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2・期待のルーキーは四角い形をしていた

 街からほんの少し離れた荒野の茂み。そこをガサゴソと漁る二人組がいた。

 元Eランク冒険者のジャイオとスネアンだ。


「はっはぁ! ラッキーだぜぇ!」

「ああ。ギルドカードをなくして、Fランクからやり直しかよって思った矢先にこんな大量の薬草だ。ギルドに納品すれば絶対にEランクになれるぜ。俺たち二人ともな!」

「カードが無くなっていたときは不条理を嘆いたが……神様は見てるんだな」


 ああ、見てるぞ。豆腐神マロゾロンドだけどな。

 奴ら、後ろにいる俺たちに気づかないで漁るのに夢中でやんの。

 それは俺たちのもんだっつの。正義の報復を受けよ!


 ドグォ!!!


「がはっ」「ぐぎゃあッ」


 左足担当、右足担当の角を立たせたフライングドロップキックにより、奴らを一撃でK.O.(ノックアウト)した。正義は必ず勝つ!


 偽物の薬草(オネエサン)は逃がしたが、本物の薬草は逃がさんぜ。


 死体のように倒れ込んだ二人は放置し、薬草を回収だ。

 腕を組んで輪っかの形にし、ダボついた黒衣をたるませて袋をつくる。

 そこに一部だけ分離した豆腐戦士たちがポイポイ薬草を入れていった。


 さぁて、マイカさんのとこ行こう。まだ時間的には最速ランク昇格狙えるぜー。

 スイ~。



 * * * * * * * * * *



「Eランク昇格おめでとうございます。私史上、最速記録ですよ」

「普通に依頼をこなしただけなんスけどね。はからずとも一番の男になっちまいました……やれやれ、困ったな。目立ちたくないのに」

「?」

「あ、今のが冒険者の芸風と聞いたもので。それよりどうでした? 薬草の数、すごかったでしょう?」

「ええ。あんなにも大量に持ってこられるなんて驚きました。一体どのようになされたんです?」

「へへー……運が良かったんスよ、運が。ウワハハハ!」

「冒険者に最も必要な資質は運ですから、マロゾロンドさんは大成するかもしれませんね。次の依頼も頑張ってください」

「ウス!」



 はい、Eランク冒険者になりました。

 一日……たった一日でランクアップしてしまった。


 仮に美少女奴隷をはべらせていたら、「スゴいです、ご主人様!」とか言ってくれるほどの偉業だ。「さすがご主人様です!」までは届かないかな? まあ初依頼だったし、しょうがないかな。

 妄想奴隷よ、これからの活躍に期待しな! 「はい、ご主人様!(裏声)」



 さてと。次は明日中までにEの次のDランクまでいっちゃいましょうか。


 決して無謀じゃない。Fランク昇格分の功績ポイントを差し引いた現在のポイントは100ちょっとで、昇格には300必要……残り200。

 少し徹夜しただけで150オーバーのポイントを手に入れた俺なら十分狙える。


 しかも、だ。Eランクから討伐系がドガガッと解放されて、ケッコー自由に選べるようになった。

 狩りの時代が到来したのだ。モンスターを豆腐の角で殴り倒す時代が。

 戦闘に自信はないこともない。やってみるか、討伐依頼。



 なんかいいのないかなーと依頼を見ていると、面白そうなのを見つけた。

 『緊急:盗賊団討伐』

 街道沿いにあるとりでに、最近盗賊たちが棲みついたんだってよ。数は20人以上が見込まれるだとさ。意外と多いな。


 20……俺だけだったら怖くて受けらんないけど、俺たちゃ戦士団。31丁からしてみれば20ちょっとなど恐るるに足らずやね。


 そんでアレだ、功績ポイントは100と結構お高い。

 今日中に盗賊団を壊滅させれば、明日は残り100ポイント分の依頼をゆったりとこなすことができる。Eランクとも一昼夜でオサラバできるって寸法よ。


 っつーわけで。


「受けます」

「この依頼をおひとりでですか?」

「ウス。可能だと判断しました」

「そうですか……私にひきとめる権限はありません。どうかご無事で」

「ウス!」


 かくして俺たちはギルドを発った。スイ~。

 そのまま街の門も通る。お、門番さんだ。


「門番さんチッス」

「……チッス」


 硬派な風貌の門番さんがチッスと返してくれた。

 異世界で流行ってしまうかもしれんな……『チッス』。

 文化侵略してしまってる感あるわ。でもま、言葉の流入くらい大丈夫っしょ。

 気にしない気にしない。スイ~。



 * * * * * * * * * *



 道中はこれといったイベントも無く、すんなりと砦に辿り着いた。

 俺たちは今、砦の裏手にいる。

 壁がデンと立ちふさがっており、この向こう側に盗賊たちがいるはずだ。


 流石にここには見張りを置いてないっぽい。

 壁が外敵をシャットアウトしてくれるって考えなんだろうけど、愚かさ極まれり……俺たち豆腐戦士は壁を登れるんだぜ? 登るっていうか、滑るんだけどね。


 マロゾロンドで壁をスイ~。地面を移動するのと感覚的には何も変わらない。

 いっさい苦労せずに壁の上まで上がった俺は、当然 中の様子をうかがう。


 意外とせまい敷地だな……ここで野球をするのは厳しいだろう。

 ……見えるところには誰もいないみたいだけど、建物の中に集まってるのかね?


 では、入りますか。本当はバラバラにわかれてる盗賊を一人ずつ暗殺していく予定だったけど、問題ない。敵が集まっていようと俺たちの敵じゃない――だろ?


「「「(ぷるぷる!)」」」

「へへっ、行くぜ!」


 スイ~。



 * * * * * * * * * *



 建物の中に入ると、何やら奥の方が騒がしい。

 まだ夕日もさしていない時間にドンチャン騒ぎかい? いいご身分だこと!


 そのドンチャン騒ぎをもっと派手に、血色に染めてやるぜ。

 俺たちは音の発生源へスイ~と向かう。


 そして辿りついた先が……広間だ。

 広間には何十人もの野郎どもがいて、馬鹿笑いが絶えない様子だった。


 何を笑っているのか……奴らの視線の先を見れば予想はつく。

 広間には、チンポコまるだしの少年がはりつけにされていた。

 横にはニヤニヤとしたオッサンが、剣を片手にしゃべっている。


「ちゃんと見てろよ? 剣をむけま~す」

「ひぃッ」

「「「ドヒャヒャヒャヒャ!」」」

「ボウズ、金玉ヒクヒクしてんぞォ!」

「し、してない! お前らなんか怖くないぞ!」

「ホントに? ほーれ」――剣先を少年の足へ向けた。

「ひぃッ」――タマがヒュンと縮み上がる。

「「「ドヒャヒャヒャヒャ!」」」



 …………うーん、面白いかコレ? 実際にやってみたら分かるのかね?


 一番端にいる男のもとへスイ~と忍び寄る。

 今からこいつを使って全員タマヒュンさせてみよう。


「なぁ、ちょっと協力してくれない?」

「あ……え、誰⁉」

「ま、ま、そこは気にスンナ助手よ。ハイ全員ちゅうもーく‼」


 チンポコ少年に向けられていた皆の視線を

 一挙に俺たちのもとへ集めた、その瞬間。


「いっきまーす」


 助手のタマキンめがけ――ドグォ!!!


「アオーーーゥ!」


 白目をむいて鳴く助手。それを見た一同は……


「「「ヒュン!」」」


 全員股間をおさえたのであった。うーん、意外と面白い。

 けど、爆笑するほどでは無いな。奴らの笑いの沸点低すぎじゃね?


「て、敵襲ーーーッ!!」


 さて、戦闘だ。団員諸君、角を構えよ。


「全員あの世で、笑いの沸点上げてきな……‼」

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