打ち合わせ
とりあえずやることは決まったので、ギルド紹介の宿へ投宿。
男と女で、四人部屋を二部屋とる。
「じゃ、ちょっとボクは町ぶらついてくるよ」
「ほな、うちもちょっと知り合いんとこ顔出してくるわ」
「あたしも魔導士ギルド行ってくる」
シェラ、ナオ、ビュスナは荷物を置いてすぐまた出かける。
さて、俺はとりあえずすることも特にないし……ステルスアーマーでも磨くか。
コーチも手持ち無沙汰っぽく、窓際で外を見ている。
――しばらくすると。
「ケン」
シェラが戻ってきて、ドアから顔だけ出して、ちょいちょいと手招きした。
なんだ?
「ちょっといい?」
……呼ばれるままに、俺は廊下へ出て。
「ミューラの件」
――その一言で、背筋に力が入る。
「ちょっと昔の伝手使って、探り入れてたんだけどね。
だいたいの潜伏場所がわかった」
「マジか――どこだ?」
「ファース・エミュール」
ファース・エミュール……確か、ジシィ・マーダよりももっと北の国だっけ?
ジシィ・マーダのすぐ北がシュクティム王国、その上にメイデンなんとかがあって、その先が確かそうだったはず。
「少なくともここらへんからは離れたみたいだね。
さすがに、ライ・マーストの近くに潜伏するほど無謀じゃなかったみたいだ」
「魔導士ギルドのお膝元だしな」
ファース・エミュールは確か、人類居住圏では最北端の国である。
同じぐらいの緯度では、その西側に他の国もあるが、ファース・エミュール北部には、「ゲート・シティ日本自治区」が接している。
つまり、地球へ通じる「ゲート・シティ」へ繋がるルートが確保されているのだ。
「これもカミオロの導きってやつか……」
「かもしれないけど……だとしたら、ゲート・シティまで入り込んでるかもよ?」
「げ……あそこに入られるとなんかめんどくさそうだ」
「ボクらの常識の外にあるとこだからねえ」
……てことは、しばらくはあいつのこと気にしないでいいってことか。
「一応注意はしておいた方がいいよ? 多分、魔導士ギルドの少ないところに潜伏してるだろうからね。ファース・エミュールも、一番辺境だしさ」
「魔導士ギルドの追っ手も役に立ってるってことか」
「そこはさすが、全世界組織だね」
……まあ、足取りが掴めただけ、よしとしとこう。
これでゴブ狩りに専念出来るってもんだ。
翌日。
「ほな、ゴブリンコロニーの駆除依頼について、説明させてもらいますわ」
護衛官ギルドの二階集会室にて、ゴブ狩りの打ち合わせ、そして顔合わせが行われた。
地元組は、<荒野の鉄拳>他、<霧の村><山中狩人><蹴り一閃><石狩>の面々。
一応、面通ししながらパーティ名の由来とか聞いてみたら……
<霧の村>は、まあそのまんま、霧が多い村から出てきたと。
<山中狩人>は、これも山の中の狩人の村から来た。みんな弓が得意と。
<蹴り一閃>はまあ……解る。なんとなく。そして想像通り、<荒野の鉄拳>とはリーダーがライバル。
<石狩>は……ああ、「ストーンハンター」的な? 鉱山出身の。「いしかり」じゃなくて「いしがり」の方か……。
みんな適当に名前つけてんな!
「そうは言うてもですね……」
「そんなカッコええ名前なんてそうそう思いつくもんでもないし」
「<荒野の鉄拳>みたいなカッコええの思いついたらなあ……とか思いますけど」
「<巨人殺し>なんてのもええ名前やないですか。そんで相応に活躍もしてはりますし」
「まあむしろ<鬼殺し>ですけどなーははは」
……むう、実は俺らの誰も、一匹も生オーガは殺したことがない件。
骨は最初から死んでるし……グルーガと共闘したときも、グリブカなんたらのときも、結局殺してないしなー。
あれっ、俺ゴブリンスレイヤー止まり?
……まあキング始末したのはマジだからいいんだけど。
しかしそうなると、「オーガキラー」で有名になるのはちょっとなあ……まああれは冒険者ギルドも巻き込んだ詐欺だしなあ……
<ギガントバスタ>が鬼○隊みたいに扱われんのもなあ……。
それはそれとして、ゴブ狩りである。
コロニーは森の中。廃村があって、家の残骸にゴブが住み着いているんだそうだ。
畑もそこそこあったので、作物の野生化したのがあちこちに生えていて、食料になっている様子。
廃村がゴブの住処になるのはよくあることで、一度住み着くと、駆除しても何度もそこがコロニーになるので、そういう廃村は完全に焼け野原にしてしまわないといけないそうだ。
「基本、パーティごとに動いてもろてええけど、せやな、横に並ぶときの配置だけ決めとこか」
ゴブ拠点を囲むように、中央に<荒野の鉄拳>、その右側に俺らと<蹴り一閃>、左に<霧の村>、<山中狩人>は俺らの後方から弓で支援。<山中狩人>には、最初に不意打ちの一撃もやってもらう。
まあ今回は、ゴブキンが出てきても容赦なくバキューンとかずんばら!とかするからな。正面から戦っても面倒だし。
「キングを雑魚扱いしないであげてよ……」
雑魚じゃないけど、今なら一撃で倒せるんだよなぁ……多分。
レベルアップした<絶対領域>で一撃必殺!
「一撃で倒せるって言っちゃうところが雑魚扱いだよ……」
まあ初見殺しだけどな。
俺の<絶対領域>を見たゴブは生かしておかん。
そして、これを見たゴブキンも、当然生きて帰すわけにはいかん。
まあゴブキンは一体しか遭ったことないけど。
そして<絶対領域>は俺しか見えないけど。
ゴブ狩りの打ち合わせは、大した内容ではない。
場所の確認、朝早いうちに現場に向かい、午前中に襲撃。
まずは魔導士が、村全体に魔法の<霧>で麻痺毒を散布。<霧の村>の魔導士が中心になってやる。さすが名前通りだ。
解除した後、<山中狩人>が外に出てるゴブに矢を撃ち込む。同時に俺らも<光弾>をブチ込む。
それで数を減らしたところで、前衛突撃。ゴブ狩り、ゴブ狩り、ゴブ狩りの三本です。
「大雑把やけど、ゴブ狩りなんてそんなもんやしな」
「ジェネラルとかキングとかおったら、それも大して通用せぇへんけどな」
「それやったらそれで、キング・キラーさんの出番やないか」
「そやそや、キングおっても安心やな!」
いや俺が安心ちゃうわい。
「ケン、キングがいたら俺に任せてもらおう」
おお、そういやコーチさんはゴブリンキングとは殴り合ったことはないので?
「ないな。なのでどれくらいのものか、非常にそそられる」
うんうん、そんときはコーチさんの出番っすな!
楽しまれるとよかろうなのだ。
そのコーチを見て、ディノがナオに囁いていた。
「……なあ、ナオ」
「なんや?」
「あのコーチって人……実際、どのくらいのもんなん?」
「どのくらいて……まあさっきも言うたけど、ワンパンでうちが三回転したんはマジや」
「ええ……マジでそんなブン回されたんか?」
「そらまーごっついパンチやで? 受けた腕も折れたし、鼻も潰れてえっらいブサイクになったし」
「……いや、今は大丈夫やろ」
「そらー治したからな。そのまま放っとくわけあらへんわ」
「まあ、そらそやけど……」
「そんでな、オーガと正面から殴り合えるぐらいやで? マジで」
「……マジで?」
「ほんでウーゴニアスリータでな、そこの格闘大会前年度優勝者とド突き合いして相打ちに持ち込んどるしな」
「……えっと、それって、あのガルネルとかいう虎人やろ?」
「おー、知っとったか。ガルネルのおっさんもえっらい強かったけどなー」
「いやいや……獣人国のガルネルって言うたら、俺らでも聞いたことある最強のケンカ屋やで? それが獣人の格闘大会でも優勝して、実質人類と獣人の中で最強クラスやんか」
「まあ評判に偽りなし、いうやつやな」
「そのガルネルと引き分けたっちゅーんは……」
「気になるんやったら、殴られてみるとええで?」
「いやなんで殴られる前提やねん」
「一発ぐらいは殴らせてくれるけどな。そのあと、十倍返しがくるでー」
「なんで嬉しそうやねん……」
「うちも初めて会うたときに、先手で全力雷神拳かましたんやけどな――全部受けられて、さらに一撃で十倍返されたわっはっは。そんで三回転したんやけど」
「………………」
「まあそんな具合やから、ゴブキンおっても任せといたらええで。ついでにキング・キラーもおるしな」
「はは……おまえらどないやねん……」
さすがにナオから聞かされると、噂とはリアリティが違うらしい。ディノ君はドン引いているのが判る。
まあ、コーチはな……見た目はああだけども、オーガだからなー。
初見で見破れる奴はそうはいない。
そんなわけだから、今回のゴブ狩りは久々に、初心に帰ってあたるとするか!




