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鎌倉時代でバズりたい!!  作者: キムラ ナオト
2.奥州奮闘編
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1181年10月 藤原泰衡

奥州・石巻湊


奥州に到着した優介たちを待っていたのは奥州軍だった。怯える避難民を追い立てるよう連れていく。

優介は吉次に詰め寄った。


「鉄鉱山が見つかったら民を助ける。そういう取引だったはず!」


「優介には褒美として荘園が与えられます。孤児百人は養えるでしょう。他の民は俘虜として釜石鉱山で働いてもらいます」


「奴隷にする気ですか!」


「飢えはしない! 民は助けるという約定は守っています」


吉次は湊に浮かぶ大船団を指す。


「船を調達するために奥州藤原家は二カ月もの間、交易を止めた。莫大な損失です。取り返すのは当然のこと」


「鉄鉱山が見つかったからいいでしょう!」


「掘らねば無いのと同じ。そして掘るのには大勢の人が必要です。言っておきますが、鉱山には残りの孤児を連れていきます。よからぬことを考えぬように」


――人質まで取られてしまった。これでは下手に動けない。



「お兄ちゃん、大丈夫? 吉次さんってサイテーね」


「……今は従うしかない。キララ、幼い子から順に百人集めてくれ」



民の群れを奥州軍の一部が連行していき、優介は残りの奥州軍と平泉に向かった。

平泉の街並みが遠望できる場所で、吉次は軍を止める。


「この辺りでいいでしょう。これを着て白馬に乗りなさい。手綱は郎党が引いてゆきます。優介はただ乗って手を振っているだけでいい」


渡されたのは黄金の装飾がほどこされた白色縅の鎧だった。

周りの武士が有無を言わせず、優介に着せていく。


「お兄ちゃん、意外にイケてんじゃん!」


「吉次さん、これは何の真似です」


「平泉に着けばわかります」


―――――――――――――――――――――

奥州平泉


平泉の街を進む優介は民衆に喝采をもって迎えられた。

いつの間にか優介は軍の先頭を進んでいた。民衆の声が聞こえる。


「あれが京で大勝利を収めた侍大将だって」

「俘虜を五千人も連れてきたってことは、数万人の敵に勝ったってことだよな」

「相手は平家なのか?」

「誰だっていい。ずっといじめられていた奥州が大和に勝ったんだ」


優介にも状況がわかってきた。


――どうやら、俺は戦に勝利した侍大将らしい。


「何でこんな嘘を?」


「これからの奥州には英雄が必要と秀衡様は考えておられる。優介には偶像になってもらいます。嘘とハッタリは得意でしょう?」


――九条家でのことを言っているのか?


「ハッタリで軍は動かせません!」


「奥州は戦はしないし、あなたに軍も預けない。従ってバレることもない」


吉次は用意周到さに、優介は黙るしかなかった。


―――――――――――――――――――

奥州平泉・伽羅御所


その日の夜、優介は祝宴に呼ばれた。

広間には秀衡はまだおらず六人の男が座っていた。うち四人はまだ少年だ。


「秀衡様のご子息たちだ」


「並びがおかしくないですか。一番年上に見える人が下座にいる」


「国衡様は正室のお子ではない」


では、上座に座る青年が嫡男の泰衡か。神経質そうな顔をした男だ。

その泰衡が嫌悪の表情を隠さずに優介を見てきた。


「吉次よ、それが父上の新しい玩具か? 義経といい、貴様は余計な者ばかり、奥州へ連れてくる。困ったものだ」


「吉次はよくやっている」


「誰が義兄上に発言を許しましたか」


「……悪かった」


ずんぐりとした体の国衡が肩をすぼめる。庶子と嫡子の上下関係は厳しいようだ。


鈴の音が鳴ると泰衡をはじめ皆が黙った。

秀衡がやってきて上座に座ると歯を見せて笑った。


「歯磨きを続けておられたのですね。白く輝いております」


「信じておるわけではないぞ。磨くと気分が良くなるのでな。優介よ、京から連れて来た民の処遇に不満があるそうだな」


「ひどい扱いだと思います」


「父上に対して無礼な!」


「泰衡は静かにせよ。いいか、優介。仕事も無い五千の移民にタダ飯を食らわせば、移民は奥州の民に憎まれる。だが、俘虜に飯を与えるのなら、奥州の民はむしろ誇らしげに思い、大事にするだろう。これが政というものだ」


――もっともらしいことを言っているが、詭弁じゃないのか?


「ただ、わしも子供を鉱山で働かせるのは忍びない。すぐにでも返してやりたい」


「なら――」


「吉次から京での話は聞いた。そなたは異才を持っている。奥州のために力を発揮すれば、その功に応じて孤児を返そう。莫大な益をもたらせれば、釜石の管理を任せても良い。どうだ? そうなればそなた自身が鉱山で働く民を守ってやれる」


「――わかりました。民のために全力で考えます」


「父上! 待ってください。釜石は私に与えると言ったではないですか!」


「泰衡。次の当主なら、己ではなく奥州の益を優先させろ」



その後の酒宴中、泰衡はずっと優介を睨んでいた。


――わかっているよ。俺から辞退しろっていうんだろ。そうしたいさ。釜石なんていらないといって、退席できたらどんなに気が楽か。だけど、俺には民を連れて来た責任がある。お前に忖度している余裕なんてないんだよ。


優介は椀を取ると、決意を示すかのように飯をかきこんだ。

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