第12話 キラービー(前編)
僕とゴードンさんが南門へ行くと、ガンドウさんが待っていた。
「ガンドウ。待たせたな。」
「おお、ゴードン。おや、ライトじゃないか、どうした?」
「あの、ミーサさんが危ないって聞いて、付いて来ちゃいました。」
「ゴードン。いいのか?」
「ギルマスにも連れて行けって言われたんだ。仕方ないだろう。」
「ギルマスがか?」
ははははは!
「ライト。ギルマスに気に入られてんじゃねえか。」
「ライト君。本当に気を付けてくれよ。」
「はい!」
「とりあえず南の森の入り口を目指そう。」
「ライト君。走れるかい。」
「はい。大丈夫だと思います。」
「何なら。また、おぶってやるぞ。」
「大丈夫です。とりあえず自分で走ります。」
僕はスキルに、肉体強化をセットした。
僕達三人は、街道を急ぎ南の森へ向かった。
そして南の森に着いた頃には、既に日は沈み夜になっていた。
「此処が南の森ですか?」
「そうだよ。この奥に依頼の場所があるんだが、.....。」
「ガンドウ。どうする?」
「そうじゃのう。今日は此処野宿して、朝に森へ入った方がいいんじゃないかいのう。」
「そうだな。よし、ライト君。今日は此処で野宿するよ。」
えええ~!
「そんなんで大丈夫なんですか?」
「心配そうだね。キラービーって奴は、夜間は活動しないんだ。だからミーサも、今は何処かで休んでいる筈さ。」
「分かりました。」
「だけど日が昇れば、また活動を再開する。もし襲われていたとしたら、既に匂いを付けられて、キラービーを呼び寄せてしまうだろう。早く見つけないと。」
「そうなんですね。じゃあ、明ける前に出発ですね。」
「そうだな。」
僕達は南の森に少し入って、その先に在った開けた場所で野営をする。
ガンドウさんは、直ぐに焚火をしてくれた。
「じゃあ。交代で見張りをしようか。今日は三人だから、ライト君も頼むよ。順番は何時がいい?」
「僕は先に見張ります。」
「そうかい。宜しく頼んだよ。何かあれば直ぐに起こしてくれよ。」
寝ろって言われても、寝れなさそうだった。
「ミーサさん。何処に居るんですか。無事なんですか。」
どうして僕は、こんなにも気になるのか。
僕は思った。
ミーサさんが居なくなったら、もう会えなくなったら。
そんな事を考えたら、居ても立ってもいられない気分だった。
どうして?
どうして?
ドウシテ?、........。
初めて会って美しい人だと思った。
強いと思った。
優しいと思った。
努力している人、意思の堅い人、思いやりのある人、素敵な人。
憧れ、大切な人、好きな人、.....、そうか。
僕は、......。
ミーサさんに一目惚れってやつなのかな。
だから、.....、だから守りたい、夢を叶えてあげたい。
大切にしたい。
そんな感情が有るのが分かった。
「もし襲われていたとしても、きっと僕は助けて見せる。」
そんな事を考えていたら、眠気もおきずに、もう夜明け近くになっていた。
あっ!
「いけない。交代しなかったな。」
「ライト君。交代しなかったのかい。」
ゴードンさんが、起きてきた。
「すいません。眠気も無くて、交代とか出来なかったですね。」
「僕達は休めたからいいけど。ライト君は大丈夫かい?」
「はい。大丈夫です。」
「ならいいけど。軽く食事をしたら出発するよ。キラービーが起きる前にね。」
「はい!」
僕達は準備を進め森に入った。
そして薄暗い森の中を進んで行く。
しばらく進むと薄っすらと、日が差し始めた。
「もうそろそろ地図の地点なんだがなあ。」
ミーサの姿は其処には無かった。
「まだキラービーは動かないだろう。3人で手分けをして範囲を広げよう。」
「ライト君は大丈夫かい?」
「はい。でも何かあったら、どうやって知らせるんですか?」
「これを使って。」
ゴードンさんから渡されたのは、花火の様な物だった。
「ここを擦ると先から光の球が出るから、上に向かって打ち上げて。」
「分かりました。」
そして僕達は三方向へ分かれた。
僕は進んでいた方向へ真っ直ぐ進んだ。
しばらく行くと、開けた花が咲いている場所出た。
へえ~!
「森の中にも、こんな場所が在るんだ。」
その場所を見渡したけがミーサの姿はなかった。
更に進もうとした時、僕は気づいた。
「草と花が折れてる?」
誰かが通った後だ。
ミーサさんかもしれないし、違うかもしれない。
花が咲いているのが折れているという事は、新しい痕跡。
僕は先ほど貰った花火のような物を使った。
上に向け下に付いた紙やすりの様な箇所を、合わせて擦る。
「やっぱり花火の一種なんだ。」
シュルルルルルルルルル~
パシュウウウウ!
10mぐらいだろうか。
光の球が打ちあがり破裂した。
直後に二方向から気配が近づいて来た。
「ライト君。どうした?」
「これを見て下さい。誰かが通った後です。」
「そうだね。良く気付いたね。地図の位置から、こっちに来たとすると更に奥か。」
僕達三人は、更に奥に進んだ。
時間的にも辺りは、大分、明るくなってきていた。
「川の音が聞こえますね。」
「ちょっと待て。あそこを見ろ。」
ガンドウさんが指さした方向に、この辺では一番大きい木が在った。
そしてその枝の根元に、大きな丸い物が乗っていた。
「あれが巣だな。」
それはスズメバチの巣にそっくりだった。
だが前世で見た巣よりも、数倍も大きなものだった。
その周りには、巣を出て何匹かの蜂が飛んでいた。
「不味いぞ。早くミーサを見つけないと。」
「あれを見て下さい。」
其処には小さな瓶が落ちていた。
「あれはミーサが持って行った毒消しの瓶だろうな。」
「おい。あそこにも在るぞ。」
それは川の方向に向かった先に落ちていた。
「これだと、多分、川の方向へ行ったな。」
僕達はキラービーに注意しながら、大きく迂回し川の方へ行った。
「おい。あそこの川の手前にも一本あるぞ。」
これで三本。
「不味いぞ。三本目を飲んでるのか。」
「三本飲んだら、駄目なんですか?」
「一日で飲める量が三本なんだよ。それ以上は飲んでも、効果が少ないんだ。もしそれ以上必要な場合は、治癒魔法を使うしかなくなる。」
その時、川の方から人の声と音がした。
「ミーサだ。急ぐぞ!」
僕達は地を蹴った。
河原に着くと、ミーサがキラービーと戦っていた。
「マジかよ。」
ミーサが居る所から森に向かって、無数の大きい蜂の死骸が落ちていた。
「あれだけ倒して、まだいるっていうのか?」
「ミーサ。ミーサ。助けに来たぞ。」
ミーサに声を掛けるが返事は無く、ミーサは戦い続けていた。
「おかしい。聞こえない筈がないのに。」
僕達が近づいても、ミーサは分からないようだった。
「ミーサさん。僕です。ライトです。助けに来ましたよ。」
うわああああああ!!
それでもミーサは戦っていた。
くそっ!!
「やっぱり、エリンを連れて来るんだった。」
「まだキラービーが来るぞ。どうする?」
「ゴードンさん、ガンドウさん。キラービーをお願いします。ミーサさんは、僕が何とかします。」
「でも、ライト君。治癒魔法を掛けないと、君もミーサに攻撃されるかもしれないぞ!」
「大丈夫です。何とかします。」
「分かった。じゃあ、こっちは任せてくれ。」
そう言うと、ゴードンさんとガンドウさんは、森とミーサの間に割り込む位置に入りキラービーを迎え撃った。
僕はミーサさんの近くへ向かった。
「ミーサさん。僕です。ライトです。助けに来ましたよ。」
ミーサに声を掛けるが、やっぱり分かっていないようだった。
どうする?
どうする?
どうすれば。
一か八か治癒魔法を掛けるしかない。
うわああああああ!!
ミーサさんが、僕にも剣を向けてきた。
「まじか~。僕にも剣を振るって!」
シュッ!
シュシュッ!!
「ミーサさん。僕です。ライトです。助けに来ましたよ。」
「うるさああああい。幻覚に何か負けないわ。」
うわあ~
勘弁して。
本気で剣振ってるよ。
くそっ!
仕方なく僕も剣を抜いた。
キイイイイイイイイン!!
剣と剣がぶつかった。
僕は鍔迫り合いの最中、一瞬、二人の方を見た。
襲ってくるキラービーを、ゴードンさんは細い両刃の剣で真っ二つに、切って落としている。
ガンドウさんはどうやってと思ったら、自分の前に土属性魔法で石の壁を出して、持っていたハンマーでそれを叩き壊し、無数の石の弾丸を飛ばして撃ち落としていた。
スゴっ!
僕は思わず声を出した。
ミーサさんが鍔迫り合いから、瞬間引いて無数の突撃を放ってきた。
「不味い!」
僕は必死に食い下がる。
キン!
キン!
キキキキン!!
があっ!
幾つかの攻撃をかわしきれずに、腕や腿、腹に喰らってしまう。
「ミーサさん。僕です。ライトです。助けに来ましたよ。」
何度も声を掛けるが聞こえていない。
そして何度か鍔迫り合いから、瞬間引いて無数の突撃があった後、またと思った瞬間、ミーサの構えが変わった。
「不味い。あの構えは百花繚乱を打つ気だ。」
くっそう!!
今のままではかわせない。
どうする?
どうする?
どうする?
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