003
優斗とシリエルは食事のあとルームの外に出ていた。
森の中は朝なのに薄暗く思えるほど木々が生い茂っている。
周りからは魔物の遠吠えも聞こえてくる。
シリエルは優斗が最強と言っていたが優斗は少し不安になる。
あたりを確認した後シリエルは優斗に話しかけた。
「優斗の魔力と闘気が駄々洩れになっているナリ。魔力操作と闘気操作のスキルをうまく使うナリ」
「分かった」
優斗はすぐにスキルを発動した。優斗が垂れ流していた魔力や闘気が体の中に納まった。
「そのスキルは必要がないとき以外は常時発動しておくナリヨ。魔物が近づいてこなくなるナリ」
魔の森で魔物を狩る練習をしようとしていたので良いアドバイスをもらったなと優斗は思った。
「優斗。今のうちに優斗の全力の魔法を打っておくナリ。そしてスキル手加減の感覚を養うナリ」
優斗は神級の魔法まで使える。
しかし特級以上は使わないと考えていた。
スキルを譲渡されたときに魔法の知識も経験値として得ている。
優斗は特急以上の魔法がこの世界に与える影響が大きいと考えていた。
そのための判断だった。
しかしシリエルは全力で魔法を打てという。
「本当に全力を出していいのか?」
そう聞いた優斗にシリエルは微笑みを浮かべる。
「ここは魔の森の奥地ナリ。人はいないナリ。魔物は死んでもまた生まれてくるものナリ。心配しなくてもいいナリヨ」
「分かった」
優斗は決意を込めて神級魔法を放つ。
「『アブソリュート・ゼロ』」
唱えながら右手を前に出す。
すると優斗の目の前から10数キロにわたって白い氷の世界が広がった。
それだけじゃなかった。
氷は風に吹かれて白い結晶となり崩れた。
優斗の目の前は白い更地になった。
「すごいナリ。やっぱり優斗は世界最強なり。ほかにも練習しておくといいナリヨ」
優斗はこんなすごい魔法が今後使えなくなることを見込んでほかの新級魔法も試したくなっていた。
「『メテオ』」
優斗が唱えると直径が1kmはありそうな隕石が頭上から前方に飛んで行った。
そして地面にぶつかり大きな土の波を生み出した。
優斗は魔法の振動で立てないほどだった。
魔法が収まった後はカルデラが出来ていた。
半径5kmほどの穴が開き穴の周りは土が盛り上がっていた。
優斗は次の魔法を準備する。
「『ブラックホール』」
すると上空に真っ暗な空間が生まれ白銀の土地やカルデラを飲み込んだ。
一瞬のうちに何もなくなった。
優斗が持っている神級の魔法はこれだけではない。
魔の森を押し流す波やすべてを焼き尽くす光の雨などもある。
優斗はこれ以上の神級の練習は必要ないと思った。
魔法を使うときの魔力の流れも異常はない。
スムーズに魔力を操れたことに感動していた。
「もういいだろう。魔法は間違いなく使えるよ」
「そのようなナリネ。優斗はさすが魔道王のスキルを持っているだけはあると思うナリ。私はこれで失礼するナリヨ。闘気は森を出ながら魔物との戦いで様子を見るといいナリ。スキル手加減をうまく利用すれば力の加減を間違えることはないナリヨ」
「今日までありがとう」
「まあ、これからは頑張るナリヨ。私は行くナリ」
シリエルはそういうとまばゆい光に包まれた。
これは魔法ではない神力の存在を初めて感じた優斗だった。
「ゆし、近くの街を目指すか。飛んでいきたいが魔物との戦いも経験したいから歩いていくか。マップ」
優斗はスキルマップを使って森の外で一番近い村を見つけた。ミッドハルト街が近い。
直線距離で120kmはある。魔の森の広さに優斗は驚きを隠せなかった。
目の前の自分が変えた地形を飛行魔法で飛び越えて地面に降り立った。
83kmはとんでもまだ間の森中だ。ミッドハルトまで85kmに近づいた。
優斗はブラックホールであけた半径20km穴が気になっていた。
いくら魔の森といってもすさまじい自然破壊だ。
最深部の穴の深さも20kmはある。優斗は穴に向かって手を向ける。
そして「アース」と唱える。すると一瞬で半径20kmの穴がふさがった。
これは一時的なものではない。魔法や魔術で作られたものは込めた魔力が抜けると作られたものはなくなる。
しかし、魔道で作られたものは魔力が抜けない。優斗が解除しない限り穴はふさがったままだ。
魔法使いや魔術師よりもはるかに位が高い位置に魔導士がいる。
そうはいっても大きいな国に魔導士が1、2いるかいないかだ。魔導士の数はかなり少なし。
「そろそろ魔物とも遭遇しそうだな。ミスリルの短剣を召喚しておくか。サモン」
優斗がそう唱えるとミスリルの剣が鞘ごと優斗の右手に収まっていた。
優斗は5歳児だが短剣の重さは感じない。何度か剣をさやから抜いて素振りをしてみる。
覇王のスキルがあるせいかスムーズに短剣を扱うことができた。
剣を吊り下げる剣帯も召喚して腰に巻く。そして剣をつるす。
魔法の練習はしたので武術で魔物を倒すつもりで優斗はマップを見る。
そして魔物の反応があるところに歩いていく。
20分も歩けば魔物が現れた。相手はブラックオーガが3頭もいる。
鑑定
冒険者ギルドのAランクパーティーで行うのが理想。
肉は高級な鶏肉のような味がする。
A級魔石は高額で取引されている。
革製品に需要あり。高い値で取引されている。
角や歯も剣の素材としては一級品。
「Aランクパーティーの実力は分からない。とりあえず素手で相手してみるか」
優斗はブラックオーガに向かって走り出す。かなりのスピードだ。
ブラックオーガの動きがスローモーションのように優斗には感じられた。
先頭のブラックオーガが棍棒を振り下ろしてくる。その動きはすべてまるわかりだ。
ブラックオーガのスピードで攻撃が当たる確率は0に近い。
優斗は棍棒が振り下ろされる方向から離れてカウンターの拳の一撃をブラックオーガの顎にぶち当てる。
ブラックオーガは何が起こったのか知る由もなく頭と体が二つに分かれた。
それを見た優斗は。
「手加減に失敗した。一撃で頭を吹き飛ばせるなんて思いもしなかったぜ。俺は5歳児だぞ・・・」
ほかの2頭のブラックオーガはその光景に唖然としていた。
こんなちっこい生き物にやられるとは思いもしていなかった。
一応、警戒はしていた。しかし優斗の方が強かった。ただそれだけだ。
ブラックオーガは警戒態勢をとる。2頭が近づいてきた。
「反省を生かして手加減だ。Aランクパーティーくらいにまで力を抑えることが肝心だ。しかしAランクパーティーってどれぐらいの強さだ? わかんねー。あと2段階ほど力を抑えるか」
優斗は迫りくるブラックオーガに対して構えをとる。
そして相手の動きに対して同じスピードよりも少しだけ早く動くことにした。
2頭がいっきに左右から棍棒を振り下ろしてくる。優斗はそのスピードよりもわずかに早く動き棍棒をいなす。
ブラックオーガは攻撃を避けられたことに怒り声を上げる。
「グギャー」「グギャギャギャ」
優斗はそのすきを突きブラックオーガの1体の腹に掌底を放つ。ブラックオーガはくの字になり吹き飛んだ。
優斗が手加減しているのでブラックオーガは生きているすぐに立ち上がっておなかを抑えている。
優斗は喜んだ。スキル手加減がうまく機能し始めていると思った。
残りの一体が頭に気なのか無防備に優斗に突進してきた。
あまりにも遅い突進に優斗はジャンプして前転して頭の裏にかかと落としを行う。
ブラックオーガは突進してきた勢いそのままに踵落としを食らったとたんだいぶして地面に転がった。
今回も手加減は成功していた。殺してはいなかった。
腹に掌底を受けたブラックオーガは口から血を流していた。かなりのダメージを食らったようだ。
ブラックオーガは襲ってこなくなった。優斗を見て棍棒を構えているだけだ。
優斗は落胆してブラックオーガに向けて短剣を構える。剣術スキルの確認だ。
優斗は素早く動くとブラックオーガは後づさる。優斗はためらいなくブラックオーガの首を切り裂いた。
首から血が噴き出し頭が落ちる。優斗は黙ってその姿を見ていた。
「魔物を殺しても心が痛まない。そういう風に精神もつくりかえられているのかな?」
踵落としで転がっているブラックオーガは気を失っていた。優斗はそのブラックオーガの首も切り落とした。
「森を出るまでに何度か魔物と戦うチャンスはあるはずだ」
優斗はブラックオーガ3体を亜空間倉庫にしまい森の外を目指す。
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