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魔導士ギルド本部にて


 さて、目的地のアークゥエスミィ連合王国は、ライ・マースト王国をさらに通過した西隣の国ではある。


 だが俺はライ・マーストの王都ケールコワーフで、魔導士ギルド本部へ出向かなければならない。


 ――例の「オーガ・レポート」の件で、やはり直接聞き取りをどうしても一回しておきたい、との意向がギルドのお偉方からあって、俺も情報料を受け取ってしまった手前もあり、仕方なく了承したのだ。

 マシュさんも「魔導の師」ということで同席してくれるというので、できるだけ厄介事は避けたかったが、こればかりは「早々に片付ける」方向で対処するしかない。

 というわけで、イヤだが「オーガ・レポート報告会」とかいう会議に出席することになったわけだが。


「貴殿がオーガ・レポートの著述者である、ケン・ファラザードであるか」


 ……薄暗い裁判所みたいな場所の、被告人みたいな中央の席で(椅子はあるので座ってはいる)、俺は七人ほどのお偉方に見下ろされるように囲まれていた。

 え、ナニコレ……「オーガと接触せしもの、これ死罪に処す」とか禁忌目録にでも書いてあんの?

 てかこれ、異端審問? と思ってしまうような雰囲気。


「ええと……はい、ケン・ファラザードに相違ありません」


 と応えはしたものの――肝心の弁護役(と勝手に俺認定したがただの付き添い)であるマシュさんは、後方の傍聴席。なんでや。弁護士仕事しろ。長すぎたら「異議あり!」とか遮ってくれると有難い。


「では、オーガ・レポートの内容について、これが真実であると、貴殿は誓約するや否や」


 ……なんすかね、「証言で真実を述べないとあとで断罪するから」みたいなこと言われてるような気がしますが……。


「真実であると宣誓します」


 ……マシュさんから「本人である、真実である、という宣誓は形式だから」とは聞いていたけど、仰々しいにも程がある。


「あのお偉いさんたちは、このレポートには注目してるのは確かなんだよ。まあこれも、あの代価をもらっちゃった以上、金額の内だと思って諦めて。何度も呼ばれるわけじゃないから」


 と、マシュさんには苦笑されたが。

 まあ滅多にある体験じゃないから、そういう意味では貴重なのかもしれんけど……世の中、貴重でもしたくない体験てのもありますんですぜ? こういう「吊るし上げ」みたいな場とかー。


「では、これより報告書の内容について、質疑応答を行う」


 ……これがまた長い。

 というより、重箱の隅を突くような細っかいところを穿り返すような質問が、延々続く。

 もういっそ全員バキューンしたろか、と何度も思ったが……さすがにそれは思い留まった。それやったら魔導士ギルド、総勢敵に回すし。さすがに全員バキューンできるとは思えない。

 ……途中休憩なしに4・5時間もそれが続き、いい加減精神的に疲労困憊してきたところで、やっと報告会は終了した。


 もう二度と出ねーぞこんなの。金もらってもイヤや。また出ろって言われたら、使者を死者に変える自信がある。

 でなきゃ、これを体験談として出版して稼ぐネタに……いや、そんな「魔導士ギルドの裏側」みたいな暴露本は俺自身の危険が危ない。印税ウハウハの金持ち父さんリッチマンじゃなくて、死後の世界のリッチマンになるわ。


 ……てな愚痴を伴いつつ、会場を出た俺を、マシュさんが待っていた。

 結局この人、ずっと見物してただけだったし……。


「お疲れ様」

「グルーガに付き合ってた一晩の方がまだマシでしたよ……」


 苦笑を交えたマシュさんの言葉に、俺は本気でそう応える。

 ほんま、心底疲れた……肉体的・精神的双方で。


「彼らもこれが仕事だからね……仕方ないんだよ。

 とりあえず聞きたいことは全部聞いたと思うから、もう呼ばれないとは思うけど」


 「思うけど」じゃなくて「もう呼ばれない」という確定が欲しいですね。

 「明日も来い」とか言われたら、あたしゃ今日中にライ・マーストから脱出しまっせ。そして二度とここには近づかない。


「流石にそれはないよ。この会議も、招集されたのは七ヶ月ぶりだし。年に一回あるかないかだよ」


 七ヶ月? 前回はどんな事例で?


「前回は確か……北方竜人国のレポートの報告で、だったかな。書いた本人は招集に応じなくて来なかったけど」


 それで通るんですか?


「まあ、通るも何も、本人がその竜人国にいたみたいだから、召集自体伝わってなかったんじゃないかな」


 ……つまりガン無視していればよかったと?


「ケン君は無理だったんじゃないかなー。ラスが受けちゃってたし。アークゥエスミィに行くならついでに、って」


 ……ラスさーん……。

 ……ハア。大金もらってもやりたくないことって、世の中あるもんですね……それだけでも勉強になりました。

 そりゃまあ、あの情報だけであんだけの大金寄越すわきゃありませんよね……でももう義務は果たしたかんな!


「ああいう異端審問みたいな報告会はやめた方がいいんじゃないかって、みんな言ってるんだけどねえ……」


 みんな言っとるんかい!

 なら何故やったし!


「あの長老連は、ああいう権威付けみたいな席が大好きでねえ……滅多にできないから余計にねえ……」


 そういうのを「老害」っていうんですよ!

 組織は時代の流れに即して効率化を進めねば、この先生きのこれないのです! きのこれないなら、たけのこればいいじゃないか、なんて戯言は許しませんよ! 俺たけのこ派ですけど!


「ちょっと何言ってるかわかんないんだけど……言いたいことはなんとなく解るけどね。

 現場担当者には言っておくよ、評判悪いって」


 ……マシュさんにも俺の「うんざり感」は理解してもらえたので、まあよしとしよう。

 ちょっときのことたけのこムシャムシャしてたんです。でも反芻はしてない。

 ……一応レポートに関しては、それで解放された。

 報告会出席の謝礼として、また二十万ゴネルほどもらったが、金よりああいった報告会の形式をなんとかせえよと。

 それでも「精神的慰謝料」としてもらっておく。

 しかし金満やなあ……さすがギルド本部。


 その日の宿と晩飯は豪勢になった。ワシの奢りやでー! あぶく銭なんぞぱーっと使うたるわー!

 それをまたリリエラさんが飲み会に変えて、ビュスナが絡んできたので飲ませて潰し、ナオにはかたれ、シェラがトラウマスイッチを入れたりしたけど、今回は記憶なくす前に部屋に逃げた。

 今回はシェラちんと同室にしたのでビュスナを放り込まれることはなかったけど、シェラちんが一晩中ブツブツ念仏みたいにトラウマを呟き続けるのには閉口したよ……コワくて寝られねー。

 お前も酒はダメ、ゼッタイ。寝ろ。

 ……それとも適当に酔っ払っ(たふりをし)て、リリエラさんにお持ち帰りされるのも手だったか……今度やってみよう。

 ああダメだ、あの人一晩中飲むアイアンレバーザルだったわ。


 さて、そんな精神疲労MAXの金満報告会も終わったので、いよいよ目的地であるアークゥエスミィ連合王国へ出発である。

 と思ったら、マシュさんが「ちょっと本部で別件で用があってね……数日滞在することになるんだけど」とかおっしゃいましてね。それもあって、しばし首都観光の休息と相成った。

 まーいーんじゃありませんかね、今までロクに休みもせずにあんなこつほんなこつやってましたから、ここらで少しばかりまとまった休暇でもとりましょーかね。

 せっかく本部に来たのだから、魔法購入権を使って魔法をいくつか買っていこうかとも思ったが、一般魔法と違ってレベル魔法は購入する魔法によって一日以上の講習が必要なのだそうだ……そういえばビュスナも新魔法習得で支部で何日か詰めてたな。

 とりあえず今はパスするとする。とりあえずベーシック・スペルがあれば事足りるし、どうしても取らなきゃいけないような、もしくは欲しい魔法があるわけでもないし。

 だが俺はこれから新魔法を考案する側に回るわけだし、多少基礎を勉強しておくに越したことはない……というわけで、魔導士ギルドの図書館で予習ぐらいはしておこう。

 だがまずは観光だヒャッハー!


てれれれってってってー♪


『魔導士ギルドの内部個人評価:ケンが上昇した!』


『所持金:約203万ゴネル(パーティプール金:240万ゴネル)』


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