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閑話-5

「おいそこの!若様を知らんか?」


 通学の途中、黒服に黒いサングラスを架けた男達に声をかけられる事になった。

 唐突に若様と言われても、誰の事かなぞ判る筈も無いのが普通だ。まして、自分達が誰に仕えているのかさえ明かさないのであればなおの事判る筈も無い。

 なので、知らないという意思表示に首を振る事にした。


 普通ならこれで諦めるであろう筈だが、そんなことはなかった


「お前なら知っている筈だ!言え!知ってるんだろ!」


 その中の一人が気でも触れたかの様に聞いてくるのだが、その言葉には「若様」が誰なのか?それが判る言葉が一切なくそれでいて、こちらが知っていると決め付けた問い掛けをしてくるのだから、ハッキリいって傍迷惑意外の何者でもない。


「・・・そもそもアンタ方が言ってる「若様」って誰だ?・・・それを言わずに知っている筈と決め付けられても困るだけなんだが?」


 詰め寄ってくる男へと言葉を投げかけるのではなく、投げつけた格好なのはこちらとしても横柄な態度から決め付けてきたことに怒りを覚えたからで・・・

 男の同僚であろう黒服が、詰め寄ってきた男の肩を掴み静止させたのは俺が声を挙げたのをほぼ同時だった。


「失礼した・・・確かに我々が誰に仕えているのかを示さずに知っているかどうか聞いても判らないままだな?・・・」


 そう告げたのもやはり黒服だった。

 恐らくだが、この黒服集団のリーダー格なのだろうが、態度自体は相変わらず横柄なのはどうなのだろうか?

 ・・・この時点でこの黒服が誰に仕えている連中なのか?それには察しがついた訳だが・・・

 要するに岩動いするぎの親が雇っている岩動いするぎのボディガードなのだろう。この黒服集団は・・・

 であれば、尚の事知る筈も無いし知りたくも無い。ありていに言って俺と岩動いするぎは敵対関係にある。無論、岩動いするぎが一方的に敵意を抱いた結果として敵対関係に至った訳だが

 俺自身ヤツには興味が無いというか、関心や関係を持ちたいとは欠片も思って居ない訳だ

 なので・・・


「アンタ方の態度で誰に仕えているかは判った・・・が・・・知らないし知りたくもないな・・・こちらに迷惑だけをかけるだけかけて入院した奴の事等な・・・ハッキリ言おう・・・知らないし聞かれても迷惑なだけだ・・・ここで聞いている暇があるのなら手分けして自身の足で探せ!」


 そう一方的に黒服へと告げ、踵を返して通学路へと向かおうとした。・・・までは良かったのだが・・・


「・・・チッ!・・・ガキが・・・付け上がりやがって・・・」


 そんな呟きを拾う・・・が、付け上がっているのは果たしてどちらだろうか?・・・

「主人が横柄だと、仕えている人間もまた横柄になる」

 そんな典型的事例を垣間見ることになるとは・・・ある種不幸と言って良いだろうか?


 そう埒も無く考えていると遠くから警察車両のサイレンが聞こえてきた。

 どうやら、誰かが俺が黒服達に囲まれているのを不憫に思い連絡を付けたのだろう。

 出来れば、もう少し早いタイミングであって欲しかったのだが、それをいうだけ野暮というものだろう。


「チッ!・・・誰だ?マッポに通報したのは?・・・仕方ない!別の場所で聞きこみだ・・・行くぞ」


 サイレンを耳にして、怒りの矛先を変えたらしい黒服達。

 現れたのも唐突なら、立ち去り方もまた唐突であった。


 男達が立ち去ってから1分程で警察が到着し結果、俺は事情聴取を受ける事となった。

 とは言っても、被害者的立場であるからそうキツイ聴取ではなかった。

 ただ、推測にしか過ぎないと前置きした上で黒服連中が岩動いするぎの関係者であり、本人が入院先から脱走し行方不明となっている可能性が高いとは話したのだが・・・

 聴取を担当した警察官もそれを俺から聞き、渋い表情になっていた。


「今回は野良犬に噛まれたと思って我慢してくれ・・・岩動いするぎは警察としては厄介極まりない相手なんでなぁ・・・」


 そう告げた警察官

 聴取から開放されたのは良いが、完全に学校へは遅刻決定となってしまった。

 開放された時刻が午後12時を回ってしまっていたのだから・・・

 警察署へいく前に学校へと連絡をしておいたのは幸いだったのだが・・・どこまでも祟るというか居なくても他人へ迷惑をかける岩動いするぎには手を焼かされる。


 だから関わり合いになりたくないのだ・・・そのリストに件の黒服連中が付け加えられたのは言うまでもない事だ・・・普通ならそのままサボるのだろうがそういう訳にもいかない。何故なら・・・病院から脱走した事を知らせなければならないのだから・・・面倒だがやらない訳にはいかない問題なのだコレに冠しては・・・


 尚、午後になってから学校へと顔を出し、岩動いするぎが病院から脱走した事をクラスで告げると・・・様相が阿鼻叫喚の地獄絵図へと変化したのは言うまでも無い。

 急遽持たれたクラス内(無論、授業はそっちのけ)での話し合いで、クラス全員一致の決議を持って俺が七瀬の護衛を兼ねた学校への送り迎えを担当する事になったのは完全に余禄である。

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