ククリグ冒険者ギルド
続きは明日と言ったな、あれは嘘だ(´・ω・`)
ククリグの町。
マシナの町から乗り合い「鼠車」(こっちの輸送牽引動物は馬ほど巨大なネズミがかなりいる)を乗り継ぎ、五日ほどの距離にある、交易中継点の町。周囲の町から、ここへ向けて街道が集まっている。東西に他国へつながる大動脈の街道があるため、周辺の町村から人・モノ・カネ・情報全てが集まってくる場所だ。
マシナの人口が約千人、あのあたりでは一番大きい町だったが――ククリグの人口は三万超。マシナとは規模が違った。
メインストリートは馬車や大鼠車(馬並みの大きさのオオネズミが引く)や騎鳥車(ハデハデしいオレンジ系の羽毛のダチョウのような二足歩行鳥が引く)が何台もすれ違える幅があり、石畳で平らに整備されている。そこを行き来する人もめっさ多い。通りに面した建物は、役所や大店の商店やギルド会館やらの三階・四階・五階建ての滅多に見ない「高層建築」が並び、どこもかしこも常に人が出入りしている。
町の中央にはそれよりさらに高い教会(らしき建物)の鐘楼が、一際目立つように聳えている。一本裏通りに入っても薄暗くもなく、宿やら酒場やら様々な商店が並ぶ。食堂やパン屋らしき店からは、いい匂いが流れてくる。表通りより狭いがそこだけでも賑わいはマシナよりも上だ。
表通りを行くと常設市が立っている商業広場があり、昼前の今は人で非常にごった返している。そこだけでも広場を囲む店舗や露店がずらりと並び、ぱっと見だけでも百以上の様々な店が並んでいよう。常設の市場があるという時点で、もう大都市確定である。
時間が時間だけに食事の匂いが通りに面した店やあちこちの屋台から漂い、どこを選んでいいものかそれだけで迷ってしまう……なんせ人口だけでマシナの三十倍以上あるんだから、そりゃもう大都会ですよ。こんなとこ来ちゃった日には、果てしない夢を追い続けて、いつの日か大空駆け巡るデスよ!
……おっと落ち着け、まだ冒険の時間じゃない。
さて。
俺とビュスナは、この町で晴れて冒険者としてデビューすることになっているのだが。
「でけえな……」
「う、うん……」
ククリグ冒険者ギルド会館。
この周辺の町の冒険者が多数登録する、巨大なギルドだとは聞いていたが。
大通りに面した、巨大な石造りの「四階建てビル」――俺の感覚からしても、十分にデカい建物が、まるっと冒険者ギルドだという。
地球の感覚でいえば、ちょっと古い雑居ビルという感じだが、幅は約四十メートルぐらい、奥行きはその倍ぐらいありそうである。五千人規模ぐらいのコンサートホールでも通用しそうな広さがありそう。
一階だけ木調の壁になっていて、石の柱の間の壁には一定の間隔で窓が並ぶ。二階以上はレンガ+漆喰塗になっている。
正面玄関は大きなガラス張り窓のついた、重厚かつ高級そうな木製両開き扉が二箇所あり、今もひっきりなしに人が出入りしている。
出入りするのも、人間だけとは限らない――あの細っこい美形はエルフだろうか。そして背の小さい、横幅の方が広いかもしれない肉の塊みたいなのはドワーフか? おお、ネコミミシッポなお姉ちゃんもいるぜ! ツノ生えてるのも! 翼生えてるのも! 牛乳みたいなお姉ちゃんも! いや牛乳みたいなお姉ちゃんは人外ではないが。
ここは冒険者ギルドと言っても、この町ではどうやら色々な役所の機能も兼ねているようだ。
来る途中に、元冒険者だったっていう乗り合い馬車の御者のおっちゃんに話を聞いたのだが。
「ククリグはここいら十数か所の町や村のギルド支部統括をしてるからな、それなりの大所帯で、魔導士ギルドも同じとこにあるから相当目立つ。なんでもジシィ・マーダ東部統括本部、とからしいぜ。
それに、他の小さいところとは違って、ククリグのは近隣の治安維持にも一役買ってるんだ。ギルド内で評価の高い冒険者が町で休養中の間とか、他に仕事がないときとか、引退したがまだ身体は動くような奴とか、治安兵だけじゃ追いつかない町中の荒事対応をやってるってわけだ。町の周辺の害獣駆除とかもな。
そうやって町と共存して、組織としての安定も図るって寸法だ。ギルマスは頭も切れるから、冒険者にとっちゃあ有難い存在だ――それだけに、冒険者にも町中じゃおとなしくしてろって通達も出して、下手なことしたらギルドメンバー外されることになる。そうなったら、ここいらじゃ冒険者やってられねーからな。
それだけに、新入りがスタートするための体制も、ここは今ンとこ最高に近い環境だと思うぜ。お前らも気合入れて、上級冒険者目指すんだな」
あざっす先輩! 目指しますよ上級冒険者! ってか目標・勇者!
そして先輩の言うことは聞いておくもんですよ、後々どっかで役に立つから。俺も前世の会社組織で学びました。
まあ隣のツン娘は聞いてなさそうだが……。
「――よし、行くぞ」
「わ、わかってるわよ。てかあんたが仕切るな」
先に一歩踏み出した俺を、ビュスナは追い越して先にギルドへ入る。
受付は……総合受付、依頼受付・報告、買取受付。わからんかったら総合受付だな。
「いらっしゃいませー。えー、冒険者登録でしょうか」
受付のお姉ちゃんは俺たちを見てすぐに察した。手馴れてるなー。俺らみたいなのはしょっちゅう来るんだろう。
「はい、あっと、これを……マシナの町の魔導士、ヴァロースさんから預かっています。こちらのギルドマスターに」
ビュスナの親父様から頂いた紹介状を渡す。
「あら、ヴァロースさんの紹介? ちょっと待ってね」
受付嬢は、紹介状を持って奥へ引っ込む――しばし待つと、奥から「歴戦の勇士」みたいなゴツくてデカい体格の中年のおっさんと、頭一つ低い耳がツンな緑のローブ姿の……エルフの魔導士っぽい金髪お姉ちゃんと戻ってきた。
「お前らか、ヴァロースの紹介で来たのは」
おっさんの方が、俺らを値踏みするように眺めながらそう言った。強面の上に顔に大きい傷痕もあるからなんか怖えよ。
貫禄的にこの人がギルマスかな?
「じゃあ、あちらで話お聞きしますんで、どうぞー」
と、受付嬢が、受付横の応接スペースへ案内してくれた。
「さて、と……ヴァロースとジェシカの娘と、そのパートナーか」
とりあえず俺らも名乗り、勧められてソファに座る。
ただ、俺をビュスナの婿みたいな言い方するのは止めてほしい。
こんなん嫁にしたら尻に敷かれるどころか、人間椅子にされかねませんて。
ドMちゃいますねんから。
「俺はヴァロースと同じパーティだった、ローディだ。魔法戦士で、ここのサブマスターやってる。で、こっちが――」
「同じく、ヴァロースとパーティを共にしておりました、ラスアフェウリスです。ラス、で結構ですよ。四級魔導士です。そして、ここのギルドマスターをしております」
あ、こちらがギルドマスターさんで。頭良さそうな美人エルフ! そして脇に肉弾系のサブマスターですか?
なるほど、栄えてる冒険者ギルドっぽい人員配置だな。
「まあお前らのことは、この手紙に大体書いてある。大雑把に言やあ、『よろしく鍛え上げてくれ』ってことだが」
と、ローディさんがニヤリとする。
はあ……大雑把やな。だけどまあ、冒険者なんて自力で強くならなー意味ないしな。紹介状で顔つなぎしてくれただけでも意味はあるからな。
「ウチのお決まりの初心者コースっていやあ、ギルドの訓練コースで基礎鍛錬と冒険者の心得ってやつをしばらく叩き込み、それから町中の仕事やって多少荒事に慣れてから外の任務に出る、ってパターンと、多少腕に自信があるなら最初から外にガンガン出て依頼こなしてくって手もあるが――どっちがいい?」
「外でやります!」
ビュスナが真っ先に手を挙げた。待てやこら勝手にもうこのNPCは!
ローディさんは凄みのある笑みを崩さず、「自信はあるみたいだな」とだけ応えた。
いや、俺マジでちょっとこいつのアグレッシブさにはついていけてないんですけど……ついていかされるんだよなー。
まぁ確かにね、この世界では「オレがオレが」みたいにグイグイ主張して前に出ないとダメだ、ってのは解ってます。
解ってますけどもー……元日本人としてはね、そういうグイグイ前に出るのって苦手なんスよ?
俺としましては、地道に訓練コース行って町中の警備から始めたいとこなんですが……ダメですかそうですか。
その「は? 外でやる以外の選択肢なんてあるわけないでしょ?」みたいな威嚇する目でこっちみんなやツン娘。
「とはいってもだ、お前らの技量のほどがわからんうちにポイと外へ出すわけにもいかん。冒険者としての常識も知らんような奴らに任せて、失敗の責任押し付けられるのもギルドになるからな。
とりあえず新入りには、ギルドが技術評価をしなきゃならん」
技術評価?
「そこは私が説明しましょうか」
と、ラスさんが言葉を継ぐ。
「冒険者ギルドでは、技術レベル、依頼実績の二つを評価します。
技術レベルは、あなた方個人が持っている技術をのものを、我々が客観的に評価します。
依頼実績は、こなした依頼の総合的評価ですね。依頼は難易度ごとにランクと依頼評価点がありまして、こなした評価点でギルド内の評価ランクが上がります。
技術レベルは十段階評価、ギルドランクは八段階、加えて特殊ランクがあります」
「特殊ランク?」
「冒険者の中には、特定の依頼に強いスペシャリストがいます。依頼実行件数はさほどなくても、特定の依頼を特にこなしていくと、『スペシャリスト』として扱われます。それはギルド総合ランクとは別に評価されます」「スペシャリスト……」
いい響きだよなスペシャリスト……俺も昔はネットワークスペシャリストとか目指したぜ! 試験難しくて落ちまくったけどな! データベーススペシャリストの方は某有名企業の一番簡単なのだけとった。
「スペシャリストの例として、アンデッドバスター、トロールスレイヤー、レギオンスレイヤー、エクスプローラ等がありますね。その他、実績に応じて。ドラゴンスレイヤーなんてのもこれですけど、現代にはそこまでの称号を持ってる人は滅多にいませんねえ」
「伝説のドラスレとかアンデッドバスターとかトロールスレイヤーはなんとなく解りますが、レギオンスレイヤーとかエクスプローラっていうのはなんです?」
わからんことは聞けるうちに聞け、これ初心者の特権な。
「レギオンスレイヤーとは、群れを作るモンスターを専門に狩る冒険者です。クランという、複数のレギオンスレイヤーパーティの集団で行動するのが普通ですね。数百のゴブリンとかオークとか、もしくは盗賊団とか、群れや組織だった相手を狩るには、それなりの技術と経験が必要です。実質、怪物の軍隊を相手にするようなものですから」
なるほど、軍人みたいな感覚で軍団で戦えないと対応できない相手、か……そんなんもおるんや。ゴブリンスレイヤーさんみたいなのの集団かな?
「エクスプローラは、探索専門の冒険者です。遺跡の調査や宝物鑑定、新規ダンジョンの先行偵察や罠調査・マッピング、希少素材の探索・採取など、戦闘以外の能力が評価される冒険者ですね。彼らは他のパーティと組んで、調査をメインにやることが多いです。だからといって戦えないわけではありませんが、戦闘力は個人次第なので必ずしも得意ではない方々ですね。知識面で活躍する方々なので」
なるほど、インディでJ教授的なやつですな。
「そういう能力をみるため、まずは君たちの客観的なレベルを評価します。
現在どれだけの能力があるか、どういう能力特性を持っているか、どういった分野への適性があるか、そして自分がどうなりたいか――自分を知ってもらうことで、冒険者は生き残るための訓練を効率的にやっていけるようにもなります」
「それを我々ギルドでも管理して、君たちへの今後の指針にもしているわけだ。今どんな能力がどのくらいのランクにあって、今後どこを目指していくのがいいか、それが絶対評価で解るんだ」
お二人の説明は実に明快である。
いや、こういうもんってマジックアイテムとかで一発で素質とかスキルとか判ったりするもんかと思ったけど、そんな便利アイテムが都合よくあるわきゃないもんな。だったらこういう自分の能力を客観的に測定してくれるのは有難い。
まあなんだ、予備校でやってる大学入試のランク別合否判定みたいな感じかな……そう考えるとイヤだな。Fラン冒険者とか目も当てられん。せめてCラン目指そう! 段階評価が六段階かどうかは知らんけど。
というわけで、まずは技術レベル評価――これは技術レベル評価、魔法レベル評価、知識レベル評価の三つが行われる。
技術評価は、戦闘評価・非戦闘評価・探索評価・野外評価・例外評価の五つ。
魔法評価は、魔法レベル、使用可能魔法数、魔力レベルの三つ。
知識評価は、冒険者としての知識量で、政治・経済・宗教・地理・科学・魔法・生物・戦闘・探索・言語の十項目について問われる。
これら十八項目が、各十点満点で評価される。
これらの総合点(一八〇点満点)で、ある程度のランクが決まる。これに依頼完了実績が加味されて、実際のランクとなるわけだ。
ギルドランクは真銀・白金・金・銀・銅・鉄・青銅・石とあり、基本一番下の「石」になる――実績がないからだ。ただ、これは技術評価が非常に高かったり、「特殊ランク」を保有していると、より上ランクスタートになる。
ランクが金属名なのは「その方がなんか凄そうだから」らしい……でも一番上って「ミスリル」だべ? 金属少ないのにミスリルはあるんかね? そして金属でない「石」は「新人」であるという意味らしい。
これらについて、二時間ぐらいかけてペーパー+口頭+実技で試験が行われて――。
この後、衝撃の結果が!(゜∀゜)




