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マジックアンドブレイド  作者: シットライヌ
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エピソード4:廃村と供養と浄化

エピソード4:廃村の供養と浄化

1. 霧に沈む遺言

王都の喧騒から離れた北西の街道沿いに、地図から消えかけた村があった。かつては林業で栄えたが、疫病で住民が激減し、今では風にさらされた廃屋が並ぶばかりの静寂に包まれている。

「……ここですね。空気が澱んでいます」

一神教の司祭が、その巨躯に似合わぬ繊細な手つきで聖印を握りしめた。今回の依頼は、かつてこの村を疎開した老女からの「せめて先祖の墓だけでも清めてほしい」という切実な願いだった。

「ただの掃除なら楽だったんだがな」

職人組合の伝令員が周囲を警戒しながら、腰の刺刀ダガーを軽く叩く。「近隣の村人が言うには、夜な夜な『動く骨』が徘徊しているらしい。あるいは……」

(あるいは魔薬組織の残党か)

前回の冒険で捕縛した、魔薬組織の全容が掴めていなかった。主犯であった王立騎士団の騎士がどこから魔薬製造方法を入手したか不明だった。恐らくこの事件には黒幕がおり、魔薬製造方法を王立騎士団の騎士に伝えたのも、その者か、その配下と思われた。組織の規模は思った以上に大きく、主犯であった王立騎士団の騎士も、組織からしたら末端なのかも知れなかった。火山島の戦士が物思いに耽っていると

「あるいは、土地そのものが悲鳴を上げているか、ね」

大学院の女性学者が眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせる。「[魔力]マナの循環が滞っているわ。司祭様、あなたの出番よ」

2. 墓地に這う影

村の奥、蔦に覆われた古い石造りの共同墓地に足を踏み入れた瞬間、空気が一変した。

がその碧玉のグラムサイトを見開く。

「……元素エレメントの乱れを感じます。精霊スピリットたちが、帰る場所を失って彷徨っているわ」

突如、湿った土が盛り上がり、ガチガチと不快な音を立てて[スケルトン]たちが姿を現した。生者を恨むような燐光が、空っぽの眼窩に宿っている。

「全員、持ち場へ! 供養を終えるまで、司祭様に近づけさせるな!」

火山島の戦士の鋭い号令が飛ぶ。彼は一歩前に出ると、左腰の[湾刀]カタナに手をかけた。

パーティーの連携は速やかに実施された。

火山島の戦士は 前線に立ち、抜刀術の一閃で骨の棍棒を叩き折る。「静」から「動」へ切り替わるその斬撃は、敵の視線を釘付けにする。

大学院の女性学者が錬金術の「氷雪ブリザード」を使った。 彼女の放つ冷気がスケルトンたちの足元を凍らせ、機動力を奪う。効率を重視した無駄のない魔力運用だ。

職人組合の伝令員は影のように動き回り、転倒した骨の関節を小盾で叩き砕く。戦場をかき乱し、敵の連携を許さない。

砂漠半島の巫女が占星術の「風話ウィンドボイス」を使用する。 視界の悪い霧の中でも、仲間に敵の位置と動きを正確に伝え、死角を消す。

3. 慈愛の祈り

「主よ、彷徨える羊たちに、終わりのない安らぎを」

仲間たちが防衛線を維持する中、一神教の司祭は墓地の中心に膝をつき、深い祈りを捧げ始めた。彼の周囲に、柔らかな光の輪が広がっていく。

降霊術:[結界]ターンアンデッド

その光に触れた[スケルトン]たちの動きが、次第に緩やかになっていく。彼らが宿していた憎悪の色が、の慈愛に満ちた祈りによって、霊子エーテルの奇跡の力で中和されていくのだ。

「戦士殿、あともう少しです……!」

一神教の司祭の額に汗が浮かぶ。巨躯を震わせながら、彼は全精神を「浄化」へと注ぎ込む。火山島の戦士は、背後の一神教の司祭に一切の危害を加えさせぬよう、迫りくる最後の一体を居合:真向切りで両断した。

「……さあ、もう眠りなさい」

一神教の司祭が聖印を高く掲げると、激しい閃光が墓地を包み込んだ。崩れ落ちる骨。その隙間から、淡い光の粒――解放された霊魂アストラルたちが、冬の夜空へと昇っていくのを砂漠半島の巫女は見届けた。

4. 冒険者の夜明け

すべてが終わった後、墓地には元の静寂が戻っていた。ただ、先ほどまでの不快な澱みはなく、どこか清々しい空気さえ漂っている。

「……ふぅ。お疲れ様、みんな。助かりました」

一神教の司祭が立ち上がり、仲間たちに深く頭を下げる。

「礼には及ばないわ」大学院の女性学者が砂を払いながら言う。「これもパーティーの仕事よ。それに、あなたの祈りのおかげで、私の錬金術の消耗も最小限で済んだもの」

「『義』の心による戦いか。……悪くない」

火山島の戦士は納刀し、静かに頷いた。

帰り道、職人組合の伝令員が冗談めかして言った。

「これで依頼主の婆さんも喜ぶだろう。ところで、報酬の銀貨で、今夜は王都の一番いい酒を空けないか?」

「賛成! 砂漠ではこんな冷えた夜には、温かい蜜酒が最高だったわ」砂漠半島の巫女が笑う。

一神教の司祭は、仲間たちの背中を見つめながら、穏やかな微笑みを浮かべた。かつて一人の聖職者として歩んでいた時よりも、今の自分はずっと「救い」に近い場所にいる――そんな確信を抱きながら。

エピソード4:了





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