ではなかった……」
ある寒い夜――
一人の幼い少年が、焼け焦げた木々に囲まれた道を、恐怖に駆られながら走っていた。
あまりの恐怖に、道に転がっていた岩に気づくことさえできず、足を取られて転倒し、頭を強く打ちつけてしまう。
少年は顔についた血を拭い、再び走り始めた。
そして――
巨大な城壁の門へとたどり着く。
だが、そこで彼が目にしたのは、門の前に立っていた二人の門番の死体だった!
少年の身体が、一瞬凍りつく。
しかし、すぐに門をくぐり、両側に家々が立ち並ぶ道を駆け抜けていった。
家々の前には無数の死体が転がり、地面は血で埋め尽くされていた!
やがて、少年は一軒の巨大な屋敷へと近づいていく。
いや……それは、むしろ宮殿と呼ぶにふさわしい建物だった。
その門は大きく開け放たれ、周囲の至る所に警備兵たちの死体が散乱していた。
少年は必死に走り続ける。
だが、その途中で死体の一つにつまずき、宮殿の門の前で地面に倒れ込んでしまった。
慌てて立ち上がろうとする。
しかし――
地面から突如として鎖が現れ、少年の身体を拘束した!
必死に抵抗するものの、どうにか膝をつくのが精一杯だった。
少年が前方へ目を向けると、遠くに宮殿の中にいる一人の男が見えた。
その男は剣を手にして高く振り上げていた。
そして――
目の前で膝をついている男の首を、今にも斬り落とそうとしていた!
少年の目が限界まで見開かれる。
そして、かすれた声で呟いた。
「やめろ……」
「やめろ……」
振り上げられた剣が、勢いよく振り下ろされる!
その瞬間――
少年は叫びながら、拘束された片手をどうにか振りほどき、その男へと手を伸ばした!
「やめろ!!」
すると――
誰かの手が伸び、少年の差し出した手を掴んだ。
ハイヴェンはゆっくりと目を開けた。
自分の手が前方へ伸びていることに気づく。
そして、その手を掴んでいるのはアレスだった。
アレスは心配そうに声を上げた。
「ハイヴェン!」
「だ、大丈夫か!?」
ハイヴェンは激しく息を切らしながら尋ねた。
「ここは……どこだ……?」
「俺たちは……どこにいる?」
彼は慌てて周囲を見回し、不安げに声を上げる。
「監督官はどこへ行った!?」
「ついさっきまで、俺に攻撃を仕掛けようとしていたはずだ!」
「一体、何が起きたんだ!?」
アレスは困惑した様子で彼を見つめ、心の中で考えた。
「記憶を失ったのか……? それとも……?」
「そういえば、前回は起きたことを細部まで覚えていたはずだ……」
「これは、一度に大量のアルケトラを消費した影響なのか?」
アレスの脳裏に、ハイヴェンと監督官との戦いの後、ハイヴェンの身体から大量のアルケトラが放出された光景が浮かぶ……。
彼はさらに考えを巡らせる。
「それとも……外部からのアルケトラの干渉が原因なのか……?」
今度は、ハイヴェンと監督官との戦いで、アレスが最後の攻撃をネックレスに向けて放った瞬間の記憶が、彼の脳裏に蘇った……。
アレスはハイヴェンに尋ねた。
「ハイヴェン……最後に覚えていることを、正確に教えてくれないか?」
ハイヴェンはしばらく考え込んでから答えた。
「最後に覚えているのは……」
「監督官の防御に生じた隙を突いて、攻撃を当てようとしていた時だ。」
「だが、突然……妙な感覚に襲われた。」
「まるで、背後から攻撃を仕掛けられているような感覚だった……」
「それから先のことは、何も覚えていない。」
アレスは困惑したまま、しばらくハイヴェンを見つめ、心の中で呟いた。
「真実を話せば、こいつは起きたことのすべてを自分の責任だと思い込み、いつまでも自分を責め続けるだろう……」
「嘘をつくこともできるが……」
そして、彼が口を開き、実際に起きたこととは別の話を伝えようとした、その時――
言葉が口から出るよりも先に、ハイヴェンの瞳に宿る、あの信頼の眼差しが目に入った。
アレスは言おうとしていたことを思いとどまる。
そして、心の中で呟いた。
「だが……ハイヴェンは、そんなことを受け入れないだろう。」
「こいつの信頼を裏切るわけにはいかない……」
「ただ、真実を話そう。」
アレスは、戦いの中で起きたことをすべて詳しく話した。
そして、二人が勝利できたのは、監督官が助けてくれたおかげだったという事実も伝えた。
アレスの話を聞き終えたハイヴェンは、驚愕の表情を浮かべていた。
やがて、穏やかな笑みを浮かべ、皮肉めいた口調で言った。
「つまり……結局のところ、俺はまたお前の足手まといになっただけだったわけか……」
アレスは、同情するような眼差しでしばらくハイヴェンを見つめた。
それから立ち上がって言った。
「とにかく、試験はもう終わった。」
「どういうわけか、俺たち二人とも合格できたんだ。それだけで十分すぎる結果だ。」
「それに、俺だって支援の道を持つジュータル頂点だ。それでも、あの監督官にはまるで歯が立たなかった。」
「だから、すべての責任を自分一人で背負い込むな。」
「それに……試験終了間際に三体もの人形を斬ろうとしたのは、あまりにも無謀だった。」
「俺の身勝手を許してくれ。お前には、あまりにも大きな負担をかけてしまった……」
アレスはハイヴェンの方を見た。
彼は壁に背を預け、膝を胸元に抱え込むようにして座っていた。
その瞳には、深い絶望の色が浮かんでいた……。
アレスは一瞬、黙り込んだ。
それから、ハイヴェンを鋭い眼差しで見つめる。
そして、立ち去りながら言った。
「とにかく……明日の最終試験に備えておけ。」
アレスはその場を去った。
夕日はすでに沈み始めていた。
試験場には、ハイヴェンだけが一人残されていた……。
ハイヴェンは心の中で呟く。
「間違っているぞ、アレス……」
「すべては、俺が弱かったせいで起きたことだ。」
「あの時……あの瞬間に本能状態へ入ってしまったことこそ、考え得る限り最も危険な事態だった。」
「強力な監督官と、このネックレスがなければ……アレスも、監督官も、何人もの生徒たちも、そして俺自身も、今頃は死んでいただろう。」
「それに……お前は話の中で、その事実を隠そうとしていたな、アレス。」
「だが、そのことを誰よりも理解しているのは……俺だ。」
「あの最後の攻撃の時……」
アレスがハイヴェンに向かって駆け出し、ユルヴァナを凝縮させた自分の剣を投げつけて、彼の注意を逸らそうとした場面が、ぼんやりとした記憶となって脳裏に浮かんだ……。
ハイヴェンは心の中で語り続ける。
「あの策が俺に通用するかどうか……お前には、何の確証もなかったはずだ!」
「もし、あの策が失敗していたら……お前には、俺の攻撃を回避するだけの時間は残されていなかった。」
「そして……お前は今頃、死んでいただろう。」
「お前はそのことを十分に理解していた。」
「それでも……わずかな可能性に自分の命を賭け、俺を信じてくれたんだ……」
彼の目が、徐々に閉じていく。
そして、最後の言葉を囁いた。
「自分自身すら制御できない……俺のような弱者には……」
「アレス……お前の信頼を受ける資格なんてない……」
彼の目は、完全に閉じられた……。
……
遠く離れた場所――
人里離れた地域にある、崩壊した建物の瓦礫の中に、一人の謎めいた人物が立っていた。
そこへ、もう一人の仮面をつけた人物がやって来る。
謎の人物は一通の手紙を差し出し、告げた。
「これを、首領に直接届けろ……」
仮面の男:
「そう簡単にはいきません。首領は今、この時期にすでに十分すぎるほどの問題を抱えています。」
「どのような要件であれ、対応には最低でも数日はかかるでしょう。」
謎の人物:
「ならば……何としてでも時間を作らせろ!」
仮面の男は、一瞬驚愕した。
「何ですって!?」
謎の人物は続けた。
「これは重大な問題だ。」
「首領が今夜中に迅速な措置を取るか……それとも、計画全体が意味を失うか、そのどちらかだ!」
そして――
謎の人物の顔が明らかになる。
その正体は、シロだった!!




