覚醒
メージスト帝国編
第6話 覚醒
どれくらい気絶していただろうか、不意に左手に走る激痛で目が覚める。
「くそ、グゥァァアア、イテー。」
うつ伏せの体をあげて左腕を見ると肘から皮膚を突き破って出てきてる骨が見え脂汗が大量に出てくる。意識を何回も手放しそうになりながらアイシャとアデュレイさんがいないか周りを見るがいない。
「アイシャ〜、アデュレイさ〜ん」
呼びかけてみるが周りから返答がない。左腕を守るように前屈みで立つと不意に声がかかる。
「おや?まだ生きてましたか?依頼人には魔力がないから魔力抵抗はしないだろうって聞いていましたが?」
依頼人?男の口ぶりから察するに狙いは俺だろうか?だが、今はそんな事はどうでもいい、俺が気になるのは男の手に持っている人だ。
「貴様、アイシャを離せ!!」
そう男が持っていた者はアイシャだったのだ、その持ち方はまるでゴミでも持っていると言わんばかりの持ち方である。
「あぁ、このゴミのことですか?貴方の知り合いですか?」
男は嫌らしくニヤニヤしながらアイシャのことをみる。
「クソ野郎、殺してやる!!」
目で射殺さんばかりに男を睨む。
「そんな態度を取ってもよろしいのですかな?私の手に持っているゴミを燃やし尽くすくらい造作もないことなんですよ?」
男はまたニヤニヤと嫌らしい笑みを向けてくる。
「やめろ!!」
必死に叫ぶ。
「それが人にものを頼む態度ですか?いささか礼儀にかけるとは思いませんかね。土下座して頼むなら少しは考えてやってもいいですよ?」
男はニヤニヤと笑っている。
俺は腸が煮えくり返る思いを我慢しながら男に懇願する。
「どうか、その娘を殺さないでもらえませんか?お願いします。」
プライドをかなぐり捨てた土下座である。地面に額を擦り付けながら男に殺さないでくれと頼む。
不意に男は土下座している俺に近づいて来て、手が届きそうな位置で止まる。
「やればできるじゃ〜ん。でも、まだ頭が高いか、、な!!」
男は俺の後頭部をグリグリと踏みつける。
不意に俺の後頭部を踏んでいた靴を男がどける。
「まぁ〜いっか、俺は寛大で優しい男だから頭を上げていいよ。」
「ありがとうございます。」
俺は頭を上げる。その瞬間、男が持っていたアイシャが火に包まれる。
「な、、、ん、、で?」
俺は呆然していた。
「土下座をすれば助けると言ったじゃないか!?」
考えの追いつかない頭で吐き出すように男に言い募る。
「勘違いしてもらっては困ります。私は考えてやると言ったんです。誰も助けるなんて一言も言ってませんよ?いいじゃないですか獣人の一人や二人死んだって、逆に感謝して欲しいくらいですよ。」
男は本気でそう思っている口ぶりだった。
「殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる!!」
男に飛びかかるが魔法で強化された蹴りで十メルトル吹き飛ぶ。
「何を熱くなってんだか?はっきり言って不愉快ですよ魔力無しの癖に私を殺そうなどとは?」
男は心底うんざりするような顔で俺を見る。
「冥土の土産に教えてあげましょうか?貴方を殺してくれと頼んだのは貴方の父親ですよ。貴方の父親も可哀想ですよね。貴方みたいな出来損ないが産まれて、貴方みたいなゴミは死んでしまった方がこの世界のためなんですよ。結局、貴方は力がないだから誰も守れない。」
「お喋りはこの辺にして貴方には死んでもらいましょう。『我が意のままに動く燃え盛る炎よその身を持って我が敵を焼き払え』」
「インフェルノ」
三メルトル位ある真っ赤な炎が真っ直ぐ俺に向かって飛んでくるなか俺は睨みながら考えていた。
悔しいが男の言う通りだと思う、力さえ有ればアイシャを守れた、力さえ有れば父親からも見捨てられなかった、力さえ有ればこのクソ野郎を殺せた、力さえ有れば、、、
“力が欲しいかい?”
不意に頭に声が響く。
俺は答える。
『欲しい』
“力が欲しいともっと念じるんだ”
力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!力が欲しい!
”今から言う言葉を右手を前に出しながら言うんだ魔力吸収“
俺は右手を出しながら精一杯腹から声を出す。
「俺に力を寄越せーー!!魔力吸収!!」
その瞬間飛んできていた炎に右手が触れたすると炎は俺の右手に吸い込まれた。
対象からの力の渇望を確認しました。これにより固有スキル『魔力吸収』、『創生魔術』を解放します。
解放に伴い前世での地球の記憶を思い出します。
前世の記憶を思い出しますか?
Yes/No
と言うアナウンスが頭の中に響いていたが、俺と目の前の男は今起こった現象に只々呆然としていた。