旅路Ⅱ-13
形態変化のログが流れると同時に、船体の状況を表す3Dグラフィックが目の前に表示される。
その様子を言葉も発する事も無いままそのグラフィックを眺めるパーティーメンバーの眼前で、船体の変形が始まる。
まず、手始めとしてホバー機構が全力をもって機能を開放しその船体をある程度の高さへと押し上げる。
そうしてから、全長2500mの巨体。その後方部分1500mにあたるパーツが左右に割れつつスライドし、前方1000m部分。船体本体の左右へと移動し接続される。
次に起こったのが、砲塔部分の変化である。
砲塔基部前後50mを残しその他の部分が前後へと移動、末端まで辿り着くと90度回転しながら本体パーツへと接続され左右で前後に飛び出した形状であった部分を埋める形となった。
この変形で船体はより戦車と呼べる趣を持つ外観を変える事となった訳だが、変化はまだ終わらない。
船体下部の一部分が幾つかスライドして開き、新たな駆動装置を4基を繰り出しまた、元々備わっていた駆動装置もまた同様に新しい駆動装置と同じ様に移動し新たに分離接続されたパーツ下部へと移動し直列した状態で船体下部に接続。左右4基ずつが直列状態で船体下部へと接続され結果として陸上戦闘艦は、戦車と呼ばれる車両に最も近い形状へと変化する事となった。
元々が巨体故に、小さくなった様に受け取れるかもしれないが質量自体は変わっておらず、巨体故の防御性能もまた健在である。
更に付け加えるならば、後方から割れつつ左右へと移動した部分にも新たな変化が訪れる。
砲塔部分と同一であったパーツの高さが全体的に下方へとスライドしその下部に備わった4対8基の駆動装置と共に地面へと接地し、船体自体の高さを押し上げる形となる。それによって接地部分から砲塔上部までの高さは90m程となった事は些細な事であろう。
また、パーツ上部が観音開きの様に割れスライドしながらそれぞれの側面へと引き込まれていく。
その装甲部分で覆われていた兵器群が露わになる。
一見すると半球形のドームと思われる構造体が左右4基ずつ出てくるのだが、この構造体もまた超絶的兵器の一部である。
何故ならば、その正体は陽電子加速砲であるからだ。
砲に見えないがそれだからこその利点も存在する。ドーム状の構造体内部に陽電子加速基を内臓している為砲身を必要とせず整備も簡単である事も利点だが、砲身が存在しない事が最大の利点であろう。
つまり砲塔が正面を向いていてもこの構造体から陽電子の槍を叩き込む事を相手に悟らせる事がないまま行うことが可能になったという事だ。
砲身を持たない事の利点がもう一つ。それは対空砲としても活用が可能だと言う点である。
また、エネルギー兵器ならではという利点もまた存在する。
物理兵器ならば垂直発射した質量体はある程度の上空まで到達したならば落下しその運動エネルギーで船体を傷つける可能性もあるだろうが、エネルギー兵器ならば減衰し消え去るだけで落下する事も無く質量体の落下ダメージの懸念も無い。
コスト面ではどうか?だがほぼ無いに等しい。
何故ならば、主砲用に用いられている予備のジュネレーターの出力は陽電子加速砲8基を加えても余剰ともいえる出力があるからであり、供給されるエネルギーがある限り撃つことが可能なのだから通常兵器である物理攻撃兵器が常に持つ搭載限界を気にせずとも良いという利点は発生する。
質量体を納めて置く必要性がない事もまた利点となる。
その分空いた空間に別の兵器を付けたり、生産設備を備えたりと考え付く様々な活用法が出てくるのも魅力であろう。
この船体では、空いた空間を活用し防御兵器を搭載している。
定点障壁がソレである。この防御兵器は主動力ジュネレーターからのエネルギー供給が成され、砲撃中に防御力が低下する懸念がない事も魅力であろう。
この形態変化によって攻守共に万全に近い装備が整った事もまた事実である。
が、それを容易に受け入れられるかはパーティーメンバーの心情一つで変わってくるのも厳然たる事実であろう。




