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マジックアンドブレイド  作者: シットライヌ
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プロローグ;火山島、枯れ木の残響



混沌から元素が生まれ、元素から精霊は生まれ、精霊は星々の元となった。数多の星々の、その星の一つに、大地と海と空が出来上がり、生命が誕生した。世界樹、竜、神々、そして、数多の動植物。永い時の中で世界樹は枯れ、竜は化石となり、神々は目覚めることのない眠りについた。その中でも生き残った生命体は存在していた。その一つである人間は魔法の力で世界の覇権を握った。繫栄を極め永遠に続くと思われた千年帝国も滅び、群雄割拠の戦乱の時代を得て、大憲章[マグナカルタ]による凪の時代を迎え、現在は魔法と刀剣の時代、マジックアンドブレイドと呼ばれている。

この時代の複数ある大陸の一つから、一ヵ月ほど北に航海した先にある島。その東に浮かぶ火山島の南ある集落の郊外をの若者が歩いた。物語はここから始まる。


プロローグ:火山島、枯れ木の残響

火山島の中央に鎮座する巨山は、常に微かな震動と共に灰色の煙を吐き出している。冬の厳しさが色濃く残るこの島において、山から吹き降ろす風は刃物のように鋭く、人々の肌を刺した。

南端に位置する港の集落――その郊外にある深い森の入り口に、一人の若者が立っていた。

火山島の戦士階級は[サムライ]と呼ばれており、彼はの責務を果たすためにここに来た。

整った顔立ちには、緊張が宿っている。彼は左腰に二本の刀――湾刀[カタナ]と腰刀[アイクチ]を差し、足元は雪駄に脚絆という、この島の戦士階級特有の装束に身を包んでいた。

「……居たか」

火山島の戦士は鼻先を火かすめた異臭に眉をひそめた。それは腐敗臭ではない。古びた木材が湿気を含み、そこに澱んだ空気がまとわりついたような、鼻を突く不快な臭いだ。

不審な人影を見かけたと村人からの連絡があり、単身で様子を確認しに来たのだが、本心としては物見だけで一旦終わらせ集落に戻り、異変が有れば人を集めて対処する算段であったのだが、目論見は見事に外れてしまった。

森の奥から、ギギ、ギギと硬い木が擦れ合う音が響いてくる。

現れたのは、人間ほどの背丈を持つ奇怪な影だった。樫の枯れ木を寄せ集めて造られた、歪な人型の怪物。禁呪術、死霊術[ネクロマンシー]によって使役される屍人形兵[アンデッド]の一種――[オーク]だ。心霊(人間や動植物の霊魂[アストラル]。人間の場合は幽霊[ゴースト]とも言う)を有機物(生命活動から生まれ、生命活動を終えた物質)に憑依させ、使役する術、死霊術によって製造され、個体の総称は屍人形兵[アンデッド]と呼ばれ、人型をしている。戦乱期に戦争に使われたが、現在は大憲章で製造、使用が禁止され、死霊術は禁呪とされており、術者は死霊術師[ネクロマンサー]と呼ばれる。

かつての戦乱期、戦場を埋め尽くしたとされるその残骸が、なぜ今この平和なはずの島に現れたのか。火山島の戦士は溜息をついた。

火山島の戦士として鍛錬は積んできたが、腕力や剣術の腕に絶大な自信がある訳ではないし、大規模な戦の無いこの時代、普段は畑を耕して過ごしている為、実戦の経験は無かった。しかし、見つけた以上、ここで対処しない訳にはいかなかった。気持ちを切り替え、深く息を吸い、[オーク]に対して、正対した。[オーク]はこちらの存在を気付いていないようだった。足場も悪く、刀を振るうと木々に当たりそうなので、森の中で切り合うの避け、森の外におびき寄せる事にした。投石紐[スリングショット]を取り出し、[オーク]に向けて石礫を投げつけた。命中させることは出来なかったが、こちらに向かって歩みを進め始めた。誘導することは成功したようだった。

[オーク]は虚ろな眼窩に微かな燐光を宿し、樫の木の棍棒を手に近づいてくる。知性はないが、その質量が生み出す破壊力は脅威だ。

火山島の戦士は動かない。

半身に構え、左手は鞘の鯉口を握る。親指で鍔を軽く押し出し、いつでも抜刀できる「静」の極致へと意識を沈めた。

(……一呼吸)

[オーク]の巨体が間合いに入り右手に持った棍棒を振り上げた瞬間、世界が加速した。

居合「水平胴切り」

火山島の戦士が左手で鞘ごと刀を相手に柄頭を向けて、突き出す様に押し出し、右手が柄を捉える。それと同時に、鯉口を横に捻りながら左手で鞘を後ろに強く引き絞る、鞘引きを行う。右足を一歩前に踏み出し、右手で刀を左から右に、水平に真横に抜き放つ。

銀光が走る。

鞘から放たれた[湾刀]は、腰の鋭い回転を乗せて水平に薙ぎ払われた。[オーク]の胴体を樫の硬い表皮を断ち割る。

「……ッ!」

手応えを確認するまでもなく、火山島の戦士は踏み込みと共に刀を頭上へ、左手を柄に添え、両手で流れるような動作で斬り下ろした。脳天から股立ちまでを一刀両断にする垂直の軌道が、オークの活動を完全に停止させた。

バラバラと音を立てて樫の破片が地に落ちる。火山島の戦士は油断なく周囲の気配を探り残心し、鋭く刀を振って見えぬ汚れを払う。そして、静かに、しかし迅速に刀を鞘へと収めた。

森に静寂が戻る。火山島の戦士はまた一つ溜息をつき、自らの手のひらを見つめた。

「……これが、禁呪の力か」

報告のため集落へ戻ると、潮の香りと魚を焼く煙が火山島の戦士を迎えた。

火山島の生活は厳しいが、ここには戦乱期のような殺伐とした空気はない。人々は大憲章[マグナカルタ]という法の下で、慎ましくも平穏な日々を送っている。

自宅へ足を向けると、見慣れぬ旅装束の男が縁側に腰掛けていた。

「久しぶりだな。見ないうちに大きゅうなったな」

「叔父上……。なぜこちらに?」

そこにいたのは、母方の叔父であった。普段は火山島の最大の集落である、西部の集落にいるはずの男が、どこか切迫した表情で火山島の戦士を見つめている。

「お前に、頼みたいことがある」

叔父は懐から、一通の封書を取り出した。

「我が家の家宝の刀が盗まれた。取り返す為に力を貸してくれ」

叔父が刀を盗まれた経緯を語り始めたのだった。

火山島の戦士の静かな日常が終わり、魔法と刀剣が交錯する広大な世界への扉が開こうとしていた。


プロローグ終了。エピソード1に続く。


以下

設定資料

火山島の戦士[サムライ]。初登場時プロローグ

出身:火山島

性別:男性

生まれ:自由騎士

能力:膂力B、体力B、身体操作B、感覚B、知能B、集中力A

技能:剣士1、学士1

特殊戦闘技能:居合(抜刀術)、真向面切り(抜刀術)、真向小手切り(抜刀術)、水平胴切り(抜刀術)、逆真向又切り(抜刀術)、逆真向小手切り(抜刀術)

:体術(大陸伝来)頂肘、体当り、頭突き、足蹴り、寸勁

符術:施錠・開錠、発光、魔力付与

装備:湾刀、腰刀、御符(布地の札)、投石紐、笠、額当て、襟巻、道中合羽、長着、胸当て、手甲、兵児帯、毛皮腰巻、たっつけ袴、脚絆、皮足袋、雪駄、帯刀許可証。

火山島の若き戦士。とある事情から本島に渡り冒険者となる。中肉中背で外見は整っている。特殊戦闘技能である、火山島伝来の居合(の一部)と大陸伝来の体術(の一部)を習得している。性格は、控えめで、真面目。


世界創世[コズミックエイジ]

全は混沌[カオス]であった。万物の根源たるカオスから、永遠とも思える長い年月の果てに六つの元素([エレメント]水、土、風、闇、光、火)が生まれた。全ての混沌が元素になった時、調和[コスモ]が始まった。そして、水、土、風、闇、光、火の元素から各種精霊[スピリット](エネルギー生命体)が生まれた。六つの精霊(水の魔女[ニンフ]、土の小人[ピグミー]、風の乙女[シルフィード]、闇の魔人[ナイトメア]、光の女王[セラフィム]、炎の巨人[イフリート])の相互作用によって調和の均衡は崩れたが、混沌に回帰する事無く、元素の集約と分化、混合によって数多の星々が誕生し、星界[ユニバース]となった。光の元素は太陽となり、闇の元素は黒洞[ブラックホール]となり、水、土、風、火の元素の多くは、水星、土星、風星、火星に集約し、残りの元素は混在した状態で数多の星となり、星々は広大に分散した。星界は星々とその間の虚空によって完成した。

天地創造[ユニバースエイジ]

星界の数多の星の中の一つの天体に、一つの世界が創られた。土の元素により大地が造られ、水の元素によって海が造られ、風の元素によって空が造られた。太陽により昼が訪れ、黒洞により夜が訪れた。昼と夜は交互に訪れ、世界の1日が始まり、この世界に時間が生まれた。最後に火の元素が他の元素に作用し、様々な自然現象と生命が生まれた。最古の生物である世界樹[ユグドラシル]と竜[ドラゴン]である。

太古の時代(竜の時代[ドラゴンエイジ])

世界では元素同士の相互作用により様々な自然現象が生まれ、世界樹から様々な生命体、太古種、幻獣(伝説の動物)や平行植物(幻想の植物)が生まれた。そして最強の生命体、竜[ドラゴン]が誕生する。竜は太古種の中でも最も強靭な肉体と優れた知性で世界を制覇した。竜は元素を体内に取り込み、疑似カオス、魔力[マナ]を生み出す事が出来た。竜の咆哮[ドラゴンシャウト]は魔力を伴い森羅万象を操った。水龍[ウォータードラゴン]、地龍[アースドラゴン]、風龍[ウィンドドラゴン]、黒龍[ブラックドラゴン]、白龍[ホワイトドラゴン]、火竜[ファイヤードラゴン]などの多くの竜が誕生し世界の覇権を争い、竜の支配は続いたが、突如発生した巨大隕石の衝突[メテオインパクト](原因は不明。星が割れる程の破壊が起こり、砕けた星の一部は月となった)により全ての竜は絶滅した。これにより竜の時代は終焉を迎えた。遺骸は骨だけが残り、現在も化石(魔力を大量に含んでおり、賢者の石と呼ばれ、貴重品として高値で取引されている)となり残っている。

神話の時代(神々の時代[パンテオンエイジ])

巨大隕石の衝突により、竜が世界から去り、世界樹は枯れ、多くの生物(幻獣や平行植物)は絶滅したが、大災害を逃れた太古種も少なからずいた。世界樹は枯れる前に、苗木から生命の樹[セフィロト]として一部が生き残り、現在の植物の原種[オリジン]となった。他の生き残った太古種も現在の生命体の原種となった。その中に、竜が滅亡したあとに、世界樹から最後に生みだされた人[ヒューマン]の原種、古代の神々([パンテオン]多種多様な神々)たちが、新たな世界の支配者となった。古代の神々は世界各地に散らばり、それぞれが約束の地[エデン]を支配した。約束の地では古代の神々たちがそれぞれ各自に直接支配した為、文明は発展せず、互いに干渉する事無く、独立していた。ある時、古代の神々たちに不和が起こり、やがてそれは神々による大戦[ハルマゲンドン]に発展した(現代には発生した理由は伝わっていない)。神々の大戦に勝者は無く、古代の神々たちは肉体を失い、精神が神霊(霊子[エーテル])となり、永遠の眠り、神々の黄昏[ラグナロク]につき、世界の一部となった。これにより神々の時代、神話の時代は終わりをつげた。

古代魔導文明期(魔法の時代[マジックエイジ])

神々の黄昏により、自発的に世界に関わる事が無くなった古代の神々たちに変わり、世界の覇権を握ったのが、古代の神々が新たに生み出していた人の古代種の六種族で、それぞれ精霊の加護を受けた、エルフ(風と水)、ドワーフ(大地と火)、エンジェル(光)、デーモン(闇)である。彼ら彼女らは魔法[ルーン]作り出した。占星術[アストロ]、錬金術[アルケミー]、降霊術[ミディアム]。ルーンの力を持って、古代魔導文明[ハイエンシェント]による千年帝国[ミレニアム]を築いた。魔法の時代の始まりである。古代魔導帝国は人による世界を統一した国家となった。しかし、千年以上続くと思われた、古代魔導文明、千年帝国も大災厄[アポカリプス]によって滅んだ。天変地異(巨大地震、巨大台風、大噴火、大寒波、そして最後に起きた大洪水)とその後に発生した致命的な疫病によって古代種は死に絶えた。大災厄の発生により多くの貴重な伝承や文明が失われた。現在、古代魔導文明以前の伝承や文明は一部のみしか残っておらず(神話の時代の伝承や文明については、神々の黄昏の時点で失われたかは不明)、古代の神々にはどの様な神々いたか、千年帝国がどの様な政治形態であったかは未だに不明である。神々の黄昏以前の神々の遺跡[モニュメント]はほぼ現存しておらず、今もあるものとして、天国への階段[ヘブンズ・ドアー](超高層の塔)。地獄門[ヘルゲート](巨大地下迷宮)。桃源郷[ポリス](神代の都市)のみで、ハイエンシェントのルーンは古代の遺産[レガシー]として、古代遺跡[エンシェントルインズ]が一部のみ残っており、古代遺跡から魔導器([アーテファクト]秘宝として)が発掘されている。

戦乱期(刀剣の時代[ブレイドエイジ])

古代魔導文明、千年帝国は崩壊したが、生命体は太古種が原種となり、古代種、現代種、と時代とともに変化し、力を失いながらも数を増やし、現在まで生き延びた。人の現代種が現在の人間である。大災厄を生き残った人の現代種は、古代種であるエルフやドワーフ、エンジェルとデーモンによって、古代魔導文明時代によって生み出された。人造人間[ホルムンクルス]と呼ばれていた。古代種に比べ、魔法の力は劣っており、寿命が短く、老化も早かったが、繫殖力は強く、大災厄の疫病に対しても耐性を発揮し、天変地異を運良く免れる事が出来た少数の者が生き残る事が出来た。人が生み出された理由も現在では不明で、奴隷であった、蛮族であった(労働力として、または失敗作であったが廃棄されなかった為)ともされる。生き残った人たちは魔法の力が弱かった為に魔法は補助的に用いて、武器の力、刀剣ブレイドを使い、国を興していった。戦乱期、刀剣の時代が始まった。刀剣の力は古代魔導文明時代の魔法の力に比べて遥かに劣り、世界を征服することは出来無かった為、生存可能な土地に人々は集い、街を作り、国を興した。文明は衰退した為、限られた土地や資源をめぐって争いが続き、世界を統一する国は生まれる事は無かった。戦乱の時代は長く続き、多くの国の興亡が起こり、群雄割拠の時代は続いた。

凪の時(現在、魔法と刀剣の世界[マジックアンドブレイド])

魔法と刀剣の時代[マジックアンドブレイド]は大憲章[マグナカルタ]の制定により始まったとされる。群雄割拠の時代、長い間戦乱が続き、全ての国が疲弊していた。その中で、マグナカルタが作られた。当初は、ある二か国間の休戦協定として作られたが、優れた内容だったためその後、休戦協定の見本として広く世界で使われる事となり、その度に改訂が繰り返され、君主の権力への制限から発展し、法による支配の原則が内容に盛り込まれ、ついには万国共通の法として世界の礎となった。これにより国家間の大規模な戦争は無くなり(小規模な小競合いや、国内での反乱などは存在する)戦乱は次第に減っていき、文明は少しだけ復興し、失われたルーンも一部再現[ルネサンス]された。古代魔導文明時代ほどの強力な魔法を復元することが出来ず、武器の所持が不必要なほどの文明社会までには至ら無かったため、現在は魔法と刀剣の世界[マジックアンドブレイド]と呼ばれる事となった。


怪物モンスター

現代において怪物や魔物、モンスターと呼ばれるような幻想動物や平行植物は絶滅している。唯一の例外が屍人形兵。[アンデッド]の主なものは、樫の木の枯れ木を使った[オーク]、人間や動物の骨を使った[スケルトン]、枯葉や枯れ草や動物の革を使った[マミー]、昆虫や甲殻類の殻を使った[ガーゴイル]、陶器に獣毛や植物の繊維を練り込んだ[ゴーレム]、現在は製造方法が失われた、竜の化石(賢者の石)を使った強力な[アンデッド]、[リザードマン](人型だが頭部が竜になっている)など


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