第2話
「おはよー夏希」
「ああ、久美か。おはよう」
高校に入学してはや1週間が経っていた。
今日から部活動の仮入部期間が始まるということで、放課後にいつもの5人で部活動の見学に行くことにした。
明日からはみんなそれぞれの気に入った部活に仮入部に行く。
とはいえ今日のはあくまでみんなで回るのが楽しいからという理由で集まるだけで、俺たちはみんなはいる部活はほとんど決めていた。
幸樹は野球部に入るとずっと言っているし、翔太はおそらく本人が入部を拒否してもサッカー部が放っておいてくれないだろう。
U18の日本代表に選ばれるような選手がスポーツ推薦もないうちの高校に入ってくれるなんてみんな思ってもいなかっただろうし、これは昔は強豪だったうちの高校が名声を取り戻す最大のチャンスだろう。
歩は意地でも幸樹のサポートをするといって野球部のマネージャーをやるだろうな。
中学の時はマネージャーがなかったから相当やりたがっていた。
俺はずっとやってきた剣道を続けるつもりだ。
推薦はないがずっと県内でも上位を保ってきた強豪なので、選手に入れるように頑張りたいところ。
あとは久美だが、久美だけは何部に入るのか知らない。
普段なら真っ先に報告に来てくれるところなのだが、なぜかこない。
正直かなり気になる。
「なあ久美、お前何部にしようと思ってるんだ?」
「……うーん。迷ってるんだよね。みんなは入りたい部活を確認しに行く感じだと思うけど、正直私は入りたいと思う部活を探しに行くって感じなんだー」
俺はてっきり、バレー部に入るか歩と一緒に野球部のマネでもやるのかと思っていたのだが、どうやらその予想は外れたようだった。
「まあ、別に焦ることもないしな。と言うか仮入部って本来そう言う人のための期間でもあるわけだし。」
「そうだよね。気楽に探してみるよー」
そういって、久美は次の体育の授業に向けて着替えるべく、女子更衣室の方へ消えていった。
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放課後。
俺たちはみんなで体育館前に来ていた。
男子三人衆はもう部活はほぼ決まっているようなものなので、歩が本当にバレーをやらずに野球部のマネージャーでいいのかを確認したい、という幸樹の頼みを聞いて、女バレを見に来ていた。
………まあ実は俺の、久美のバレー部を見た時の反応を見たいという密かな願いも、同時に叶えられているのだが。
しばらく練習を見ていると、女バレの先輩方が歩に声をかけに来た。
「仮入部?少しやっていく?体操着持ってるなら、着替えてきなよ!」
歩は少し戸惑っていたが、幸樹にやってきたらと言われて、決心がついたように「じゃあ少しだけ…」と言って着替えに行った。
「久美は行かなくていいの?」
俺が聞くと、
「うーん。私、バレーはやるつもりはないかな。中学ではやったし結構楽しかったけど、ここの高校って結構強豪だから。足引っ張るっていうより、私があんまり楽しめない気がするなって。」
「そっか。まあそれは確かにやらなくていいかもな。じゃあ何部に興味あるの?」
「それは……内緒、かなあ。まあすぐにわかるよ」
がっくりきてしまった。
まあでも冷静に考えれば、久美のすぐにわかるよというのはその通りで、仮入部期間さえ終わってしまえば絶対にわかるのだ。
そんなやりとりをしていると、歩が戻ってきた。
「じゃあ幸ちゃん、ちょっと参加してくるね。みんなも、先他のとこ見ててねー」
そういって先輩の手招きするところへ走って行った。
「どっか見たい部活とか…あるか?」
俺が聞くと、
「ない」
「ないな」
「んー私も特には!」
幸樹、翔太、久美は3人とも首を横に振る。
「じゃあまあ、歩の仮入部を眺めるとするか。」
「だね。」
翔太とそう言い、彼女のバレー姿をまじまじ見つめる幸樹をみて、微笑みあった。
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「あゆーー!すごかったじゃん!監督にも気に入られちゃってさ!」
「にひひ、ありがとー」
歩はなかなかにすごかった。
久美をはじめとして中学で初めてバレーをする、という部員が多かったうちの中学のバレー部で、経験者の歩が一際上手く、キャプテンをするのも当たり前だと思っていた。
しかし、歩が一際上手いのは、強豪であるこの春野ヶ丘学園でも変わらなかった。
先輩たちもなかなかに驚いていたが、坂田山中の谷中ときいて、なるほどなるほどと納得していた。
中学の頃から高校にまで名前を轟かせていたらしい。
さすが歩、としか言えない。
「幸樹は結局野球部にしたの?」
「ああ。そうだな。さっき帰りに練習ちらっと覗いたけど、いい感じだった。超きついし上手い人も多いけど、ついていけそうだったし。そっちはやっぱサッカー?」
「まあそうだね。入学試験の時に入部するってたまたま会った顧問に約束とりつけられちゃったから…」
「入学する前から顧問に目つけられてたのか?顔見ただけで翔太だってわかるってどんだけ有名なんだよ…」
「まあ代表チームに入れたのは大きかったかな。で、夏希は剣道でしょ?さっき道場覗きに行ってたし。どうだった?」
「まあそれなりのキツさかな。強豪とはいえ、県大会優勝校しか出場できないインターハイとかにはまだまだ遠いって感じ。でも。関東大会なら出場できる可能性は大いにあると思う。ベスト8以上が出れるんだけど、うちは基本ベスト16にいるからね。」
「じゃあ絶対夏希が関東行かないとね!久美のためにも!」
「おい歩。なんで久美が出てくるんだ?」
「まあそれはいずれわかるよー」
歩だけじゃなく翔太と幸樹にまでにやにやされながら、俺たちは歩いていた。
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「おはよう」
「母さんおはよー。今日から部活だから帰り遅くなるわ。多分20時くらいかな。」
「はいはい。くーちゃんのことちゃんと家まで送んなね?そんな時間にあんな可愛い子一人で歩かせたら危ないから。」
「久美?なんで久美が?部活違うだろうし帰り多分会わないよ。」
「部活違うって…あんた剣道部入るんじゃないの?」
「いやそりゃ俺は剣道部だよ。でも久美は剣道部には入らないだろ?まあどこに入るのかは頑なに教えてくれないけど。」
「……あーなるほどね。じゃあ、もしも帰りにくーちゃんと会うことがあればしっかり送ってあげな。それでいいや」
「は…?どゆこと?」
「いいからいいから。ほら、早く支度しないと遅刻するよ」
正直、予想はついた。
久美は、本当は剣道部に入部するつもりだけど、俺はそんなふうには全く思ってないだろうということでサプライズにしようとしている。
ただ問題は、なぜ久美が剣道部を選ぶのかということ。
今まで幼馴染である俺が剣道をやっているということ以外には、久美には剣道とのつながりなどなかったはずだ。
それが急にどうして…
俺のことが好きで…とかは、正直ないと思う。
色々あって、それだけは考えられない。
なら尚更…なんで?
俺はどこかモヤモヤするこの疑問を抱えたまま、高校に入学して初めて登校中に横にあの元気な幼馴染がいないことも忘れ、学校に向かって歩いていた
なにやら不穏な空気……!
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アルカディア・イストリア〜最強パーティの理想郷物語〜
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