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3・脅威!ハイダルマリク九十九騎士Ⅱ

 大所帯であればあるほど、ひとりひとりの実力はさして無く、つまりは弱いだろうという偏見。俺にこうした考えをもたらしたのは、これまで討伐してきた匪賊や獣の群れとの戦いだった。

 しかしだ、ライオネス親衛隊にまでその考えを適用したのは正直アホだったと認めるしかない。


 彼らにはまともな脳みそが搭載されている。インテル入ってる。

 順調に人数を減らせてはいるが、バリアーを突破する取っ掛かりを見つける者も現れ、徐々に攻略されつつある状況。

 彼らにこれ以上経験を積まれては、俺さえ知らない俺たちの弱点が暴かれかねない……。


 というわけでね、お遊びの時間は終わりです。戦いらしい戦いを演出するためにワザと接近戦を繰り広げてたんだが、もうヤメだヤメ。リスクヘッジは大事だってCMでも言ってたしな。合理性だけを追求や! 安全圏からの遠距離攻撃オンリーでいかせてもらうぜ。

 戦場にロマンを持ち込むのは、宇宙世紀を駆ける後世の者たちに託した。


 これ以上誰も近づけずに片付ける。

 ボヘ砲ボヘミアンラプソディーキャノンにはその力があるはずだ。


 マジになった俺に――隙は無い!


 ボヘッ! ボヘッ! ボヘッ!


 戦場に響き渡る、放屁にも似た轟音。

 亜光速の衝撃波はこうむる者に反応することすら許さなかった。

 三人の騎士は自分が吹っ飛ばされたことに遅れて気づくことになる。


 演習場に面した壁にぶつかる形で、な‼


「「「ガハァッッ!!!??」」」


 ガハァ頂きました。

 彼らはこれで戦闘不(トウフ)能。なんともあっけない。 

 これで八人。姫さん含めりゃ九人。残るは二人だが……。


 遂に、というべきか。

 静観を保っていた二人の内の一人が、バッとこちらに向かって駆けだした。


 佩剣は腰元の鞘に納められたままだが、手にはしっかりと得物を握っている。

 棒? にしてはあまりに短い。例えるなら刀身の欠けた柄みたいな。何だ何だ。


 いずれにせよ、戦う気概があることは確かだった。

 で、あれば。


「闘争あるのみ」


 豆腐の言うセリフではなかった。いや、今は気にすまい。

 とにかく迎撃。遠距離からの~~ボヘ砲だ‼


 ボヘッ!





「――抜刀」




 パァン‼――破裂音。そして平然と向かってくる騎士。

 マジかコイツ。ボヘ砲が斬られた。


 動揺は無い。なんとなくそんな予感はあった。

 こいつらの脳みそにはインテル入ってるからな。

 しかもこいつだけ武装がユニークときた。ただの無謀な突撃なわけが無かった。


 見よ、奴の手に持つ得物を。

 やはりあれは『柄』だった。

 柄の両端からは、異様な双頭刃が機械機械メカメカと伸びている。

 なんだその絡繰り武器。カッコイイ。くれ。勝利の暁には貰い受ける。


 迫りくるCPU搭載サイバネ騎士、俺とぶつかるまで距離8メートル。

 とりあえずもっかいボヘ砲。

 ボf――パァン‼――だろうね!


 抜群の反応速度。まあそれはいい。奴のスペックが高いってだけだ。

 問題は、滑折歪曲に刃が通ってしまった点にある。技量だけでどうにかされてしまうほど豆腐バリアーはヤワくないはず。だというのに浮力を切り裂かれたのは、ひとえにあの謎の機械剣の力だと思うんだが……どんな原理なんだか。


 それを考察する余裕は、今は無い。

 何故ってそりゃ、すぐ目の前に暴力を近づけてしまったからだね!


 ところがどっこい。

 一気呵成に襲ってくるかと思いきや、意外にも彼は立ち止まったのであった。

 かと思えば、くつくつと笑いだす。ヤダ怖い。子供サイズのマロゾロンドを上から見下ろしながらなので、余計にホラーである。


 どんな奴なのだと顔をよく見ると、灰がかった総髪、艶が失せしわが刻まれた肌――老齢にさしかかった面差し。まあ、半ばジジイと一言で済ませてしまえばいいのだが、俺の語彙力は留まるところを知らないらしい。しわってルビふっといてやったから泣いて喜べ。


 そんなこんなで(どんなだよ)瞳孔を白く濁らせたまなざしが俺を射抜いていた。


「ハイダルマリク九十九ツクモ騎士が第三位――《メテスカテスの操り手》ローエン・ガレモンド=スタナクストラである」


 名乗られた。これはこれはご丁寧にどうも。

 てか何その名乗りカッコイイ。お、俺も負けていられないな。

 えーと、よし、これでどうだ。


「たったひとつの真実見抜く、見た目は子供、頭脳は大人、しかし服装黒づくめ――《メイタンテイコナンの読み手》マロゾロンドだ」

「……ウム」


 頷かれたということは良い口上だったということ。当然だな。

 ショタ需要をかなえる低身長、大人並みに冴えわたる英知、黒衣の愛されコーデ、更にはコナンファンであることまで包括した素晴らしい自己紹介だったもんな。しかも正体を隠しているいうレトリックまで含まれている。

 これを即興で言えてしまうのだから、己のあまりの才覚に震えざるをえない……ぷるぷる。

 《メテスカテス》にたいしての《メイタンテイコナン》……語感までクリソツ――でも無いな。うん、そんなでも無かったわ。猛省。


 てかメテスカテスて何なの?


「メテスカテスて何なの」


 そのまま訊ねてみた。


「これか」


 老騎士ローエンはメカメカとした武器をしげしげと見る。

 俺もその視線に相乗り。その刀身はまるで、芯の入ったウナギのようだった。


「メテスカテスは偉大なる陛下より賜った魔剣でな。元は、かの冒険王が作り出したジンテツの魔剣であると聞く。刀身には怨嗟のルーンと慟哭のオガムが刻まれているのだ」


 誰か通訳を頼む。


「正直にいえば、私にも怨嗟のルーンや慟哭のオガムが何なのかは分からぬ。だが便利なもので、万物を切り裂く力を秘めている。例えば、そうだな……」


 切っ先をこちらへと向けつつ、彼は言った。


「――貴様の防壁も切り裂く」


 刹那、神速の一刀が放たれた。


「――ッ」


 滑折歪曲は、斬られたボヘ砲と原材料が同じ。

 ここでバリアー頼りに鎮座していられるほど肝っ玉母ちゃんではないので必死に回避を試みるが、悲しいかな、鉄拳チンミ愛読者の俺でも完全に回避できず――


 パァン‼

 やはりバリアーは破られ――シュパッ、黒衣の腕部を掠めていった。


 ギリセーーフ! と、思ったのも束の間。

 ハラリ、掠めたところの布がめくれ、豆腐でできている腕が露出した。

 ま、ままっ、マズいッ‼ 


[ ⊙Д⊙]「 (ぷる!???)」


 ビックラコキオが外に顔を覗かせている。

 クソッ、よりにもよってお前かい!

 ノーマル顔なら携帯食料トントロポロロンズだと主張できるが、こいつの顔じゃ言い訳がきかない!


「ちっ!」


 即座に黒衣の弛み部分を寄せ、破損箇所を覆い隠す。

 一瞬だったが、腕は……ビックラコキオは見られたか⁉


 観客どもは――反応なし。目が良い奴いなくて助かったわ。

 問題は目の前のインテル入ってる奴だが……。


「今、青白き肌が見えたが」

「……血色が悪くてな」

「そうか。嘆かわしい」


 疑っている様子は無い。

 CPUが良くてもグラフィックボードが不良品だった模様。

 豆腐だとすらバレなかったようだ。ホッ。


「フム、しかし……今のも躱されるとは、やはり強いな貴様。あのワガママクソったれ女を吹っ飛ばした初撃といい、見事である」


 ワガママクソったれ女とは文脈からしてライオネスのことか。

 テメーの国の王族なのに不敬な奴だ。

 まあそれはおいとくとして、今のセリフからは女々しさがプンプンすんぜ。


「俺を持ち上げても、お前が守れなかった言い訳にはならんぞ」

「……クックッ」


 またくつくつと笑いだす。


「面白き奴」


 笑顔が怖いわ。


「一太刀浴びせるだけで済ませてやろうとしたが、気が変わった。貴様はオレの敵で、しからば闘争あるのみである」


 どこかの豆腐と同じようなセリフである。

 気が合うね。メアド教えろやコラ。

 まあ、気が合おうと合うまいとビックラコキオをビックリさせたテメーはこのマロゾロンドが裁くがな。


近接戦闘(インファイト)で叩きのめす」

「さあ――死合おうぞ」


 我に秘策あり。

 防御無視のチート武器を持っていようが勝てんぜ、お前は。


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