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百均勇者。 -百均スキルで異世界チートは難しい気がする-  作者: 木持河類
第三章 伝説のオーガとバトル?
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空気


 翌日、昼前。

 俺らは再び、「荒野の跳ね馬」亭に集合していた。

 だが、その誰もが俯いている。俺も顔上げてられん。

 ビュスナは家族的な問題であろうが、俺たち三人はまだ昨日の衝撃から立ち直れていない。

 特にナオは、オーガをブチ殺すとか息巻いていたから、余計にショックが大きかろう。

 かくいう俺も、〈スクリューバレット〉がオーガに通じるかどうか、非常に不安になってきた。

 あの必殺技が通用しなかったり、一発で致命傷与えられないなんて相手だったら、こいつらどころか俺自身も危険だ。問答無用で〈天死の輪〉でバッサリでいいんならそれでいいが、ナオがなあ……。


「なんだい、ケンたちまで、昨日と比べて随分辛気臭くなったねぇ」


 ジェシカさんがちょっと早い昼食を出しながら、俺達の様子に苦笑している。


「いえ……昨日の夜、ちょっと自信なくすような相手に会いまして……」

「自信なくすような相手?」

「多分、スカウトだと思いますが……気配消すのがものすごい上手い人で」

「そいつぁ俺のことかい?」


 突然、俺とナオの肩に手が置かれた。


「うわっ!」


 俺は驚き、ナオは思わず半身で構えるが。


「驚きすぎだ」


 振り返ったそこに――昨日の夜に出会ったらしき、小剣だけを帯びた軽装の冒険者が、両手を上げて笑っていた。

 少々痩せ気味の顔は、ふてぶてしさが染み付き、歴戦の冒険者の雰囲気を纏っている。三白眼気味の吊り目と鷲鼻、薄い唇と、決してイケメンとは言い難いが、そのオーラは明らかに手練であることを示している。


「なんだ、あんたのことか」


 ジェシカさんがそう言うところからも、それなりに手練の冒険者なのだろう。


「……思い出した。《空気》のヤディック、だったかな」


 顔を確認してシェラがそう問うと、ヤディックは「ほう、俺を知ってるか」とニヤリとする。

 シェラが知ってるってことは――「そっちの方面」では有名な人物ということか。昨晩は顔が見えなかったから確認できなかったとみえる。

 しかし、〈空気〉って二つ名は……存在感薄い奴みたいでどうかと思わないでもない。多分、意図的にそうなれるからの二つ名なんだろうけど。

 ……とりあえず俺の目標は「空気読め」かな。


「ヴァロースやジェシカとは昔、ちょいと組んでたことがあるんでな」

「……で、ヴァロースさんから何か頼まれたと?」


 俺がカマをかけてみると、ヤディックは否定はしなかった。


「見回りをしてたのは仕事だが、おまえらが無茶なことをしでかしそうなら軽く脅しを入れてくれ、とは言われたな」


 ……なんてこったい。

 ヴァロースさんから見たら、俺らはまだまだ「駆け出しのガキ」ってことなのか……そりゃまあそうなんだけど。

 そりゃまあ、相手が相手だから、しょうがないのかもしれないが、凹むわー。


「気ィ悪くすんなよ。オーガ相手に俺らだってタイマン張りたかぁねーんだ。お前らレベルじゃエサにしかならねーからな。事実は事実として受け止められねーと、この先生きのこるこたー出来ねーぜ」


 きのこれないか、先生……ゴブリンキング、盗賊団ときて、次は上級の怪物、順調なステップアップかと思いきや、ちょいーとばかし荷が勝ちすぎてるってことかいな。

 オーガって、そこまでのバケモノってことか……ナオの目標もどんどん遠のくなぁ。言っちゃ悪いけど。


「……ところでヤディックさんの気配、どうやって消してるんですか」


 ダメ元で、一応訊いてみると、あっさりこう返答がきた。


「ああ、ありゃあ魔法だからな。俺は実際、お前らよりずっと離れて、街の柵の内側にいた。気配が感じられないのは当たり前だ」


 ……全部魔法か。立体幻覚もしくは光学迷彩みたいなものの応用と、音を飛ばす魔法。この二つがあれば、あれは実現可能だろう。そういう魔法があるかどうかは知らんけど。あとで親父様に聞いてみるか。


「……そっちのあんちゃんは、大体見当がついたか? だがそれだけじゃ半分だけどな」


 半分?


「こいつは俺のオリジナル複合魔法だからな。ちっと考えた程度で真似されるようなシロモノじゃねーからよ」


 と、ヤディックはニヤリ。


 ……オリジナルの複合魔法か……そんな使い方もできるんか。

 そりゃまあ、色々効果を複合させれば、単一効果の魔法でも凝った使い方ができるのは当然だ。

 様々な関数を組み合わせてコーディングしてプログラムを作り出すのと同じ発想か。それともマクロやバッチ程度の簡単な構造なのか……その複雑さの程度によっては、マシュさんとの新魔法計画も大きく変わることになるからな。

 それにしても、魔法でやってたとなると、気功術の気配感知ではそれに気付けないのか……いや、それは単純に俺の技術的な問題かもしれんが。

 さっきだって、気付かれずに背後とられたしな……。


「俺だってこいつでメシ食ってるんだ、そうそう簡単に気付かれるようなヘマはしねーってことよ」


 ……ですよねー。

 はぁ……やっぱり世の中バケモノ多いわー。

 つーか冒険者って、こういうことが「普通にできる」奴らが生き残るんだろうなー。

 命賭けてるプロはレベルが違うぜ……。


「あんたらも無茶しすぎるんじゃないよ。オーガってのは、ロード級が生まれるようなゴブリンの群れを、一体で全滅させられるような奴なんだよ。

 ナオ、西方生まれのあんたなら解るはずだよ」


 ジェシカさんの忠告は忠告として有難く受け取るとしても……俺の〈絶対領域〉も、使い方をよく考えないと、使う前にブチ殺された、なんてバッドエンドになりかねん。

 点で攻撃するより、線や面で攻撃しないと、オーガ相手には厳しいか……となると、〈スクリューバレット〉程度では、一発では致命傷にならんかもしれん。〈天死の輪〉で上手い事サクッと切り裂けば……あれは横から不意打ちするには距離感が難しいからなあ。

 とにかく、一発で致命傷もしくは戦力を大きく削ぎ落とす戦い方しないと……。


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