第陸話
「あの…、彼の武器は…」
「戒翔の武器は向こうの戦闘で世界の属性を構成する聖霊とのタイマン…一対一で戦い、勝利して力を示して手に入る武器なんだけどその聖霊も普通の強さじゃなく、化物染みた能力をもっているんだが、戒翔の職業なら可能な戦法で勝利して手に入れた物なんだな。ちなみに限定的な物だから実質的には戒翔1人しか持っていない希少も希少の希少武器なんだな。しかも各属性の武器を手に入れているから状況に合わせて戦闘が出来る万能型なんだよ。」
「そ、それで…あの武器は?見た目は鎌の様な物ですが…」
祐樹の熱が入った説明にサラが若干口元を引くつかせながらも戒翔の肩から現れた漆黒の鎌に目を向ける。
「あれは…闇の聖霊【シャドウ】名の通り闇属性の武器だけど、厄介な能力持ちの鎌で名称はさっきアイツが叫んでいたように煉獄黒鎌って言う。」
「その厄介な能力とは…?」
「見ていればわかるよ。対人戦では無類の強さ…障害物や狭い空間内で特にその真価を発揮するな。」
祐樹の言葉にサラと少女は戒翔の行動に目を向ける。
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「さぁ、戦おうか…森の主、巨大蜘蛛よ!」
戒翔の言葉に呼応して天に向かって震撼するほどの雄叫びを上げる巨大蜘蛛。
「先手必勝!」
戒翔が巨大蜘蛛に向かって煉獄黒鎌を振るう。その軌道上に木があったが気にする事も無く振るうとまるですり抜けるかのようにして木を通過して巨大蜘蛛の8本もある足の一本を斬り付ける。
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「なッ!?木をすり抜けた!?」
「アレの厄介な能力の一つで【透過】。自分の意志一つで斬る物を選択できる訳だから狭い路地や障害物の多い所での戦闘でアレを使われると厄介極まりない代物だな。」
「【透過】…その様な術技があるのは知ってはいましたがこの目で見るのは初めてだな。…確かに障害物や狭い路地に限らず狭い空間内では相手にしたくないものだな。」
「先に言っておくけど、戒翔が持つ聖霊武具はアレだけじゃないからな。どれもこれも廃スペックな物だからな?」
「?…なにかニュアンスが違う様な気がしたのだが?」
「違わないぞ?アレ以上に厄介な物もアイツは所持している訳だからな。」
祐樹の言葉にサラは戒翔と巨大蜘蛛の攻防に意識を集中する。
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「っとと、流石に主と言うだけあってタフな魔物だな。」
戒翔はそう言って弓使い(アーチャー)の技能の一つである看破で主のステータスを見る。
name巨大蜘蛛
攻撃力3000
防御力2000
素早さ4000
魔力1500
特殊攻撃1950
特殊防御2050
特殊能力
粘着糸
ヒットすると基本速度の20%減少の鈍足のバッドステータスの付加。
毒液
ヒットすると1秒間に5%のダメージを受ける猛毒のバッドステータスの付加をされる。解除には解毒薬か毒消しが必要。
産卵
30分置きに配下となる子蜘蛛を20体卵として産卵器官から産み落とす。卵を落ちた瞬間には牛と同等の大きさ(サイズ)に成長する。
音響弱
稀に声を張り上げる。耐性を持たない者は数秒に渡り硬直状態に陥る。
「蜘蛛としての能力をそのままにして巨大化させただけか。しかし、初期の森の主としては強い部類にはいるな。他は簡単に対処出来るが厄介なものとしては産卵か…出現から30分の準備時間で20体も蜘蛛が出て来るのは面倒だな…。アレで一気に決めるか。」
戒翔はそう言って戦士系の技能【ステップ】を使い蜘蛛の前足の振り下ろしを避ける。
「鎌の術技は色々とあるが、基本は薙ぎ払いと石突きなどを加えた連撃だが、巨体の魔物に対してはそれを出来るだけの力が無いと無理だからな…。」
再度、蜘蛛の振り下ろしが襲い掛かって来るが戒翔はそれを半身を反らし、捻りを加えた回転斬りで打ち下ろし終えた前足を刎ねると緑色の液体の軌跡を描きながら真横に蜘蛛の足が落下する。巨大蜘蛛は激痛により劈く様な悲鳴を上げる。
「…ッ【音響】か!無駄な悪足掻きを…!」
戒翔は顔を顰めながらも鎌を水平にして疾走する。
「ゴアァァアァアァァッ!!!」
咆哮を上げたと思えば口と思われる所から青紫色の液体が吐き出されるが、それを横に【ステップ】を使用してさらに走る。
「いい加減にしろよ…!この蜘蛛風情が」
戒翔はそう言って蜘蛛の目前で地を踏み抜き蜘蛛の頭上を飛び越え胴体付近で鎌を大上段で構える。
「魔界の魔爪に斬り裂かれろ!【魔轟乱絶爪】ッ!」
戒翔は叫びながら蜘蛛の胴体に鎌の先端を突き刺すと黒い魔法陣が蜘蛛の足下に現れるとその鎌の先端部を起点として蜘蛛の体が八つに分断され、蜘蛛は断末魔を上げる間もなく巨大な亡骸となる。
「…目標の殲滅を完了。」
その上に戒翔は着地すると鎌を肩に添える様にして収納魔法の応用で肩の部位に仕舞う。
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「凄いです!あの森の主をただ一人で討伐してしまうなんてやはり、異世界人の方は異質な力を持つと言うのは本当なんですね!」
「…戒翔殿、此度の事はありがとうございます。ハウンドドッグに続き森の主の討伐までしていただき。本来ならギルドに依頼している所でした。」
「ギルド?この世界にもギルドがあるのか?」
「はい、世界各地にあるギルドは国によって運営されず国によって決められず数ある冒険者が立ち上げた物が冒険者ギルドです。世界各地に点在するギルドには冒険者達に支持された者がギルドマスターとなります。そして、そのギルドマスターが自分の補佐としての副ギルドマスターが決められます。」
「…向こうと其方ではギルドの立ち上げは違うのだな。」
「勿論、冒険者達の方でも国とギルドが認めれば自分達の私設ギルドが作れます。ですが、それにはいくつかの試験があります。それはそのマスターになる人間の人間性と冒険者としての腕に周りからの評価も加味されます。そして、その後にはギルド連合の方々との面接…それをクリアして初めて私設のギルドを作る事が出来ます。」
「ギルドを作るのはとても手間が掛かるのだな…。」
「それは当たり前です。勝手にギルドを作られても国やギルド連合が認可していないものは発見され次第厳重注意と罰金、悪質な物は投獄される事もあります。」
「なるほど、それなりの対応はすると言うわけだな。」
森の中を歩きながら戒翔と祐樹はサラと少女、名前をリオ・インゴベルト・スペンサー。スペンサー王国の次期女王であり、母方はシオンと言い今のスペンサー王国の現王女である。
「まったく、リオは御姫様だというのに無茶をするのだな。」
「仕方ないじゃない、母様は国の事で手一杯の状態で国の衰退は貴方達の前に来た冒険者のパーティーの横暴で悪化の一途をたどっているの。そこに異世界から来る者の異質な力で国を建て直せないかと思ったの。そこに獣魔の森に落ちた流星と共に貴方達が現れたって訳なのよ。」
「なるほど、この世界の冒険者でも性質の悪い奴もいると言う訳か。しかも国を揺るがせる程の…。なら、国の再建が出来る様になったら俺達にギルドの紹介をしてくれるか?」
「その者達を無力化し、尚且つ捕縛する事だ。6人組みのパーティーだが、どれもB級相当の冒険者であり、街の一角にある宿を根城にしています。」
「そうか…祐樹。」
「はいはい。獲物はお前に譲るよ。」
「祐樹殿?何を…」
サラが意味が解らないよばかりに見るが、戒翔がリオにある事を聞く。
「リオ、スペンサー王国は此処から南西に25キロ行った所にあるわ。」
「南西に25キロか…。」
「か、戒翔殿?」
「少し離れていろ。」
そう言うとリオが離れると戒翔は脚に力を籠めるとそれを一気に解放するとその場から一気にその身を空へと翔る
「なんと出鱈目な…。」
「あれが創造士の凄い所なんだよな…。あらゆる職業の術技が使用可能な上に武器も多種多様だ。」
祐樹はそう言って既に遠くに飛んで行った戒翔の方を見る。
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