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盗賊団対策


「よう、ここにいたか」


 次に俺に声をかけてきたのは、窓口統括の事務のおっさん、スクージー事務主任。五十近い、小柄で頭の薄い小太りなおっさんだが、事務的な処理能力はギルド一といわれる有能さんだ。You know?

 このおっさんとは、例のゴブリンキング事件以降、報奨金の受け取り手続きとかギルドカードの更新とかで何度か話をする機会があったが、うちの町の「お節介ジジイ」こと、狩人の大先輩であるサンドール爺さんによく似ていた。憎まれ口は叩くものの、実際は面倒見がよく、そして知識も経験も豊富なので、何かと色々教えてくれる――親父も狩りの基本から獲物の相場とか、畑の管理方法とか、色々教わっていた。今でも元気におせっかいを焼いていることであろう。

 書類を両手に抱えて相変わらず忙しそうなスクージー主任は、「ギルマスが呼んでるから、上行ってくれ」とだけ言い残して、とっとと受付カウンターの内側に入っていった。

 ラスさんがまた何の用だ……さっきの二人も呼ばれていたから、同じ用件か?

 まあいいや、とにかく行ってみよう。


 ――ギルマス部屋では、ラスさんの他、さっきの二人組、そして見知らぬスカウトっぽい、軽装なれど強面のおっさん冒険者が二人。全員、ラスさんの机を囲んで何やら談話中。

 俺が来たのを見て、ラスさんが口を開く。


「これで全員揃いましたね。では――ギルドからの依頼です」


 ギルドからの依頼? 今度は何ぞや。


「首都マーダへ向かう街道で、盗賊団が出没しているとの報告がきています。国軍が捜査に当たっていますが、なにせ街道沿いにはマルブグの森やらジシーヤ山やらがありまして、盗賊団が隠れる場所は無数にあり、国軍も拠点を探しあぐねているとのことです。

 そこで我々も、国軍に協力して、盗賊団の潜伏拠点捜索を行います。

 依頼主はジシィ・マーダ政府です。期間は十五日。場所はマーダへ向かうマーダ東街道沿い。ここククリグから、小さい隊商を装った馬車を出します。それに同行して、夜間に周辺の探査を行う形で、首都マーダまでの街道を一往復します。

 マーダ側からは、同じ商会の隊商に偽装した国軍が、こちらとの間を逆に往復します。国軍とは中間地点で情報交換を予定しています。

 このような形で、盗賊団の拠点探索を行いながら街道を行き来する治安任務です。

 隊商の偽装リーダーを務めるのは、盗賊団退治には定評のある《森の疾走者(フォレスタ・スピーダ)》。彼がそのリーダー、キャサウェイです」

「キャサウェイだ。こっちは副長のギルダム」


 見知らぬスカウトの一人がそう名乗り、隣のスカウトを紹介する。年齢は三十代後半といったところ。キャサウェイさんは少し細面でブラウンの髪に同じブラウンの瞳の、ちょっと胡散臭い雰囲気の「南米の盗賊」っぽい髭面の人物。ギルダムさんはやや四角い顔で、くすんだ金髪と緑の混じったブルーアイの白人系。スカウトというより戦士のようながっしり体型。

 二人とも歴戦の傷が顔や腕に刻まれ、腰の剣の鞘にも同じような傷が残っている。

 しかし、盗賊団退治の専門家か……てことはレギオンスレイヤー? そういうのも需要あるんだな。


「キャサウェイ、こちらの二人が、野外探索では役に立つ二人です」


 ラスさんが、おっぱいお姉ちゃんと謎のイケメンの二人を紹介する――野外探索のエキスパートか。


「マシュミーヤ・レイネーノイルだ。マシュでいい。本業は魔導士だ、探索系魔法は任せてもらおう」


 イケメン氏=マシュさんがそう名乗った。なるほど、探索魔法ね。


「どっも~、リリエラ・ライラッカですぅー」


 ギャルパブのホステスみたいな挨拶をするリリエラさん……大丈夫かなこの人。キャサウェイさんも眉間に皺寄ってるし。


「彼女はこれでも優秀な魔法戦士です。気功術も使うので、周囲の気配探知は君達よりも優れているかもしれませんよ」


 と、ラスさんが補足する。

 これで魔法戦士とか……なんでこう「おっぱいちゃん」は暴れたがるのだろうか。普段から胸が相当「暴れん坊」なのだが、それでは足りぬと申すか。ならば俺がお相手げふんげふん。

 それにしても、気功術――そんな技術がこっちにもあるのか。魔法があるならそんなもんいらんと思うが……それにはそれの需要が別にあるってことか?


「で、最後に――そこの彼が」

「知ってる。『王殺し(キング・キラー)』のケン、鉄ランク。パーティは《ギガントバスタ》、だったか」

「……キング・キラー?」


 キャサウェイさんの言葉に、俺は「なんじゃそりゃー!」って思った……いつの間にそんな二つ名が?


「ケン君の噂はギルドでは知れ渡ってますからねえ。まぐれかもしれないけど、ゴブリンキングを新人パーティだけで倒した――まぐれにしてはちょっと出来すぎている、でもゴブリン側にそんなところを忖度する謂れはない……となれば、新人とはいえ、十分に認められるだけの力と運はある。そういうことになります」


 ラスさんは面白そうに言うが。

 ……えー、そんな評価になっとんの? 過大評価ちゃう?

 そんな風聞が広まったら、結果出せんかったら今度は何言われることやら……ビュスナあたりなら「キング・キラーね、まあ当然よね」とか、ない胸を反らして自慢するとこだろうが。


「そっかぁ、君がキング・キラー君かぁ~」


 ――と、リリエラさんが俺に抱きついて――むっはー! 息が! 息が!

 腹上死じゃなくて胸中死! 埋まる埋まるー! だけど至福ー!

 これが「胸中穏やかでない」ってやつか!


「気になるわけだよねぇ~よろしくぅー♪」

「やめろと言っているだろうが」


 ……イケメン・マシュさんに叩かれたのか、頭をさすりながら、リリエラさんは俺を解放してくれた……危ない危ない。こんなんで死んだら裏山死刑だわ。一生ギルドで「キングを屠り、おっぱいに屠られた男」って伝説になるわ。いややでそんな伝説の男。もうちょっと他の伝説も作りたいんや。ああでももう一回……。

 ……キャサウェイさんとギルダムさんの、やや嫉視の混じった裏山視線はあえてスルーの方向で。

 そこで、マシュさんが俺に訊いてきた。


「……ところで、ジェシカの娘も君と一緒に来ている、という話だが――」


 ジェシカ?……ああ、ビュスナのおっかさんか。お知り合いで?


「ビュスナなら魔導士ギルドですよ。新魔法の習得で。最近は一日ずっと詰めてます」

「そうか。じゃあギルドへ行ってみるか……ついでの用もあることだし」


 マシュさんは小さく頷いた――やっぱりおっかさんとは昔のお仲間っていうか、一緒にやってた時期があるんだな。

 そこでラスさんが咳払い。そういや依頼の話だったっけ。


「――今日のところは以上です。この仕事を請ける請けないは、明後日までに返事をください」

「うちがやらなきゃ話にならんだろう」


 とキャサウェイさん。隣でギルダムさんも頷いている。


「我々も参加しよう」

「ラスちゃんのお願いならなんでもきくよぉ~」


 マシュさん&リリエラさんも了承。


「……じゃあ俺はあとの三人に聞いて、明日にでもまた返事します。多分、やれるとは思いますが」


 俺、リーダーじゃないから、勝手に決めたらあかんのよねー。リーダーだとしても、勝手に決めたらブーブーうるさそうな牝子豚は一匹知ってますので。


「では、返事を待っていますよ。ご了解いただいた方々は、依頼書にサインをお願いします」


 ラスさんの言葉で、一同は解散となった。


『※ミッション:盗賊団偵察を開始します』

『※ミッション:シェラの正体を探れ!を継続します』


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