6汚名挽回 中隊長伝令任命
駐屯地に戻った私は、いつ懲戒解雇を言い渡されるかと覚悟を決めていました。
しかし、事態は真逆の評価となりました。
私の「武器紛失時の正確な報告」が誠実であると認められ、禍転じて福となす結果となっていました。
私は、中隊長の内務世話係である「伝令」に任命されました。
かつて優秀な隊員が歴任してきた名誉ある職でした。
この抜擢に応え、汚点を職務で払拭しようと、私は必死に励みました。
他の者が自由に酒を呑み、ゲームに興じる間もただひたすらに任務を遂行しました。
また、いつしか私のロッカーは「新隊員の手本」とされ、翌年には内務優秀隊員章を受与を頂きました。
営内班でも、川島班長から休日外出の決定権を一任されるようになりました。
自衛隊は休日、災害派遣等などの有事への備えで営内班の三分の一は残留させる規則があった。
遠距離恋愛で辛かった思いをさせたくない。
私は、地元に彼女がいる隊員たちの時間を与えるため、自分の休みを削ってでも平等な残留を徹底した。
その甲斐あって、私のいた四班は誰もが入りたがるほどのほぼ上下関係が崩れ和気あいあいとした理想の場所へとなりました。
「お前ぐらい、生意気な新兵はいなかった」
退職する部屋長から贈られたその言葉は、充実した日々の象徴でした。
……しかし、その充実感こそが、悪意を呼び寄せてしまったのかもしれません。
ある日、空気は一変した。
駐屯地内。
「無視」という名の、卑劣な嫌がらせが始まったのだ。
昨日まで笑い合っていた者たちが、私の姿を見た途端に押し黙る。挨拶をしても、虚空を眺めるような冷ややかな沈黙が返ってくるだけ。
中隊長に認められ、班をまとめ上げ、どん底から這い上がった私を嘲笑うかのような、粘りつく視線。
信じていた場所が、急速に色を失っていく。
理想を求めて築き上げた団結の裏側で、私は得体の知れない孤独の淵へと、再び突き落とされようとしていた。




