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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
2.奥州奮闘編
16/143

1182年3月 模擬戦前

奥州平泉・鍛冶屋


「俺っちが千人の頭になるなんて夢みてえだ。アンタって凄えんだな」


鉄八は優介に感謝すると、鳥の鉄板焼きを口に放り込んだ。

優介が浮かない顔で応える。


「一カ月の間だけかもな……。戦いに負ければシャベル鍛冶場も終わりだ」


「あんたなら簡単だろ。京で五千人もとっつかまえてきた大将なんだから」


平泉ではすでに模擬戦の噂が拡がっていた。それも予想の大半は優介の勝利だ。派手な鎧を着て凱旋させられたせいで、民衆は優介を英雄だと信じていた。キララまで「チアリーダで応援するね」と、変に盛り上がっている。


「誰も俺を心配してくれない……」


――肩を落としていてもしょうがない。シャベルで勝つ方法を考えなければ。


――――――――――――――――――――

奥州平泉・藤原泰衡邸


藤原秀衡の嫡男・泰衡は自邸に帰ってくると、大声で叫んだ


ユーリ(由利)! ユーリはいるか!」


縁側で寝ていた由利維平(通称ユーリ)が寝転がったまま顔を泰衡に向けた。


「父上が優介に釜石の一部だけではなく、軍も与えるらしい。ありえぬ話だ! 他国人ばかり重用しおって。それほど私が頼りにならぬというのか?」


由利がむくりと体を起こす。


「図星だからってカリカリしなさんな。旦那も戦に自信が無いから、この由利維平(ゆーりこれひら)と組んだんだろう?」


由利は起き上がると泰衡の肩に腕を回す。


「手を放せ! 組んだのではない、山賊の貴様を雇い入れたのだ」


「義経に勝ちたくてな。だが俺様が来たら、義経は鎌倉に行っちまった。笑い話にもならねえ」


「百対百の模擬戦をすることになった。侍大将として指揮を採れ」


「偽英雄と戦ごっごか。退屈そうだ」


「優介を殺してもいい。どうせ偽物だ」


「ククク、秀衡のお気に入りを殺せとは、少しは腹が座ってきたじゃねえか」


「勝てば貴様が英雄になる。山賊からの大出世だ。討伐される前に私と出会ったことに感謝するんだな」


「英雄か、悪くない褒美だ。だが――」


由利はそこまで言うと泰衡をギロリと睨んだ。


「俺様は討たれるのが怖くて山賊を止めたんじゃねえ。志があるから止めたんだ。それを忘れるな」


―――――――――――――――――――――

奥州釜石・鍛冶場


優介は釜石で解放された千人のうち九百人をシャベル鍛冶場に回すと、残りの百人をシャベル隊と名付け、シャベルの使い方を教えていた。


「一番早く掘った二人組には、鉄板焼きをやるぞー」


「「「おおーっ!」」」


昔、穴掘り大会でペアチームの優勝者が30分で2m以上掘ったというニュースを聞いて驚いたことがある。毎日練習すれば、素人でも早く穴を掘れるはずだ。



シャベル隊が並んでいるところに、騎馬が突っ込んできた。


「オラオラオラオラ―――っ!」


逃げ惑うシャベル隊に棒を容赦なく振り下ろす


「ハハハハ! クズども、その武器は飾りかあ? 戦わねえなら死んじまえよ。クズクズクズクズゥ!!」


「やめろ!」


「てめえが優介か。泰衡の侍大将・ユーリ様が挨拶に来てやったぞ!」


「模擬戦は二週間後のはずだ」


「戦ってのはな、戦う前に始まってんだよ、素人!」


優介の身体は由利の打撃で吹っ飛ばされた。


「これが大物見(威力偵察)ってやつだ。覚えておけ。ハハハハ!」



由利が騎馬で走り去った後には、俺を含め十人がうずくまっていた。

キララが駆け寄ってくる。


「アイツなんなの! 笑いながら人を叩いてさ」


「痛ててて。やはり武士は強いな。だが、勝機をユーリが教えてくれた」


「え? 頭叩かれておかしくなったの? 今、コテンパンにやられたじゃん」


――――――――――――――――――――

奥州の草原


模擬戦当日、戦場となる草原には戦見物しようと、大勢の人が集まっていた。見晴らしのいい丘には秀衡一族と吉次が陣取っている。


「吉次、平泉の民も楽しみにしておるようだのう」


「はい、一週間前に戦場を発表してからというもの、平泉中の噂になり、場所取りをする者まで出ております。ですが、民に見せてしまってもよろしいのでしょうか?」


「民に娯楽を与えるのも、政の一つだ」


「ですが、優介が負ければ、民は偽の英雄だと思うでしょう」


「わしとそなたの見る目が無かったということだ。泰衡の言う通り、他国人に頼るのは、これ限りにする」


「……わかりました」



泰衡軍と優介軍が百人ずつ率いて現れた。

その間に神主が立ち、大音声で言う。


「これより神に捧げる戦を始める! しかし、ここにいる者は、みな奥州の民である。殺生を控え、参ったといった相手にとどめを刺さぬよう――これより、百を数えた後に戦を始める。ひとーつ! ふたーつ!」


優介軍は馬がいないので駆け足で離れて行く。泰衡軍はその場を動くことも無く、馬上の泰衡と由利はニヤニヤしながら優介軍を眺めていた。


「きゅうじゅうきゅう! ひゃあーくうっ!!」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 平安時代に「威力偵察」は無いのでは……せめて大物見とか……まあ今更かも知れませんが
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