文字列リボン
何を探していたのか、
忘れてしまったので。
さっきまでいた、
砂場のある公園に、
戻ってみました。
四角い砂場のまわりを、
一周したときです。
文字が一瞬。
顔をのぞかせました。
わたしは。
全力で砂に飛び込み、
両手で掴みました。
ぴちぴちとして。
逃げようとしますが、
力いっぱい引きました。
文字1つと、
思っていましたが。
列になって、ずらずらと出てきます。
夢中になって、引っぱるうちに。
いつのまにか、
砂場が。
ずっと下の方に、
見えていました。
わたしの足もとには。
ふにゃふにゃとした、
白い線路が浮かんでいます。
線路は。
緩やかな滑り台のように、
砂場のそばまで、下りています。
わたしは。
どうやら知らないうちに、
上ってきてしまったようです。
どうぞ、
お気になさらず。
誰かの声に。
後ろを見ますと。
しゃがんでいる、風が。
白いチョークで線路を描きながら、
ちょっと顔を上げました。
きみ。
知っているかい。
これは、いったい。
何だろうね。
さつま芋みたいに、
どんどん出てくる。
何って。
そんなに文字が続くんです。
お手紙でございましょう。
誰あて。
だろう。
風は首を振り振り、
描き続けます。
うっかりやな、
あなたさまが。
帽子だの、
しおりだのを。
わたくしに、
吹き飛ばされたとき。
いつも。
すい、と。
伸び上がり飛び上がり。
掴んでくれたかたが、
ありましたでしょう。
せっかくですから。
あなたさま、ご自身で。
お届けになるのが、
よろしいかと。
いたずらの、
お詫びも兼ねまして。
こうして一生懸命に。
道すじを描いているのです。
あ!
最後まで。
出てきましたよ!
すっかり引き上げられた、文字列は。
細いリボンのように光りながら。
長く長く、宙で波うちます。
払われる砂が。
明るく、ちらちらと。
飛んで行きます。
風は中腰になり。
その様子に見惚れていましたが、
急に勢いよく言いました。
ようし。
わたくしは、
先を描きながら。
あなたさまに、
しっかりと。
お供できるよう。
しっぽのところを。
ふわふわとした、
水色の座席型に、
整えましょう!
わたしは。
できたての席にからだを沈めて、
包まるように落ち着くと。
伝え忘れていたことや。
それを届けたかったことを。
ようやく思い出しました。
さ。
まもなく、
出発いたします。
文字列を掲げて。
参りましょう!
おう!
わたしは文字列をしっかりと掴んで、
手を上げました。
風はチョークを持っている手を、
高く上げました。
とても滑らかに。
わたしたちは進んで行きます。
文字列リボンは日を浴びて。
流れのように、輝いています。
2024.12.29
ここまでお付き合いいただきまして、
まことにありがとうございます。
完結いたしました。
ep.148 のタイトルを間違えました。
大変失礼いたしました。
冒頭 → 冒険 です。
ぼ、冒頭?
汗噴き出す。
他にもありましたら、
お許しください。
373 m(_ _)m 39




