表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/51

2nd episode-10

「なあなあ、あたしのも食べるか?」

 不意に掛けられた声に、勇樹は振り向いた。

 が、そこには誰も居なかった。

 否。

 視界に入っていなかった。相手の身長が低かったのだ。視線を落とすと、視界に四人の女の子が入ってきた。

 身長は先程のキキーモラと変わらぬ程度だが、キキーモラが人間の縮尺を半分にしたような姿だったのに対し、こちらの四人は、完全に幼女である。

 目は大きくくりくりとしており、ほっぺたも鼻も丸くて愛らしく、肌は白くぷにっとしている。それぞれ金髪に黒髪、それから茶髪がふたり。黒髪以外の子はその髪をアップにしてまとめているようだ。

 それぞれ手にはフォークと小皿を持ち、ちょっとした料理が盛られている。

「聞いとるー?」

 そして四人の中から金髪の子が代表するようにしゃべった。なぜかイントネーションが関西風な感じだ。

「あ、うん。聞いてるよ? えっと料理をくれるのかな?」

 勇樹は四人に笑顔を向けながら聞いてみた。金髪の子の後ろで、茶髪の二人がひそひそと声を交わし、小さく笑う。黒髪の子はぽやーっとした様子で勇樹の方を見ていた。

 金髪の子が口を開いた。

「そう言うとるやろ? 後、あんまガキ扱いすんなや。わたしらあんたらと変わらんくらいの歳なんやから」

「……へ?」

 金髪の子の言葉に呆気にとられる勇樹。するとそちらにシルヴィアが顔を覗かせた。

「どうした? お? 四つ子?」

「あらアーユにニンヴ、フォルトとフォニも」

 一緒になってリューナもこちらを見ると、親しげに名前を呼んでいた。勇樹は軽く驚きリューナを見上げた。

「リューナの知ってる子達?」

「ええ、同じサファイアドラグーン所属の小人コロット族の姉妹ですよ。四つ子じゃないんですよ。こちらが一番お姉さんのアーユ」

 リューナに紹介され金髪の子が胸をそらす。

「アーユ・プレジェッタや? よろしゅう」

「それから双子のニンヴとフォルト」

 ついで紹介されたのは茶髪の双子。

「ニンヴ・プレジェッタです。よろしくです」

「フォルト・プレジェッタ。よろしくね?」

 ニンヴは丁寧に頭を下げ、フォルトは笑いながら胸を張る。

「末っ子のフォニ」

「ん。よろしく」

 最後に紹介された黒髪のフォニは言葉少なに挨拶した。

 四人を紹介してリューナが微笑んだ。

「年子の姉妹なんですよ。見た目は幼く見えますけど、年齢的にも私たちと変わらないくらいなんですよ?」

 リューナの説明に驚いていると、アーユが口を開いた。

「あたしは十六や」

「わたしは十五です」

「同じくね」

「十四」

 次々に明かされた年齢を聞いてさらに驚いてしまう。見た感じでは小学校低学年にも届かない位にしか見えないのだ。

小人コロット族はこれで外見の成長が止まってしまうんですよ」

「へえ~」

「そうなのか」

 リュミナに言われ、勇樹とシルヴィアは驚いていた。

 悠真も目を丸くして四人を見ていた。同じ歳で自分より小さい子を見るのは初めてだからだ。

 と、フォニが悠真に気づいてそちらを見た。

「!」

 ぴくりと、軽く驚いてしまう悠真。だが、フォニは静かに、柔らかく笑うと、姉妹達から離れて悠真に近づいた。

「……食べる?」

「え?」

 唐突に言われて悠真は聞き返した。だがフォニは答えること無く、手にした小皿に載せた白い皮状のもので具材を包んだ、きんちゃく型の餃子のような料理を見せてきた。

 悠真が一瞬詰まる。

 が、フォニはフォークで躊躇無くそれを切り開き、中身が見えるようにした。

 中身は肉団子のようだった。

「……おいしいよ?」

 フォニがそう言って笑うと、悠真はうなずき、意を決してその料理をフォークで突き刺し、口元まで運んで中へ放り込んだ。

「……キーザという料理だ。ソースをかけたりする場合もあるが、そのままでも肉汁や練り込んだ野菜の旨味が味わえて美味しいんだ」

「……うん美味しい」

 フォニの説明を聞きながらキーザを咀嚼していた悠真だったが、口の中に広がる旨味に目を輝かせた。

 彼女がポツリと漏らした言葉に、フォニが小さく笑った。

「……よかった。キーザは私の好物なんだ。姉たちは色々かけてしまうが、私は何もかけないで食べるのが好きなんだ」

「そ、そうなんだ」

 嬉しそうに話すフォニに吊られるようにして、悠真も楽しげに笑った。

 そして。

「……そうだ、自己紹介がまだだった。私はフォニ。フォニ・プレジェッタだ」

 自己紹介を受けて、悠真は椅子から降りた。

「私は悠真。金……じゃなくて、悠真・金沢です。よ、よろしく……」 おっかなびっくり手を差し出す悠真。フォニはちょっと驚いた。

「これは?」

 悠真が出した手の意味が分からなかったらしい。すかさず勇樹が助け船を出した。

「その手を出されたのと同じ手で握り返すんだ。友好の証としてね」

 その説明にフォニは、はにかむように笑った。そして、悠真を見上げながら手を握り返した。

「……うんよろしく。ユマ」

「うん!」

 フォニの言葉に、悠真は嬉しそうにうなずいた。

「……むう。あのフォニが自分からなんてめずらし事もあるもんやな」

「ハイです」

 その光景に、アーユが呟くとニンヴがうなずいた。それを聞いてシルヴィア首を傾げた。

「そうなのか?」

「ええ、フォニってばさみしがり屋の癖に冷めたような態度ばかり取るのよだから友達が少なくて」

 訊ねてきたシルヴィアにフォルトが答えた。

「だからフォニちゃんが自分から友達になりに行ったのは、姉として嬉しいです」

 そしてニンヴが嬉しそうに笑う。

「ま、なんにしても仲が良いのは良いことや。あたしらも仲良くしよか?」

「そうだね」

 アーユがそう言うと勇樹も頷いて笑った。

 その様子を見ていて、レアリーは安堵の息を吐いた。

 アーユ達小人族コロットは、種族に偏見を持たない者達だ。好奇心旺盛な彼女達が、三人の異世界人との良い架け橋になってくれそうだからだ。

 案の定、それ以降は交遊関係の広い彼女達からの繋がりで、異世界人に興味を持っていた面々が入れ替わり立ち替わりやって来て勇樹達と交流し始めた。

 おかげで勇樹達は食事どころではなくなっていたが、訪れるメンバーは料理を手土産にしているので大丈夫だろう。勇樹とシルヴィアの順応性の高さもあるが、この分なら比較的早く馴染めそうである。

「問題は……」

 レアリーは勇樹達からは離れ、無視するかのような数人に視線を走らせた。

 リュミナを始めとする異世界人である勇樹達に隔意を持つメンバーだ。せっかくの祝勝会に水を差すこともないと、今は空気を読んで大人しくしている。この辺りは502所属らしいところではある。しかし。

「……まだまだ問題は尽きないね」

 何も知らない異世界人を抱えただけでもトラブルの種は尽きないと言うのに、さらに不安要素を感じ、レアリーはため息を吐いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ