久々に帰省した
それから五日後。
俺達はマシナの町へ、久々に帰ってきた。
行きに乗ってきた乗り合い鼠車を乗り継ぎ、三日で戻った。以前は足代が乏しかったので通常便で来たが、今回は「特別急行便」で二日カットした。通常便の倍ぐらいかかったが、まあ今なら払えない額じゃない。
「ほー、ここがビュスナの故郷かいな」
「別になんにもない町よ。夜になれば真っ暗だし」
「うちの故郷なんて、ここよりなんもないで。辺鄙な開拓村やさかいな」
あの一件以来、ナオとビュスナの会話が増えた。だいたい雑談だが、その「しょうもない会話」ができる間柄になったのはいいことだと思う。
ここを出た時は、こいつに同性の友達なんて一生出来っこないって思ったもんだが……精神的に成長してくれて父ちゃん嬉しいよ。委託の代理父ちゃんだけど。
「だからボク言ったじゃん? 殴り合って友情が芽生えるってさ」
二人の様子を見て、シェラはドヤ顔をするが。
シェラちん、それは結果論だよ。いつもこう上手いこといくとは限らんのだから。
まーでも、生き死にを共にした仲間ってのは、強い仲間意識持てるっていうからな。「戦場の絆」ってのは馬鹿にできんもんらしい。吊橋効果も入ってるけど、それも込みで。
俺達は、形ばかりの柵で囲われた町へ入っていく。町には入町税みたいなものもない、オープンタウンだ。田舎だからな。
見慣れたはずの町並みが、妙に昔の光景みたいに思える。。ククリグと比べれば建物も低いし、あんなに人も多くはないが、それでも何というか、ほっとする。
町を離れて一年も経ってないし、別にホームシックじみたこともない。
それでも、ここは住み慣れた、懐かしい故郷だ。
――まずは、宿の確保かな。ナオとシェラの宿代は、俺とビュスナで出すことにした。せっかく実家に帰ってきても、ビュスナは親と重い話をする都合上、俺の家はオンボロで狭いので、二人を泊めるにはちょっと具合が悪い。
なので、中央通りの一番大きい宿、「ユニコーンの乗り手」亭で二人の部屋を取る。
「なんだ、お前ら帰ってたのか。お前らも依頼受けて来たのか?」
宿の主人、ガウランさんから妙な声をかけられる。「ユニコーンの乗り手」って顔じゃないのは相変わらずだ。そもそもおっさんだし。
「依頼? いや、俺たちはただの帰省だけど」
「なんだそうか――まあ、お前ら新米冒険者にゃ荷が重いだろうしな」
ガウランさんはガハハと笑いながら、一部屋だがナオとシェラの部屋を用意してくれる。
「今日はこれで一杯だからな、運がよかったな。もう少し遅れてたら一杯になってたかもしれん」
ガウランさんがそう言うと――二階から、冒険者らしい連中がゾロゾロと降りてくる。
「ちょっと町の周囲をみてくる。帰ったらすぐメシにしたいから、用意しといてくれ」
「はいよ」
五人の冒険者は、そう言って宿を出て行く。
こんな町に珍しい……普段、あんな連中が来るような場所じゃないんだがな。基本平和だし。
「なんかあったんですか」
一応ガウランさんに聞いてみると――。
「ああ……森にな、オーガが出たって話だ」
オーガ?
あの「人食鬼」が?
遭遇したら「人生最後の日になる」って言われる、あのオーガ?
「いや、ちょっと待って……オーガなんて、もっと西にしかいないんじゃ?」
確かオーガは、ライ・マーストのさらに向こうの西方の森にいる怪物で、こんな東の国にはいないはず……あいやちょっと待った、確かあいつら、西方から昔大軍で侵攻してきたことあったよな。ギルドの試験ついでの初心者研修で聞いたの覚えてるぞ。
「だからちょっとした騒動になってんのさ。まあ確認したわけじゃないけど、森で襲われた狩人がいてな。そいつの証言からして、オーガ以外にありえんだろうって話になってな。他の町だが、帰ってこない奴もいるそうだ」
……狩人が襲われた?
「いっとくが、おまえの親父さんじゃないぞ。ゴロンゾの親父だ。それもちゃんと生きて帰ってきたし。襲われたっつっても、獲物を横取りされたってだけだ」
……まあ、うちが被害に遭ってるんでなければいいが……っておい?
なんか、背後に「怒りのオーラ」が……
ナオさん? 何、怒り滾らせとんの?
「……おっちゃん、それ、オーガ、何匹おったん?」
「あ、おう、一体だけだって聞いたな。こんな東まで来てるぐらいだから、はぐれオーガだろうって。さっきの冒険者も、オーガ退治で町に雇われた連中さ」
「……さよか。町に雇われとるんやな?」
「ああ、そうだけど……おいケン、この嬢ちゃんどうしたんだ?」
「さあ……」
……ナオの奴、なんで「オーガ」って聞いた途端豹変してんだ?
厄介事の匂いしかしねえ……俺の危険センサーがビンビンに反応してるぜ!
えー、次から新章となりますが……ちょっと構成とか見直しのため、週明けまで休ませていただきます。
再開は4/19(月)からです。




