2・因果応報
「全員あの世で、笑いの沸点上げてきな……‼」
なんてですね、えー、カッコつけたところで、ラップやりたいと思いまーす。
Fu!Fu!Fuuu!
戦いを告げる決めゼリ・フゥ!
言ったのは誰だ、トウ・フゥ!
そして放つぜ、カン・フー!!
俺はカンフーを知らんのでとりあえず正拳突きを放つ。
ドグォ!!!――「アオーーゥ!!」
盗賊(二人目)の股間に豆腐の角がヒット。
たまたま近くにいた彼は“フ”しかかかってない低クオリティラップの犠牲となった。
生きてはいるが、死んでしまった。男として。
おお、主よ、【タマの潰れた野郎は善良なるオカマに生まれ変わりますように】
Amen……‼
よし、どんどん行こう。マロゾロンドの脳担当こと俺は、神経パルスよろしく微振動で手担当に挑発するよう伝えた。
一切の遅延無くマロゾロンドの手がクイクイ動き、それに合わせてカマすぜ!
「かかってきなメーン?」
「チッ、ガキにナメられてんぞ! アンディ、お前が片付けろ!」
「へい、頭……!」
盗賊の頭が、強者の風格を漂わせるアンディさんの元へ剣を放り投げる。
え、アンディさんもう手に剣持ってはるで?
――なんて思っている俺をよそにアンディ、二刀目となる剣を華麗にキャッチ。からの二刀流スタイル! なるほど!
アンディさんは二刀の切っ先をこちらに向けて何かを言おうとする。
ポーズがあまりにも某一発屋芸人に似てたからアテレコせざるをえんな。
「て「ゲッツ!」――……あ? 何を言って「ゲッツ!」――てめぇフザけ「ゲッツ!」――…………殺す!」
俺は決してフザけているわけでは無い。
敵のテンポを崩しにかかっているのだ。テンポを支配した者が勝負を制する。
現に、冷静だったアンディさんが激昂して向かってきた。
「るぁッ!」
見た目子供のマロゾロンドに、相手は容赦なく斬りかかってきた。
なかなかの剣速だが、31丁が合体したことにより理論上31倍のスペックとなった俺たちには遅すぎる。
スイスイスイと避けると、相手の剣は宙をスカッスカッスカッ。
野球だったらオメー、空振り三振、打席変わらないとアカンねんで?
そんな俺の思いを無視して、またも斬りかかろうとするので実力行使。
ドグォ!!!――「アオーーゥ!!」
盗賊(三人目)の股間にストライク。
1打席で何度もバットを振るうのはルール違反ですので、球界から追放です。
球界追放ってあれね、タマ有男のタマをなくすって意味です、はい。
「アンディがやられただと! チッ……ウーディ! 次はオマエが行け!」
「へい、頭……!」
次の相手はウーディさん。ウーディさんの武器は……複数枚の円盤?
あ、チャクラムやん。円盤の外側が刃になってて当たるとヤバい奴。
遠くから一方的に投げてやろうって腹か……投手タイプならこちらは打者として受けてたつ。
「ブラザー、力を貸してくれ」
「「「(ぷる!)」」」
俺の合図でマロゾロンドの右腕にいた団員たちがスイ~と左腕につどう。
左腕だけがドンドンと伸びていき、先端が黒衣からはみだして青白き体表を露出するほどの長さとなった。1メートルちょっとぐらいかな?
この左腕、名付けて――
「"角鞭"」
豆腐のぷにぷにとした弾性が鞭のしなりを再現し、インパクトの瞬間には角鞭担当の団員たちが角をたてることで驚異的な威力を発揮する、脅威のレフトアーム。
これがあればチャクラムだって打ち落とせる!
「準備は出来た……来い!」
「ガキぃ、痛い目に遭わせてやるッ!」
右打席に立った俺めがけ、シュパパパパッ――四つの円盤が同時に放たれた!
え、四つ⁉ 四つか……四つは打てそうにない。
襲い来る円盤、俺は特に迎え打つこともなくスイ~と右から左へ受け流す。
そして一気にウーディに迫り、鞭を振るった。
ドグググググォ!!!――「アオーーゥ!!」
盗賊(四人目)の股間にクリーンヒット。
同時に4つ投げるのは明らかなルール違反ですので、球界から追放です。
「ウーディまでやられただと⁉ チッ、ガキだからって甘く見てたぜ。てめぇら、一斉にかかれェーーッ‼」
「「「へい、頭……!」」」
やれやれ、乱闘になるのか。知ってた。野球に乱闘はかかせないもんな。
でも明らかなルール違反ですので、全員球界から追放です。
そして俺はドグググググォした。
* * * * * * * * * *
「クソッ、仲間をオカマにしやがって!」
「残すはお前一人だけだ……覚悟を決めな」
「ああは……ああはなりたくねぇ……‼」
たった一人 槍を構える盗賊の男は、視線を奴らに向けた。
「その言葉、背負い投げ~~」
「槍なんて構えて野蛮よねぇ、どんだけ~~ッ!」
「アナタ、まだ盗賊なんてやってるの? まぼろし~~!」
タマを潰された後、意識を回復し起き上がってきた奴らが続々とオカマさんに転生し、全員良い奴らになった。なのに、一向になりたくないと駄々をこねやがる。
「俺ァ生まれついての悪よ。オカマなんて善良な奴になってたまるかってんだ‼」
「生まれついての悪ってどーゆーこと?」
「え? 生まれついての悪ってのは……ええと、とにかく……悪‼」
なんも考えてなかったんかい! 執行!
ドグググググォ!!!――「アオーーゥ!!」
てなわけで、盗賊退治完了! いや~圧勝でしたわ。くぅ~負けを知りたい!
俺たちってどれだけ強いんだろうか? 敵がアレな奴らばかりで分かんね。
最後の奴も不甲斐なかったしなぁ。
――あ! いきなりですけど、ととのいました。
俺たちと戦う盗賊とかけまして、不甲斐ないとときます。
その心は。
豆腐族に比べ盗賊は、"フ"がいない。
…………なんつってですね、え~、今のネタどうでしたでしょうか?
「流石ですご主人様!(裏声)」
はい、おそまつさまでした。チャンチャン♪
…………もしかしたら俺、疲れているのかもしれないな。街に戻ろう。
ん? オカマさん達が何かやってるな……ああ、チンポコ少年を助けてんのか。
「磔にしてごめんねぇ、今降ろしたげる」
「ヤダ、手首が真っ赤っか! どんだけ~~!」
「精一杯介抱してあげちゃう!」
「うわあああ、よ、寄るな! 誰か! 誰か助け――」
俺たちには関係ないな。かーえろっと。
* * * * * * * * * *
帰り道の途中、俺たちの体はグチャグチャに潰れた。
周囲には誰もおらず、俺たちがただ潰れているだけ。
突然すぎてわけがわからなかった。みんなは生きているだろうか。
「震えてくれ」と声をかけると、全ての断片が震えた。
グチャグチャになりつつも、とりあえずみんな生きているらしい。
ただただ嬉しかった。俺が涙を流せたなら、号泣していることだろう。
みんな、生きていてくれてありがとう。
落ち着きを取り戻した俺は考えた。俺たちがどうしてこうなったかを。
そして思い出す。
あの時は周りに誰もいなかったはずだが、急に体を掴まれた感覚がして一瞬の間に潰されたのだった。
戦士団の全員が、同じタイミングで一気に。
誰かに潰されたのか? だが説明がつかない。俺たちの視界に映らず、子供一人分の体積を一瞬で潰すことなど可能なのだろうか……。
そういえば、デブ医者が言っていたな。
説明のつかないことは魔術のしわざだと……。
犯人は現場に戻ると聞いたことがあるが、あれは本当のことらしい。
「あっけないものね……」
犯人と予想していた人物が俺たちの前に現れた。
マイカさん……‼
ということもなく、普通に魔術師のオネエサン。
ビックラコキオが薬草と間違えて持ってきたあのオネエサンだ。
潰されたのが魔術のしわざなら犯人は魔術師。となれば、犯人候補はオネエサンしかいない。だって俺、他に魔術師の知り合いいねぇもんな。
「…………」
俺たちを見つめるオネエサン。本当に始末できたのか確認しにきたのだろう。
俺たちは恩人といっても過言ではないはずなのに、何故こんなことを……。
聞きたい。でも黙る。死んだフリだ。
生きていることがバレたらトドメを刺されちまう。……ここは忍ぶぜ。
「念のために燃やしておこうかしら……」
…………やっぱこいつ悪魔だわ。
もうオネエサンなんてゼッテー呼んでやんねー。
鬼畜っぽい名前つけてやるわ……そうだな、『レストロオセ』でいいな。
トントロポロンを消す悪魔――イレイス・トントロポロン・オセの略だ。
そんなレストロオセのクソアマ、俺たちに何かふりかけました。
かつおぶし? んなわきゃない……最悪の想定だと、火薬……かもしれない。
燃やすどころか爆破ですわ。
胃袋で食死を目指していたはずの俺たちが爆死……ヒエエエ‼
起死回生の一手、死ぬ気で見つけ出さなきゃマズイ!!!!!




