第13話 キラービー(後編)
此処でもライトは、才能の片鱗を見せる。
あの技を見てから、ずっと考えていた。
直進と円。
百花繚乱は、前に進みながら剣で円を描き、無数の花の様に、軌跡を見せていたのだ。
だが、その速度は並大抵ではない。
残像が残るほどに早く動く剣。
僕に出来るのか?
今の僕にミーサさんと同じだけの手数が出せるか?
しかし、ライトに他には手立ては無く、やるしかなかった。
一度しか見た事のない技。
技と技がぶつかる瞬間。
その衝撃と、ミーサが百花繚乱を出した際に出来る一瞬の間。
その時にミーサを捕まえるしかない。
僕はスキルに肉体強化、剣技、回復魔法、治癒魔法をセットした。
多分、数秒も無かった時間。
走馬灯の様に、ゆっくりとした時間に思えた。
次の瞬間、ミーサが技を出す。
「百花繚乱!!」
くそオオオオオオ!!
見様見真似でライトも技を出した!!
「百花繚乱!!」
ライトは分かっていた。
本家には全く及ばないだろう技だが、必死に体を動かす。
ぐううウウウウ
「右手首と右腕があああああ!」
今までにない動きに体が悲鳴を上げている。
だが諦めるわけにはいかない。
彼女を助けるんだ。
その思いだけがライトを支えた。
ガキン!
ガキン!
ガキン!!
ドガアアアア!!
剣と剣が凄まじい音を立ててぶつかった。
げふうう!!
ライトの右手首が、右腕、右肩、右脇腹、右足に激痛が走る。
ダメージが右側に集中していた。
口の中には鉄の味が溢れてくる。
歯を食いしばった。
まだだ。
これで終わりじゃないぞ。
僕は次の瞬間、数メートル先のミーサの元へ、左足で地面を蹴った。
その数メートルがとても長く感じる。
僕は左手をミーサに向けて走る!!
後3メートル!
2メートル!
1メートル!
捕まえた!!
ぐわああ!
もう右手は使えなかった。
伸ばしていた左腕でミーサのお腹を抱える。
ここからが本番だ!!
だが抱えているミーサが暴れる。
「離せ、捕まるかあ!!」
「ミーサさん。ちょっとだけ。じっとしていて下さい。今、助けるから。」
ライトは優しくミーサに声を掛けていた。
今まで使った事がはない治癒魔法を発動する。
出来る!
出来る!
出来る!!
昨日の夜、ずっと寝れない時にイメージを繰り返した。
体を綺麗にするイメージ!!
頭からシャワーを浴びるイメージで!!
上から下に流れるイメージ!!
悪い物を中から押し出して、外に出すイメージ!!
ライトは何回もイメージを繰り返した。
「ミーサの体から毒よ無くなれ!!」
僕は暴れるミーサを必死に抑えた。
そして全身に流れる魔力を、イメージしていたシャワーを浴びせる様に、ミーサの頭上から注ぐ感じが伝わる。
僕が頭上を見ると、ミーサの頭からシャワーの様に光が注いだ。
「離せ、離せ、はな、......。」
暴れていたミーサの力が弱くなってきた。
「ミーサさん。もう少しだから。もう少し、もう.....少.....し。」
「ライト?。ライト、どうして此処に?。此処は?」
ミーサは我に返った。
そして思い出した。
「私はキラービーと戦って、......。」
「ミーサ。正気に戻ったか?」
「ゴードン。ガンドウ。どうして此処に?」
「説明は後だ。ライトがヤバイ。ライトの袋の中にある魔力回復を飲ませろ。」
「分かったわ。」
ミーサは僕の肩から下げていた袋に手を突っ込んで、瓶を取り出し僕に飲ませた。
げふっ、げふっ!!
うう、あっ!
「ミーサさん。無事ですか?」
「あんたの方こそ、ボロボロじゃない。」
「へへへ、スイマセン。」
右半身に、激痛が走る。
ぐわああ!
「ライト。しっかりして。」
「だ、大丈夫ですよ。」
僕はもう一つイメージしていた。
それは回復魔法を掛けるイメージ。
弱った体を元気にするイメージ。
怪我のない綺麗な体のイメージ。
元気に走りまわるイメージ。
僕はまた、全身に流れる魔力を、イメージしていたシャワーを浴びせる様に、自分の頭上から注ぐ感じが伝わる。
次の瞬間、僕の全身が光輝いた。
ふううう!
「助かった。」
「ラ、ライト。貴方、中級の回復魔法何て、何時の間に。」
「えへへへへ、出来ちゃいましたね。」
「お、おい。こっち来て手を貸してくれ。」
キラービーは、未だに此方に向かって来ていた。
「どんだけ居るんだよ。」
「ゴードン、ガンドウ。今行くわ。」
「ライトは此処で休んでいて。」
ミーサが加わり、三人でキラービーを狩る。
しかし、それでも一向に減らなかった。
くっそう!!
「キリがないぞ。ゴードン、どうすんだ。」
「昨日も数えきれないぐらい倒したのよ。」
「おかしい。あの巣の大きさからして、この量ならとっくに全滅している筈だ。」
僕はキラービーの流れを見ていた。
確かに、巣から出て此方に来ている。
それ以外に来ている事は無い。
言われた通り、巣の大きさからしても、死骸の量が合わない。
もしかして木の中にまで広がっているんじゃ、.....。
「ゴードンさん。キラービーって木の中にも、巣を作ったりしますか?」
「ああ。確か中をくり抜いて作るって話を聞いた事があるよ。」
「ライト。木の中まで巣だって言いたいのか?」
「そうです。量からして確かにおかしいですよ。」
「どうすんだ。ゴードン!!」
「やっぱり、エリンを連れて来るんだったよ。火属性の魔法ならな。」
そうか。
確か火属性が効くって、言っていたよな。
「ゴードンさん。火属性の魔法なら効くんですよね。」
「ああ。一気に焼き払ったらお終いだ。」
「ゴードンさん。それを僕にやらせて下さい。」
「どうするきだ。ライト君。」
「ちょっと、時間を稼いでもらえませんか?」
「分かった。何時までもつか分からないぞ。」
僕は魔法のイメージを始めた。
火、火、火のイメージ!
何かいいもの無いのか。
そうだ。
確か昔に見た映画のイメージか。
ガソリンスタンドで、シュワちゃんがノズルからガソリンを出して、葉巻で火を着けて火炎放射していた筈。
燃えるイメージ!
ボワ~と手から火を出すイメージ!!
出来る、出来る、出来る筈だ!
僕はじっと手を見つめた。
火を出す。
直線で火を出す。
火だ。
火だ!!
僕は全身の魔力を手に集中する。
魔力が全身を回り手に集中させるんだ!!
そして手の先から、火を出すイメージを続けた。
「ゴードンさん、ガンドウさん、ミーサさん。行きますよ。」
「ら、ライト。行くって?」
「いいですか。僕が走ったら退いて下さい!!」
「火炎放射~~~!!」
で、出た!!
ライトの手から火の柱が真っすぐ前に出ていた。
三人は、茫然と僕を見ていたが。
僕は三人の方へ走った。
三人が慌てて退いた瞬間。
此方に向かって来ていたキラービーは、そのまま真っ直ぐに、僕の方へ進んで来る。
僕はお構いなしに、向かって来るキラービーを焼き払いながら、更に巣に向かって走った。
ブワアアアアアアアアアアア~!!
僕の手から数メートル先まで火が走る。
炎に当たりキラービーが焼けて落ちていく。
僕は走った。
一心不乱に、手から火を噴きながら走る。
だが、巣の直前に来て目眩がした。
「不味い。魔力が、....、。もう少し、もう少し!!」
駄目だ。
もたない。
僕は、右手で火を噴きながら、左手でカバンを漁った。
「よし。魔力回復薬。」
僕は薬を一気に口に入れた。
目眩が収まった。
その時、僕は既に巣の直前まで来ていた。
どうする?
僕は其のまま巣が乗った枝まで飛んだ。
そして巣を蹴り落した。
「在ったぞ。やっぱり!」
思った通り巣の奥は、木に開いた穴に繋がっていた。
そこから今にも飛び出しそうなキラービーを焼き払いながら、僕は穴に手を突っ込んだ。
「いけええええええええ!!」
ゴオオオオオオオオオオオオオ!!
ライトの手の先から出た炎で、木の中が火が満たされていく。
プスッ!
プスッ!!
徐々に木の至る所からプスプスと言う音と、煙が出てきた。
「こ、これでどうだ!」
僕を追って後から、三人がやって来た。
ゴードンさんが、僕の肩に手を置いた。
「ライト君、やったな。これだけ焼き払えば大丈夫だろう。」
「ライト。ありがとう。」
ミーサさんにお礼を言われて照れ臭かった。
「それにしても。ライト。お主は凄いのう。」
がはははははははは!!
だが安心して僕達も異変に気付いた。
ん?
「何だ?」
グラッ!
グラッ!
バキッバキッ!!
僕達の目の前にある気が、大きく揺れた。
「ええ、どうした。木がもたないのか?」
「やばいぞ、離れろ!!」
僕達は慌てて木から離れようとした。
バキッ!
バキッ!
バキッ、バキッ!!
ドオオオオオオン!!
僕達が木から離れた瞬間に幹が裂けた。
ギギギギギギギギギギギギギ~!!
「な、な、何だ。あれは!!」
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