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Act.52


「クローム、解呪の話をした事を……覚えているか?」


 俺は地に両手をついて項垂れるクロウドをよそ目に、クロームに問う。


「もちろん覚えているわ」


 クロームはそう言って、コクリと頷いた。


「解呪はその昔、賢者が使ったと言ったな」


 俺はクロームに視線を送ると、肯定してもう一度頷く。


「まさか、サクヤがその賢者だったって言うんじゃないでしょうね!?」


 ミーシャはそう言い、俺を見つめる。


「ああ、俺が賢者だ。……などと、言うわけないだろ?」


 俺はミーシャに言って、クククと笑った。


「……そこは違うのね」


「ああ、残念ながらな。俺は賢者ではなく、魔王の系譜の原点。つまり、魔王の始祖だったのだからな」


「……えっ!?」


 ミーシャは、俺が何気なく言った言葉に、驚きの声が出た。


「それと、もう一つ訂正する。俺は賢者ではなく、()賢者だったのだ。魔王という存在が、いつの時代も悪の象徴だったので、表の顔としてな。」


 魔王が、その正体を隠すために大賢者と名乗った。

 クロームが言っっていた、解呪をした賢者。それは、俺の最初の人生であり、魔王の始祖だったのだ。


「ちょっと何言ってるんだか、分からなくなってきたわ」


 ミーシャは俺の発言に対して、そう言い深いため息を吐いた。


「いずれ、ミーシャには話す事になるだろうな」


 また、時間がある時に、納得するように続きを話せばいい事だ。俺は再びクロウドに視線を戻す。


「いつまで、そうやって地面に向かっているのだ。 俺を殺しに来たのだろう?」


 何を言っても、クロウドは反応しない。奴の持っている、プライドという大きく太い一本の柱。それを壊してしまったのだから、崩れて当然といえば当然か。


 そう思っていると、クロウドは口を開いた。


「……神ガ負ケル事ハ、アリエヌ……」


 クロウドはむくりと立ち上がって、虚ろな目をして俺に言った。

 明らかに様子が違うところを見ると、何かに憑かれたのか、人格が変わったといったところだろう。


「ショックのあまり、我を失ったのか? 今すぐ、楽にしてやるぞ」


 俺がそう言った瞬間、クロウドが目の前に移動してきた。転移魔法のような動きに見えるが、俺が普段から展開している探索魔法には、引っ掛からなかった。

 クロウドは時の力を使い、短距離とはいえ、一瞬で移動したという事だ。


「全テノ力ヲ以テ、汝ヲ根源ゴト消滅サセル……」


 クロウドが声を発したのと同時に、俺に向かって奴の手が伸びる。

 俺は咄嗟に、前世以来使っていなかった魔眼を発動した。

 前世と違って魔眼を使うのは人間の身体だ。防御魔法を展開したところに、普段の鍛錬の成果を加算すると、自らの力には耐えられるくらいになっている筈なので、使うことができると踏んでの行動だ。


 俺が睨みつけると、衝撃波がクロウドに迫る。

 威嚇程度の威力しか無いが、牽制には十分に役立つのだ。


「下手ナ脅シダ……我ニハ効カヌ……」


「そうだろうな。お前はクロウドではない、それ以上の存在であるのだからな」


 俺はそう言って、両腕を組んでニヤリと笑う。


「我ノ正体ヲ知ッテイルト言ウノカ……」


「唆されたお前が、こうして融合した人間の身体を奪うとはな。時の神、クロノス」


 そう……クロウドは持っている力を全て出し切って、俺を殺す事ができなかった。

 そして、奴の高いプライドは崩れ、茫然自失してしまった。


 その心の隙間にクロノスの根源が潜り込んだのだ。

 クロノスは、唆されて融合した際に失った身体の、代わりとなる器を奪取する機会を、虎視眈々と窺っていたのだ。


 時の力を決められなかった時から、クロウドはクロノスによって身体を奪われる事が、決まっていたかのような状態だったのだ。


「コノ時代デ……ソレニ気付ク者ガ存在シタノカ……。……何者ダ……?」


「クロノス……本気で言っているのか? それなら、俺の目を見てくれ」


 俺はそう言い、魔眼にさらなる魔力を込める。そして、目を合わせたクロノスに対して、俺は魔眼越しに記憶を覗き、忘れていた事を思い出させる。


「……!! ……魔王サクヤ…大賢者ロイズ様……思イ出シタ……」


 クロウドの身体を奪い取ったクロノスは、そう言いながら右手に大鎌を召喚した。


「随分と懐かしい大鎌だな。俺の配下だった頃のお前を思い出すぞ」


「大賢者とか、神が配下だとか……。もう、訳が分からないわ……」


 ミーシャは、俺とクロノスの会話についていけなくなったのか、そう言ってクロームを見た。


「そうね……。私もサクヤの本当の過去を知らなかったから、正直驚いたわ……。遥か昔、神話の時代にもサクヤは存在していたみたいね。それも、表の顔は大賢者ロイズ、裏の顔は残虐非道の魔王ロイズとして」


 クロームはミーシャに対して言ったのだが、その話が俺にも聞こえた。

 ほう……クロームは神話の時代の俺を知っていたのか。おそらく名前程度なのだろうが。


「ちょっと待って! あの優しいサクヤが、ずーっと昔は残虐非道の魔王だったって言うの!?」


 ミーシャは今の俺しか知らないので、そう言って驚く。


 俺は魔王の始祖であり、大賢者とも呼ばれていた。その時代の記憶を取り戻していなければ、俺でさえ信じられないないほどの変わり様なのだ。


 ミーシャが驚くのも、無理はない。


「そうだミーシャ。クロームの言う通り、俺が魔王の始祖であり、大賢者だ。当時の記憶を、意図的に封印して消失させたのだ。」


「ソシテ……我ガ……汝ヲ滅ボシタ……」


 俺がミーシャに言うと、クロノスが付け加えるように声を発した。


「そのように見せかけた方が、都合が良かったのでな。ククク……クハハハハ……」


 クロノスが真剣に、過去の俺を滅ぼしたと言ったので、俺はさらに言葉を付け加えて、堪えきれずに笑ってしまった。


「……何ガ可笑シイノダ……?」


「クロノス……お前といい、勇者クロウといい、俺を倒せる……若しくは倒したと思い込む奴しか居ないのでな」


「……!! 我ヲ愚弄スルカ……」


「いや、事実を述べただけだ。信じられないのなら、今ここで俺を倒してみるか?」


 俺はそう言って、クロノスを見てニヤリと笑った。

 だが、クロノスは返事をする事なく、手に持った大鎌を構えた。


「俺は来るものには優しいが、去る謀反者には厳しいぞ?」


 論より証拠か。俺も、クロノスに対して身構えた。

 俺が身構えるのとほぼ同時に、クロノスが地を蹴り、俺に迫ってくる。

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