第八話
戒翔が宿屋で王国に巣くう者達を倒した頃……
「着いたぞ。此処がリオ様が住まい、その母君…シオン様の統治してあらせられるスペンサー王国だ。」
サラが祐樹ことガイに振り返りながらそう告げる。
「壮観だな~?この門って何で作られてるんだ?」
「ここの門も含めて精霊の加護を掛けた物で建てられているのよ。それに強度の方もそれ用の防御魔術が刻まれているから堅牢な城壁よ。」
裕樹の言葉にリオは淡々と説明する。
「それよりも、あの方は大丈夫なのでしょうか…。」
「俺は逆に件の冒険者達に同情するな~」
リオの言葉に裕樹は後ろ手に頭に手を組みながらそう零す。
「何故ですか?相手は仮にもB級の冒険者の集まりなのですよ!」
そんな裕樹の言葉にリオは噛み付く様に反論する。
「アイツの事は誰よりも知っているから言えるんだよ。もしあんたの話の通りなら戒翔の逆鱗に触れてあの聖霊具で半死半生になってるかもな…って考えていたんだよ。」
「そ、そんな物もあるのか?」
「アレも使いようによっては最悪な責め苦を与える事が出来るけど、基本的な使用用途は封印何だよな…。」
「それが本当なら早く奴らのアジトに行った方が良いかも知れないな…!」
サラがそう言った直後に前方から鎧を着込み帯剣した兵士が数名が道端の路地に曲がって行くのが見えた。
「あの方向は奴らの…!姫様、急ぎます!」
「分かったわ!」
「イヤな予感しかしないな…。」
前を走る2人を見やり、溜め息混じりに自身も現場に向かう。
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「こ、コレは…!?」
「あちゃぁ~、遅かったみたいだな…?」
現場に到着すれば十数人の兵士が建物の前に陣取っており、その中を裕樹達は制止の声を無視して建物内に入ると咽せ返る様な血の臭いが目の前の空間に充満しており、裕樹は手の平を額に当てて軽く息を吐く。
「裕樹?それにサラに…リオは外にいた方が良いかも知れないな…。」
その中に佇み壁に寄りかかる二組の男を見下ろしていた戒翔はその声に振り返る。
「…戒翔、アレを使ったのか?」
「想像以上の屑だったからな…配慮の余地無しと判断して今も精神世界で拷問の最中だ。」
「……まぁ、それは良いとしてこの異様な光景は」
「手下と思われる4人は斬り捨てた。主犯格の2人は精神世界で拷問中。家主達は上の階の隅の部屋にいる。相手はサラかリオで頼む。どちらも女性で屑共に乱暴されたみたいでな…。俺では彼女達のアフターケアは無理なのでな。」
「わ、分かった。姫様、此処は騎士の者達と戒翔殿達に任せて行きましょう。」
「え、えぇ。」
戒翔の言葉にサラはリオを伴い血溜まりを避けて上の階へと行く。
「戒翔、この2人は…」
「Magic&swordのプレイヤーだ。しかも悪質なタイプのやつだ。ローブの方がミトスでそっちの大男がガストって名前だ。」
「ミトスとガスト…?確か闇ギルド【死の森】(デスフォレスト)のメンバーにいた気がしたな…。」
「…そう言えばお前は正規の大型ギルド【聖騎士】(パラディン)でPKの被害を抑えていたな…。」
「で、ミトスとガストは要注意人物に上がってたから名前に憶えがあったけだって。」
「要注意人物?この馬鹿共が?相手をしたが弱かったぞ?お前達正規ギルドの高ランクプレイヤーが一目置く様な奴とは思えんが…」
「見た目と印象ではそうだろうけどな。此奴らは真っ向から来るタイプではなく、搦め手を使うタイプのコンビだったんだ。まぁ、今回は戒翔が正面から来た事にテンパって一網打尽にされちまった訳なんだろうけどな…。」
「つまり、向こうのゲーム内でも同様の事を繰り返していた…と。」
「今回の様に乱暴やそっちの関係は無かったが、他のプレイヤーに迷惑の掛かる行動に手を焼いていたのは事実だ。」
祐樹と戒翔はそう話し合いながら戒翔は血溜まりを魔法で消し去り風の魔法で店内の臭気を清潔な物に取り換え、無機物操作魔法で壊れたテーブルや椅子を動かし、時空間魔法で修復する。
「戒翔殿、この店の店長が話があると…これは!」
「サラか…。このままにしていたら空気が悪いからな、入れ替えさせて貰った。」
「そ、そうか。戒翔殿はその様な事も出来るのだな…。」
「それで?俺に何か用があったのでは無いのか?」
「あ、そうだ。今ので忘れる所だったな…。この店の主のミレイが娘と一緒に戒翔殿に話があるそうだ。」
「…俺に?あれだけ男達に酷い事をされた後だと言うのに俺が行っても大丈夫なのか?」
「その点は大丈夫だろう。母親の方は助けられた事に感謝をしているし、娘の方は戒翔殿の到着が早かった事も有り未然に防ぐことが出来たので安心してくれて構わない。」
戒翔の尤もな疑問にサラは簡単に親子の状態を伝える。
「そうか。祐樹、そこの馬鹿共の事はお前に任せる。操作の言葉は俺の好きな言葉だ…」
「りょうか~い。ユックリしてくれて構わないよ~?」
「阿呆が、ユックリと出来るか。この件は他の奴らもしているかもしれんのだ。他人がどうなろうと構わないが俺達の世界の人間が起こした事は同じ俺達にしか止められないみたいだからな…。|(それに美里がどこにいるかも知りたいしな…)」
戒翔は祐樹にそう言ってサラと共に上の階へと上がって行く。
「…さて、こいつ等から必要な情報を取るとしますかね?」
戒翔が上に行った事を確認した所で祐樹は戒翔の空間鏡掌に掛かり放心状態の2人の前に前かがみになる。
「催眠状態だから誘導してやれば色々と有益な情報も出て来るかもな~」
1人そう笑いながら戒翔から教えて貰った言葉を呟き、祐樹は2人から情報を聞き出すのである。
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