表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生少女は欲深い  作者: 白波ハクア
少女学園編
37/64

第35話 決闘の行方

 決闘を申し込まれた。


 誰に?

 レティシアに。


 どうして?


「私はずっと考えていました」


 混乱している私に、レティシアは淡々と話し始める。


「どうすればカガミが傷付かずにいられるか。どうしてカガミは傷付くことになっているのか。……それは、あなたの力が認められていないからです」

「どういうこと……?」

「皆は、あなたがズルをして特生クラスに入ったと思っています。だから『調子に乗るな』『お前には相応しくない』『平民が尻尾を振った』……そんな心無いことを言われるのです」

「…………それは……」


 レティシアの言っていることは正しい。

 実際、私は入学に関しては何もしていない。ズルをしたと言われても、間違いではなかった。だから私は、何も言い返せなかったんだ。


「だから私と戦い、その力を証明すれば良い」

「それはちょっと飛躍しすぎじゃない?」

「いえ、違います」


 私の言葉は、バッサリと切り捨てられた。


 レティシアは、いつもの朗らかな笑顔を浮かべていなかった。

 一国の王女らしく、私を射抜くような鋭い目線で睨んでくる。


 ……どうして、そんな顔をするのさ。


 私がレティシアと戦う。

 嫌だというわけではない。……それは、危険過ぎるんだ。


「私は手加減が出来ないんだよ!? もしかしたら、殺しちゃうかも──」

「覚悟の上です」

「そんな覚悟はいらない! なんでシアなのさ、他の人でも良いじゃん!」

「いいえ、ダメです」

「どう、して……」

「私が──王女だからです。自分で言うのはどうかと思いますが、私は天才と呼ばれています。そんな私を神聖な決闘にて倒せば、カガミも特生クラスに相応しいと誰もが認めるでしょう」


 彼女の言っていることは正しい。


 でも、それは天才と呼ばれた王女が、ただの平民に破れるということだ。

 レティシアの評価を下げることになる。私なんかのために、彼女が犠牲になる必要はないんだ。


 ……それすらも、きっとシアは覚悟していると言うんだろうな。


 彼女はとても強情だ。

 一度決めたことは、絶対に曲げない。


 だからこの決闘は、もうやることが決まっているようなものだ。


「それとも、私に負けるのが怖いですか?」


 わかりやすい挑発だ。


 先程からレティシアの手は、微かに震えている。

 怖いのはそっちの方なのに、意地を張っちゃって……そんな彼女の気持ちを否定するのは、申し訳ない。


「……わかった。でも条件がある」

「なんでしょう」

「絶対に手加減をしないで。本気で殺すつもりで、一瞬も気を抜かないで。じゃないと、本当に殺しちゃう」

「私はそこまで弱くは──」

「約束して。私は友人を殺したくない」

「……わかり、ました」


 冗談を言っているわけではない。

 いつも魔物相手に戦ってきたせいで、私は手加減を知らない。


 この前、初めて実技の授業をした時、私なりの本気半分で剣を振った結果、私は訓練場の壁をに深い傷跡を残した。もし本気でやっていたら壁を切り裂くだけでは終わらず、その直線上にある校舎にも影響を与えていたかもしれない。


 その時は良い手加減が出来たと思った。

 でも、それでもやり過ぎだと先生に言われてしまったので、私はその時になって「私は手加減が出来ないんだ」と悟った。


 だから私は、レティシアにこの条件を飲ませた。


「それで、いつ決闘を?」

「今日です」


 …………んん、幾ら何でもそれは急すぎる。


「勿論、教員方には許可を取ってあります。訓練場も抑えました」


 しかも手回しは完璧ときた。


 だから急遽、全校生徒は自習になったんだね。

 なんか変だとは思ったんだけど、何か教員同士で重要な話し合いがあるんだろうなと納得していた。

 まさかこんなことになっているなんて、想像もしていなかったよ。


「──カガミ。私は本気で戦います。あなたを倒すために」


 レティシアは真剣な眼差しで、私を真っ直ぐ見つめてきた。


「前から気になっていたんです。お父様も、エリス様も、ロウリーおじさまも……誰もがあなたのことを褒めていました。魔族を一人で撃退したその力、どうか私に見せてください」

「…………わかった。私の本気を、シア──レティシアに見せてあげる。せいぜい頑張ってよ」


「はいはーい。話は纏まったようだねー」


 私の同意を得たタイミングで、ミコ先生が教室に入ってきた。


「ミコ先生も知っていたんですね……」

「あはは……まぁ私が最初にレティシアちゃんから話を聞いたんだけどねぇ、いやぁびっくりしたよー」

「その割には楽しそうですね」

「あ、バレた? こう見えて私も元冒険者だからねぇ。争い事は大好きなんだよ」

「……さいですか」


 私達は訓練場に連れてこられた。

 控え室は別に用意してあって、今私は小さな部屋に一人だ。


「……なんか、大変なことになっちゃったなぁ」


 私はベンチに座り、天井を仰いだ。


 決意を新しくした次の日に、まさかこの国の王女様と決闘をすることになるとは思わなかった。

 でも、これは良いきっかけになるのかもしれない。


 レティシアは自分を犠牲にした。

 自分への評価を下げる代わりに、私は特生クラスに相応しいのだと認めさせようとしてくれている。


 どうしてそこまでしてくれるのかはわからない。

 もしかしたら、ガイおじさんに何かを言われたのかもしれない。

 理由がどうであれ、レティシアの目は本気だった。


 なら私は、それに応えるだけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ