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沼山はライバルです

 俺--三至磨春斗みしまはるとは、男子の中では沼山穂ぬまやまみのるに詳しいと思う。

 

 それはなぜかというと、勝手にライバル視しているからだ。


 知らない人間も多いが、沼山穂は成績がすこぶる良い。


 クラストップを譲られたことがない。

 そして俺は、いつも2位に甘んじている。


 俺たちが通う高校は進学校ではなく、就職と進学が半々ぐらいの商業高校である。学力推薦枠で、沼山はこの高校に入ったらしい。進学校に通えるほどの実力がありながら、実業高校に進む人間というのは一定数いる。沼山は、そういう人間だ。

 つまり、頭の出来が違うのだ。


 そんな沼山は、まずもって目立たないのに、おそらく体育の成績等筆記がないものは苦手分野もあろうに、トップを死守している。

 俺が観察している限り、トップを維持するために気負っている感じもしない。


 俺も、学力推薦なんだけど。



 地味にへこむ。


 

 成績で、就職先を選ぶ順番も進学先推薦の権利も決まるため、クラス2位とはいえど油断はできない。

 

 ああ、もう。

 普通に進学校行けよ。お前の頭はやってけるよ。

 脳内で毒づいたことは何度もあります。ごめんなさい。


 そういう意味で、ひそかに妙に意識してしまい、俺は沼山の情報収集や観察をひそかに行っていた。

 本人に話しかけたりはせず、周りから情報を得て、敵を知っていった。

 

 沼山穂ぬまやまみのる

 みのる、という音は男性のようだが、れっきとした女子。

 ただ、女子扱いはされていない。男子扱いされているわけでもないので、ある意味「女として」扱われているとも言えるかもしれないが。

 前述のとおり、男子から「ブス、キモイ」と陰で散々悪口を言われている。

 ダサくオタクっぽく見える猫背、剛毛のショートカット、見た目にあまり構わず、男の子のような顔つき。低い声。空気感からして、暗くてネガティブでどこか鋭いものを持つ。実際は標準体型くらいかと思うが、小柄で猫背のためか体型も少々ぽっちゃりに見える。校則通りの長いスカート、しゃれっ気もメイクっけもない。

 コミュニケーション能力が発達していなくて、男とは話せず固まってしまい、たまに単刀直入に言葉足らずで発言してしまうこともあるコミュ障。

 表立ってのイジメはないようだが、疎まれていることを本人はわかっており、地味にしている。中学時代は、男子からのイジメがあったという噂も聞いた。

 体育が苦手。体力もない。絵がうまい。ゲーム、漫画、アニメが好き。ちなみにボーイズラブよりノーマルカップリングのほうが好きらしい。

 柚原、更谷とは趣味の合う友人であり(更谷は二人に比べてオタク度が低いようだが)、よく一緒にいる。ほかにも友人はいるが、派手な感じの女子と会話しているところは見たことがない。


 授業中の発言はほとんどない。ものすごく目立たない。ただ、授業に真面目に参加している。発表はしないが、あてられたら正解する。一度斜め後ろの席だったので、ノートをチラ見してみたら、余白に落書きをしては消していた。真面目でもないのかもと思ったが、単に時間が余っていたり空想していたりするのかなと思う。


 実は、柚原ほどではないが胸が大きい。俺の見立てではDカップくらいありそう。

 この夏のスクール水着姿を見て、観察してしまった。遠目に。また、全体の肉感が標準体型っぽくて、太いというほどではないが決して細くもないバランスが好みだった。

 実は、きんきんしない低めの声も好みだったりする。


 沼山に、彼氏はいない。これはイメージではなく、更谷たちが話していた情報だ。



 俺には、彼女がいる。

 ーーことに、なっている。


 俺は三至磨春斗みしまはると

 自分で説明すると胡散臭いが、イケメンのほうに入る。クール系、というか、ぼーっとしている系、というか。  

 派手だったりチャラかったりはしないつもりだ。どちらかというと、性格は硬めだと思う。

 猫っ毛のふんわり茶髪が地毛なのと、甘いマスクをしているそうで、あまり硬いイメージは持たれにくいのがなんともいえないところだが。

 見た目のために小学校の頃からモテていた。でも、あまり厄介なことにはならなかった。

 幼馴染の須川遥加すがわはるかが美少女で明るくて、お似合いだよねと勝手に思われ、防波堤になってくれていた。

 俺は遥加のことが好きな時期もあった。しかし、遥加は俺の兄とつき合った。

 俺の兄は、今自分たちが通う学校の教員をしている。女除けが必要だった俺と兄との接点を増やしたい遥加の利害が一致し、俺と遥加は偽りの恋人同士になった。

 実のところは、そのときはまだ遥加をあきらめきれない俺のあがきだったのだが。

 昨年、ほんとのほんとに遥加に振られて、俺はあきらめることができた。でも、偽りの恋人は解消していない。別れたとなれば、遥加は俺の家に来て兄と恋人同士として接することができなくなる。単純に、お互いの利益のためだった。


 兄の職業を守ることにもつながるため、俺は家の中以外ではこの恋人がいるという嘘をつき通している。


 もちろん、この飛ばされたメンバー5人にも、嘘をついている。

 

 それが問題になるなんて、ちっとも思っていなかった。

 


 

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