幕間五 【画像あり】雨上がりの洗濯物干し
幕間五「純白の結界、あるいは雨上がりの晴天」
フェルナ群島に、五日間も激しい大雨が降った。
洗濯物は乾かない。
修道服は湿る。
替えの服は尽きる。
そして六日目の朝――。
奇跡のような快晴が訪れた。
「晴れましたよリシェル!! 今こそ総力洗濯戦です!!」
女神官剣士として学び始めたからか、なぜか軍事口調を挟みながら、裏口を勢いよく開け放ち、セレディアが大きな洗濯桶を抱えて飛び出す。
その姿を見た瞬間、後ろから出てきたリシェルの動きが止まった。
「……はい?」
数秒の沈黙。
そして。
「ちょっと待ちなさいよセレディアぁぁぁぁ!?」
洗濯ばさみが盛大に宙を舞った。
「な、なんですか急に!?」
「なんで下着姿のままなのよ!?」
現在のセレディアの格好。
純白の下着のみ。
しかも本人は両腕で胸元を隠しながら、耳まで真っ赤だった。
「し、仕方ないじゃないですか……! 本当に乾いた服が残ってなくて……!」
「だからってそのまま出る!?」
「で、でも今干さないとまた雨が降るかもしれませんし……!」
セレディアは半泣きである。
恥ずかしい。
ものすごく恥ずかしい。
だが洗濯しないと着る服がない。
辺境修道院の切実な事情だった。
「や、やっぱり変でしょうか……」
「変というか危険なのよ!!」
しかも今日は快晴。
潮風まで強い。
白い下着姿のままシーツを抱えて走り回るセレディアは、本人の羞恥とは裏腹にやたら目立っていた。
バサァッ!!
「ひゃっ!?」
シーツを広げた瞬間、強い風が吹く。
セレディアは慌てて胸元を押さえ、その場でしゃがみ込んだ。
「だから危ないって言ってるでしょ!?」
「す、すみません……っ!」
本人もかなり必死だった。
だがその必死さが余計に危なっかしい。
「……って、リシェル。あなたも下着姿じゃないですか」
「うっ」
今度はリシェルが固まる番だった。
確かに彼女も、乾いた服がないので白い下着姿である。
「わ、私はいいの! 私は常識人側だから!」
「じょ、常識人は下着姿で裏庭に出ませんよ?」
「それを今言う!?」
互いに真っ赤な顔で睨み合う。
しかし現実問題として、洗濯はしなければならない。
結局。
二人そろって下着姿のまま、慌ただしく洗濯物を干し始めた。
バサバサと揺れる白いシーツ。
飛んでいく洗濯ばさみ。
潮風。
快晴。
「うぅ……恥ずかしいです……」
「だったらもっと物陰で干しなさい!」
「でも日当たりが……!」
「洗濯効率を優先しないで!?」
そんな中、セレディアが不安そうに周囲を見回した。
「……もし島の男の方に見られたら、どうしましょう……」
「今さら気づいたの!?」
リシェルは頭を抱えた。
漁師。
畑仕事帰り。
荷運びの男達。
誰かが偶然通りかかったら終わりである。
「わ、私こんな格好、見られたら修道院から出られません……っ」
「当たり前よ!!急いで干すわよ!」
「は、はいぃ!」
その瞬間。
ガサッ。
近くの茂みが揺れた。
「「!!?」」
二人が同時に硬直する。
静寂。
数秒後。
茂みから飛び出してきたのは――野良ヤギだった。
「…………」
「…………」
リシェルはその場に崩れ落ちた。
「寿命縮んだわよぉぉぉ……」
セレディアも胸を押さえながらへなへな座り込む。
「び、びっくりしました……」
「あ…シーツ巻いて出れば良いんじゃ…」
「…はい……そうします……」
こうして。
真っ白なシーツと洗濯物が潮風に揺れる中、
二人の修道女は顔を真っ赤にしながら、
大慌てで洗濯を終わらせるのだった。




