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サイカイのやりかた  作者: ぎんぴえろ
[1]神童との出会い
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11/15

だから『僕』は、君の力になりたかったんだ

前回のあらすじ

神童は本当に欲しかったものを知る。しかしその代償として傷ついたのは神童本人ではなく、


才能のないサイカイの少年であった。

「マフユお前マジでふざけんな! 絶対に許さないからな!!」

「……。」

 彼が目を覚まして2日後の夕暮れだった。見慣れた4人部屋の一角でマフユは怒りを露わにするイチの前に座りただ黙って聞いている。ダンッと布団を叩き、鬼の形相で見る彼にマフユは何も答えられない。

「お前のせいで僕は大事なものを失ったんだ! お前の勝手な行動で、我慢して我慢してようやく手にした幸せを、お前は無駄にしたんだよ、わかってるのか!?」

「……。」

 ぐるぐる巻きだったものが更に何重にも巻かれ、天井から伸びた包帯に左足を吊るした状態で彼はただひたすらに彼女を責める。お前が悪いんだ、お前のせいだと。彼女はそれを否定することなく受け入れていた。

「こんなにも無残な状態にしてくれてよ、これでただ謝られたって絶対に許せないのは分かるよな。もう僕怒ってるから、本気で怒ったから!」

「……。」

「だからーー」

 そして彼は、()()()()()()()()を前に出す。彼女の顔に目線を合わせ、勢いを乗せるためかその腕を一度引いて、彼女に向け突き出したーー


「僕のうまいよ棒、もとい18円を返せ!!」


「返すよ」


 チャリンと。その広げた手に小銭を置く音が病室内に響いた。

 さて、状況を整理しよう。

 彼らがいるのは病院の一室であり彼の足はぐるぐる巻きで固定されている、それは間違いない。付け加えるならぐるぐる巻きは左足だけでなく左腕以外の全身であることか。その姿は正にミイラに加工途中で巻いていた人が死んでしまった後のようであり、繭のようでもあった。

 しかし、ここが彼の怒りポイントでは無い。

「……どうして、うまいよ棒落としただけでそこまで怒れるの?」

「怒るに決まってんだろうがバカ! 身動き出来なくなってから、ずぅーっと僕の視界にあった宝物(メモリーオブアイテム)! 私はねぇ、そりゃもう食べたくて食べたくて仕方がなかったわけです……! ようやくマフユが来て食べられると思ったら、もうこの仕打ちよ!! 死んでしまったうまいよ棒コーンポタージュ味に謝れやアーメン!」

「……アーメン」

 ぐるぐる巻きで動けない彼に頼まれ、机の上に置かれたうまいよ棒を開封するのに失敗し破裂。あっと気づいた時には遅く、うまいの棒の上半分が綺麗な床に飛び散った。

 以上、彼が鬼の形相で怒り狂った理由であった。

 マフユ、終始無言無表情。感情がまた無くなり心に鎖が巻かれたと思われても仕方がないほどに無感情である。この少年が目を覚ました瞬間、飛びついて泣いたことが嘘であって欲しいと願うばかりだが、

 そういえばこんな奴だったなとも改めて思うわけで。

「イチ、新しいの買ってくればいい?」

「え、うーん。いいや、それならマフユと話したい。時間勿体ないしアーメン」

「……気に入ってるのそれ?」

 彼女はまた、彼の元に戻っていた。ぐるぐる巻きが増えただけで話す内容も立ち位置も変わっていない。特に意味もないたわいもない話を時間の許す限りベラベラと(主にイチが)、4人部屋の部屋の一角で丸いパイプ椅子の上に座り馬鹿馬鹿しい話に耳を傾ける。

 ただ、少しだけ変化があるとすればイチの言葉に少しだけ胸が跳ねるような感覚があったことだろうか。お菓子と比較されるのは人によっては嫌な感情が湧くかもしれないが、彼女の中にふわふわとした感情が浮いている。不思議と、悪い気持ちではなかった。

「いやぐるぐる巻きはやり過ぎだよね! 動かないんですけど、トイレ行け無いんですけど!?」

「……ばぁばが、安静も出来ない馬鹿はこれくらいしないとまた逃げ出すって」

「クソババァが、治ったらうまいよ棒を寝てる鼻に突き刺してやる。あっ、退院前に買っとかないと!」

「安静」

 骨自体に大きな負荷はかかったものの手術とまではいかなかったらしい。完治するにはしばらくこのままだということだが、数週間も経てば松葉杖を突きながら登校可能だということだ。

 ただ入院期間は延びたようで目を覚ました瞬間にばぁばによるおはようゲンコツで頭をおさえていたイチであった。昨日漫画で見るような大きなタンコブを作ったにも関わらずすぐにまた次の作戦を練るとは、懲りないのだろうか。

「あぁあ。僕の宝物もゴミ箱行きだし、動けないし、最悪だ。ここまで最悪だと何か特別いいことが返ってきてもおかしく無いと思う今日この頃の僕です。さて、そんな私になにか特別な〜はいマフユどん!」

「……。」

「あれ。おいマフユ、マフユ〜?」

「……えっと、何?」

「またか、また僕の話無視かいな。なんだよさっきのまだ引きずってるのか。というか引きずってもいいのかい? 僕うまいよ棒食べたいんですけど」

「ん、ごめんね。……そうじゃなくて」

「他に言いたいことあるならスパッと言えよ。僕に隠し事なんて無しだからな、これから先もずっと無しだぞ!」

「……わかった」

 さて、心の変化はもう一つあったようで。頭を伏せていたマフユはすぐにその変化に気づかれ怒られてしまった。感情の変化には妙に鋭いイチである。事実、彼女は言うべきタイミングを図っていたのもある。ちょうどいいと席を立ち、

「イチ。その、今まで……ごめんね」

 彼女は頭を下げた。謝らないといけないと、ちゃんと言葉にして伝えないとと思ったのである。彼が特に気にしてなさそうにしてたとしても、彼女の心はそれを許さない。自分のした行いを、自分の失態を、先ほどのように怒鳴り散らされても仕方がないと思っていたのだ。

「今まで記憶喪失って嘘ついてたこととか、えっと……と、友達じゃない……とか。それに……、えっと……その」

 だから。謝罪の弁を述べようとした彼女だったが、言葉がうまく繋がらない。頭の中でリストのように整理された謝罪するべき項目が口から出てこない。頭では分かっているのに、言葉にしないといけないのに。

 情けないと彼女は自分に下唇を噛む。言いたいことが言えないのも、言いづらいと思ってしまうのも全て、また自分勝手で自己中心的な考えであると。

 葛藤が、彼女の口を動かそうとしない。

「マフユ、あのさ」

 頭を下げたまま黙ってしまったマフユに、イチが割り込むように言った。

「言いにくいことを言おうとしてるんでしょ。そんな時はね『言いたくないことを一旦無視して、伝えたいと思ったことを言いまくっときな。そしたら相手に全部伝わる、良くも悪くもね』ってばぁば言ってたよ」

「……伝えたいって、思った、こと?」

「おう!」

 顔を上げると、イチは笑って彼女の言葉を待っていた。途端、何を自分は迷っていたのだろうと考えを改めた。そうだった、この男の前では変に考える必要がないことを、つい先日前に痛いほど分かったはずなのにと。彼女は彼の言う通りにするのだった。

「……じゃあ、一言だけ」

「おう」

()()()()

「おう、どういたしまして!これでもう終わりね!」

「ん」

 さらっと、考えるより早く言葉になった感謝の言葉。にっこりと笑って頷く彼にそれ以上の言葉はいらないと、彼女は初めて感じたのである。ポカポカとした気持ちがそのまま言語として伝割るような、不思議な感覚だった。

「……イチは、強いね」

 そう感じた時、口から自然と言葉が出た。言わば、彼女の2()()はコインの表と裏のようなものだ。外面だけの表と、自己中心的な裏。彼女の心に巻かれていた鎖も、言うなれば自身を保つためにコインを裏返すために回された手のようなものだったのかもしれない。

 だからこそ、彼を強いと思った。

「え、僕強い!? 僕強いかな!」

「ん、イチは強いね」

「ふっふっふ! そりゃそうだ、当たり前なんだぞマフユ! だって僕は……あ〜」

「どうしたの?」

「いや、その、あれだよ。その、なんでもないです」

「続けて、はやく」

「あう」

 珍しい、その言葉を待ってましたと言わんばかりに喜んでいたイチだったがすぐに言いづらそうに口を閉じたのだ。マフユは顔を近づけ話を逸らすことができないようにする。イチは諦めたように笑うなよと前置きした上で、

「あの人ならそうするかなって」

「あの人?」

「僕が憧れた人というか、理想にしてる人というかね、その人ならきっとそうするって思ったんだよ」

「……ヒーローのこと?」

「まぁ、そうね」

 どうやら彼の望むヒーロー像は実在するらしい。それに関しては別段驚きはなかったが、それよりも彼の歯切れの悪い様子が気になった。普段の彼ならヒーローという単語が出れば「そう、ヒーローだ!」と聞いてもいない理想像を勝手に話し始めるのだが。

「……どうしたの、話さないの?」

「いや、だって」

「ヒーローの話。聞くよ?」

「でもお前、僕はヒーローになれないって言ったじゃん」

「……あー」

 そこでようやく分かった。この男、以前彼が骨折するきっかけとなった彼女の否定を未だ気にしているらしい。あっけらかんなのか、気にしいなのかどちらか分からなくなってきたが彼の考え方の線はそもそもズレていることを思い出し、

 ーー前向きなのか、面倒なのか。

 似た者同士なのかもしれないとため息をつき、一度椅子に座り直した。

「もう一回聞かせて。ちゃんと聞くから」

「なれないとか言わない?」

「言わない」

「……本当に言わない?」

「絶対に言わない」

「でもマフユってそう言って結構グサッとくる返しするじゃーー」

「早く言って」

 思わず睨んでしまいイチをベッドの端へと移動させてしまったが、これはイチが悪い。しつこ過ぎるのも考えものである。

 急かしされた彼は「じゃあもう言うなよ、絶対だぞ!」と前置きした上で、イキイキともう片方の腕の包帯を外していく。自分で外せるのかと見ていたマフユの前で、イチは天井に引っかかっている包帯を縄として使いその体を起こす。まるで海賊船のメインマストの上で宣誓する海賊王のように立ち上がった彼は、


「僕は将来ヒーローになるんだ!でも、ただのヒーローじゃないんだぞ!

 自分の拳と力だけで戦って、正々堂々と敵に立ち向かう!仲間のことは絶対に裏切らないし、その人が来ただけでみんなを安心させて、敵をすぐに倒しちゃう! 自分もキズつかないで帰ってくるヒーロー! その人がいるだけで全員を安心させられるヒーロー! そんなヒーローに僕はなりたいのです!」

「……ま、イチならなれるんじゃない」

「まじか」

 夕暮れの光を背に、ドヤ顔で告げる彼の姿が最初に出会った時の彼と重なる。何というか、この少年は理屈で考えても仕方ないと思うのだ。

 彼女に認められただけなのにその喜び様はまるで飼い主が帰ってきた時の犬の様。ふふんと、得意げなイチを見て単純な男だと思う。

「よしよし、ようやく僕の凄さがわかったか。あっ、ばぁばに怒られるから左手包帯巻いて」

「ん」

「ふっふっふ、まぁそうだよな毎日遊んでれば僕がヒーローになれるって普通にわかるよな」

「普通じゃ絶対にわからない」

「え、あ、そうなの。 はっ、つまりマフユだけが僕に隠された異能を見抜いて僕の力を見極めたとか!」

「……うん。なんか、そんな感じで」

「嘘だっ! マフユお前ね、流石の僕でも今のは合わせただけってわかるんだぞ! マフユはもっとこう僕の……あれ」

「?」

「そういえば、名前ってマフユでいいの?」

「……?」

 別になんともないはずの腕を包帯で巻きながらいつものグダグダトークに入ったかと思えば、唐突に彼が首を曲げた。話が飛ぶのは彼との会話ではよくある話だ。

「だってマフユって記憶喪失の時のあだ名じゃん。もう記憶喪失じゃ無いんだし、これからはなんて呼べばいいんだろう?」

「……そんなこと」

 彼なりの配慮だったのだろうか、それとも単純に話している中で浮かび上がったのか。十中八九後者だろうが、それに対してマフユは呆れたように呟いた。先ほどからもずっと気にせず名前を呼んでいたのだから、訂正する必要もないかと思っていたことだ。

()()でいいよ」

「え、そのままでいいの?」

「……少しだけ違うけど、呼び方は一緒」

「どゆこと?」

 ただ、ついでだからと彼女は自身の名前を少しニュアンスを変えて伝えることにした。言葉の意味が理解出来ていないだろうが、別に構わないだろう。

 彼女自身がそう呼ばれる意味を理解していれば、問題はないのだ。

「んじゃ()()いいか! お前はもっとこう僕を喜ばせる言葉を選んで言うべきなんだぞ!」

「……例えば?」

「僕のことを『なんでも出来て凄い!』とか『有名人!』とか『アクロバティック!』とか『お金持ってそうな顔してるね!』とか!!」

「イチ、私ね。イチには嘘つかないって決めてるの」

「それ今言うと逆効果なの分かって言ってるよね? 今言ったら僕がむしろ泣いちゃうの分かって言ってるよね!?」

「……じゃ、ゆびすましよ。 私が負けたらイチのこと言う通りに褒める」

「唐突に話を変えますねあなた……でも乗った! 馬鹿だね真冬、僕の片腕が使えない状態でゆびすまなんて! 僕は1つ、真冬は2つで戦うことになるんだぞ! 圧倒的じゃないか我が軍は!!」

「……ん、だから私が勝ったらイチの隠してるトッポちょうだいね」

「はっはっは! 構わんよ構わんよ、僕の宝物コレクションから何かあげるよ! でもこの圧倒的戦力を前にそんなことは夢のまた夢!! 僕のーー」

「長い長い。はやくしよ」

「へい」

 ーー思えば、初めからだった。

 偶々偶然ヤモリに連れられて、森を彷徨った先で見つけた古屋の中で、彼は彼女を遊んでいる仲間の1人と間違えて外へ連れ出してくれた。

 論理的ではない。推測も立てられない。

 それからのことも同じだ。彼の動きも、考え方も、何もかもが分からないまま。

 だからこそ面白いと思った。

 ーー運命って、こういうことを言うのかな。

 だからこそこれからも側で見てみたいと、


 トッポをポリポリと囓りながら思ってみたり。


「ぉぉぉぉおおおお……なんでじゃ、なんでじゃ、こんなのありえないぃぃい」

「……ね、イチ。ヒーローになるって具体的にどうしていくの?」

「え、それ今聞く? 僕をボコボコにしてトッポ3つも奪った上にこれ見よがしに食べならがそれ聞くの?」

「……言ってくれれば、一本あげる」

「目のつく困ってる人片っ端から助けて、学校の悩んでる人を片っ端から助けて、それでみんなの人気者になってから街の助けをする感じです!」

「ん、はい一本」

「ありがとうございます!!」

 主従関係とはこういうことを言うのかしらとお嬢様真冬は思いながら、重ねて具体的ではないとも思う。彼の言っていることはつまり何をしたらいいのかが明確になっていない。だが、これも当たり前だと思う。彼が先を考えて行動するなどあり得ない。

 ーーだから。

「……ボランティアとか、やってみたらいいんじゃない?」

「ボランティア? ボランティアってなに?」

 これは始まる前から大変だと頭を抱える。バカは今始まったことじゃないが、最初にやることはこの少年に自身で考えられるだけの知識を与えることからか。

「あのね、ボランティアっての言うのはーー」

「いや待て真冬、次のゲームだ!僕がそのボランティアってのを当てられたらトッポください!」

「……ん、じゃあ3回までに当てなかったらまたトッポもらうからね」

「よしきた!」

 ま、とりあえず。

 今のところはただ彼とただ無駄にゲームをして時間を過ごすのを楽しんで、

 少しずつ、少しずつ、夢に向かって進めばいいだろうと思う真冬なのであった。

「あぁぁぁなんで、なんで僕の宝物がっ、今まで頑張って貯めて貯めて貯めまくっていた宝物ものが、どうして真冬のものになるのだぁぁあ!!」

「……イチ」

「おぉ、その差し出した手は! やはり真冬さんですわ! 流石に全部は取らないよね、むしろさっき取ったのを返してくれてーー」

「あとの残った3箱、早く出して」

「悪魔かっ!!」

 #####

「本当に面倒ごとを増やしてくれるね」

「……おばぁちゃん」

 病室を出てすぐ、渡り廊下の椅子に巨大の老婆が腕を組んで座っていた。お菓子の箱を両手に抱えた彼女を見つけた老婆はその重い腰を上げ、鋭い目つきで彼女を睨む。

「『ヒーローになれる』なんざ、軽々しく言って欲しく無いんだがね」

「……。」

 ヒーローになるなんて夢、どんな子供でも一度は言ったことがあるだろう。大人なら本音として受け止めることのないような些細な夢のはずだが、老婆は否定する。夢を肯定した彼女に向け刺のある言葉を繋いでいく。

「あのバカは何をしても人以下、何しようとしても、何を学ぼうとしても出来やしない。ヒーローになるって夢も無残に終わるだけさね。だからこそ無理だと強く言ってやる必要があるんだ」

「……それで、イチが諦めると思う?」

「ふん。あんたはまだあのバカと出会って日が浅いから分かってないだけさね。これから先で分かることだよ」

「……?」

 自分の背丈の倍はある屈強な老婆に、彼女は眉をぴくりと動かす。なんとなく腹立たしく思う中で、老婆の言葉の意味を探る。

「あのバカをもっと知れば分かることさ。あいつは、どこまでいっても普通の人間だからね」

「……。」

「このまま夢を追いかければ、いずれ後悔するさね。あのバカの喜ぶ顔が見たいってだけで、根拠もなくくだらねぇこと言うもんじゃないよ」

「……根拠なく言ったわけじゃないよ」

 否定的で威圧的。そんな老婆の言葉を正面から受けてなお、真冬はその目をしっかりと見て自分の言葉を曲げることはなかった。今までの不安げな顔をした彼女ではなく、しっかりと老婆を見て、彼の夢を肯定する。

「ほう、じゃあ聞かせてもらおうじゃないか。あいつがヒーローになれる理由ってやつをさ」

「ん。イチなら絶対になれる」

 根拠はある。彼の才能では難しいという判断は前と変わらない。彼は知恵を使って物事を解決させたり、身体能力で敵を圧倒したりできる様な才能を持ち合わせていない。

 それは変わらない。現実的にありえない。

 ーーわかってる。だけど、大丈夫。


「私がいるから」



「あ?」

「それだけ。……あ、これあげる」

 言いたいことは言った。彼女は老婆の横を、たくさん持ったお菓子を放り捨て通り過ぎる。老婆に何を言われようと関係なかった。彼に感謝を伝えたからといってそれで終わるわけもない。

 まだまだやることは沢山だと、彼女は前を見て歩き進める。

「こりゃ、面倒なことになったね」

 シワだらけの老婆はため息とともに頭を抑え、薄く笑った。

 そして2人は、

「あの、面談時間とっくに過ぎてるんですけど。あとお菓子はちゃんと持ち帰ってくださいね」


「「……あ、すんません」」


 見回りに来た看護師にペコペコと頭を下げトッポを拾うのであった。




 サイカイのやりかた 一章 完






 一章を読んでくださった読者のみなさまありがとうございます。第一章 神童 いかがでしたでしょうか。


 ここまで読んでくださった方、本当に本当にありがとうございます。加えて、初めての感想を書いてくださった岡本さん、2回も感想を書いてくださったカナタさん。何度も読ませて頂きました、ご指摘も頂き作者として嬉しく思っております。また読んで何か感じたことがあれば是非感想をいただければと思います。


 さて、今回は一章最終話と言うことであとがきも少し長めに書きますね。

 (以降は読んでいただかなくても本編には関係ありませんので面倒なら飛ばしちゃってくださいね)


 一章は天才、神童と呼ばれた少女の感情の揺れをテーマにして書いております。少年との出会いだけでなく様々な出会いを経験した彼女ですが、少女が少年に協力しようと心に決めるにはどう言った感情の揺れが発生するのか、どうしたら彼らは繋がるのか、単純でありきたりな展開にだけはしたくなかったので沢山考えましたね、なんとその期間3ヶ月。わお。


 ネタバレではないので書きますが、今回の話の裏でまだ書き出していない感情や人の動きがあったりもします。一章だけでは『?』となる部分が多々あったかと思われますが、話が進んでいくにつれ全てが理解できるようにしております。また読み返していただいたときにあっ!てなってくれれば作者として嬉しい限りです。


 本当に長くなってしまい申し訳ございません。ではまた、二章でお会いできることを楽しみにしております。


……もっと下ネタとかギャグを書きたいな。


ぎんぴえろ

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