第11話 ミーサの遭難
「ああ、そうだ。ミーサ。ちょっと別件で依頼を受けてくれないかい。」
「何ですか。急に。」
「どうも南の森でね。キラービーを見たって話があってね。調査して欲しいんだよ。」
「キラービーですか?」
「もしかして巣でも出来てたら大変だろう。早めに対処しないといけなくなるからね。」
「分かりました。直ぐに出発します。」
「スマンね。天空のメンバもみんな別件で出払っておるし、Bランク以上で直ぐに動けそうなのは、お前さんだけなんだよ。でもいいかい。無理するんじゃないよ。麻痺には強いかもしれないけど、毒には弱いんだからね。」
「分かってます。」
「カペラには言ってあるから、声を掛けてから行っておくれ。」
「はい。」
「ミーサさん。じゃあ、これが地図です。」
「また街道より、随分と奥ね。」
「そうなんです。大変ですけどお願いします。それとこれ。」
ミーサはカペラから毒消しを3本渡された。
「これは?」
「ギルマスが、万一の為に渡しておけって言われて。」
「そう。ありがとう。じゃあ直ぐに向かうわね。」
「気を付けて行ってらっしゃい。」
ミーサはギルドを出ると、南門を抜け街道沿いに進んでいく。
街を出て2時間。
肉体強化を使って飛ばしてきたおかげで、南の森が見えてきた。
「あそこね。」
ミーサは森の入り口で、一旦止まった。
地図を取り出し場所を確認する。
「此処からまだ大分、奥ね。」
魔物が出る恐れがある為、歩きになる。
更に、1時間。
ようやく、地図で示された場所までやって来た。
「この辺よね。」
ミーサは周りを見渡したが、それらしき姿は無かった。
「もうちょっと奥かしら。」
其処から、更に奥の方へ進んで行く。
しばらく行くと、森の中にぽっかりと開いたスペースが在り、日差しが差し込んで一面に花が咲いていた。
「綺麗な所ね。」
誰にも荒らされていない自然の花畑だった。
その時ミーサは気配を感じ剣に手を掛けた。
腰を沈めて気配の方を見た。
其処にはキラービーがいた。
ミーサは落ち着いてもう一度見ると、それはハニービーだった。
ハニービーは同じ蜂だが、花の蜜を集めて生活している虫だった。
「何よ。報告者も間違ったんじゃないの。」
そう思った時、空中から羽音が聞こえた。
ビイイイイイイイイ!!
ミーサは音が聞こえる方向を見た。
それは紛れもなくキラービーだった。
ミーサがキラービーを目で追うと、キラービーは先ほどのハニービーを襲い、咥えて連れ去った。
「ハニービーが狙いか。何処まで連れて行くきかしら。」
ミーサはキラービーを追った。
森の中に入ったキラービーは、先ほどよりも、もっと奥に入っていった。
しばらくミーサが追うと、奥の方から川の流れが聞こえてきた。
「川に向かうのかしら。」
更に追って進むと、樹木の先に川が流れていた。
ミーサはそこで立ち止まった。
川の手前。
何本もの大きな木ある。
その中でも一番大きい木。
その一番下にある太い枝の上に、それは在った。
「キラービーの巣ね。かなり大きい巣だわ。早く戻って知らせないと。」
ミーサは経験上、今までに見た事も無い大きさの巣を見て焦った。
その焦りが失敗に繋がった。
引き返そうとした足が落ちていた枝を踏んだ。
バキッ!
音を鳴らした。
ビイイイイイイイイイ!!
羽音が周囲から聞こえる。
キラービーは警戒心が強く、巣の周辺には警戒用のキラービーが見張っているのだ。
警戒音を聞いたキラービーが巣から出てくる。
しまった!
だが既に、周りには何匹ものキラービーが飛び回っていた。
ミーサは、剣を抜いた。
シュッ!
シュシュ!!
近くで飛んでいたキラービーを切り落とすが。
数匹を落とした程度では、収集がつかない程、集まりだしていた。
ミーサの周りに、集まったキラービーが羽音をさせ飛び始めた。
ミーサは走りながら遠ざかろうとしたが、既に囲まれていた。
「これじゃあ駄目ね。」
ミーサは近づいてくるキラービーを切り落とす。
「さあ、いらっしゃい。少し遊んであげるわ。」
ミーサは麻痺耐性が有る為、ある程度は戦えると思っていた。
普通であれば。
だが、.......。
その日の夕方、ライトは何時もより遅い時間に、ギルドに戻った。
「今日は色々在ったなあ。技の事を考えたら、こんな時間になっちゃったよ。」
カウンターの方を見ると。
あれ!
「ゴードンさん?」
僕はゴードンさんに近づいて挨拶をした。
「ゴードンさん、こんにちわ。この間はありがとう御座いました。」
「やあ、ライト君。元気かい。」
「はい。あれから出来る事からやってます。ミーサさんと訓練もしてるんですよ。」
「そ、そうかい。」
んん?
ゴードンさんの態度、何か引っかかるなあ。
それにカペラさんと深刻そうに話をしていたし。
「何か在ったんですか?」
「あ、いや。何でもないんだ。」
ゴードンさんとカペラさんがひそひそと話をした。
「ライト君。君は僕達と縁があるからね。ちょっと話しておくけど、ミーサが不味い事になった。」
ええっ!
「ミーサさんが?」
「ああ。僕もさっき別件から戻ったんだけど。どうも南の森へ調査に向かったらしいんだ。キラービーって言ってね。肉食の蜂の調査だそうだ。」
「肉食の蜂ですか?」
スズメバチみたいなもんかなあ。
「報告通り発見して巣まで見つかれば、そのまま戻れば済むんだけど。もし巣に近づき過ぎて見つかると、襲って来るんだ。まあミーサなら麻痺耐性もあるから、大丈夫な筈なんだけどね。それが今の時間でも戻らないって言うんで、何か在ったんじゃないかって。」
「大丈夫なんですか?」
「一つ悪い可能性は、通常のキラービーの攻撃は麻痺毒で相手を弱らせるんだけど、稀にその中にメスがいてね。メスは幻覚性のある毒を持っていて、それに刺されると、蜂が何倍にも増えて見えたり、他にも自分が嫌いなものだったりが、見えるって話なんだ。」
「幻覚って。その後どうなるんですか?」
「そうすると体力が減って、力尽きるまで戦う事になる。一応、毒消しを持たせたって話なんだけどね。」
「これからどうするんですか?」
「今から動けるのは、僕とガンドウだけなんだけど。二人で向かおうかと相談していたんだ。本当はエリンがいれば、火属性の魔法が使えるんで、有効なんだけどね。」
「火属性か、......。」
「あの。僕も連れて行って貰えませんか?」
「ライト君。君はまだEランクだろう。キラービーは最低でもDランクだよ。それに今回は巣がある可能性があるから、Cランク相当で特別に認められないと無理だよ。」
「そうよ。心配なのは分かるけど、今回はゴードンとガンドウに任せて。」
「でも、ミーサさんには、ずっとお世話になっているし、何かしたいんです。」
フォッ、フォフォフォ!
「連れ行っておやり。」
「ギ、ギルマス!!」
「ギルマス。いいんですか?」
「構わんよ。私が責任を持つから、連れて行っておやり。」
「ギルマスが認めるなら。本当にいいんですね。ギルマス。」
「ああ。あんた達と小僧は何かの縁なのかねえ。行っておいで小僧。」
「分かりました。じゃあライト君。直ぐに行くけど、準備は大丈夫かい。」
「大丈夫です。借りものですけど。装備もしているので。」
「よし。ガンドウは先に南門で待ってるから行こう。」
「ちょっとお待ち、小僧。これを持ってお行き。」
ギルマスが僕に放って寄こしたのは2本の瓶だった。
「それは魔力回復。ギルマス。いいんですか?」
「カペラ。こんな時にギルドがケチんじゃないよ。」
「はい、ギルマス。ライト君。くれぐれも気を付けてね。」
「はい、行ってきます。」
僕とゴードンさんはギルドを後にして、南門へ向かった。
「でも、ギルマス。本当に良かったんですか。ライト君を行かせて。」
「ああ。小僧は不思議な奴だねえ。縁が在るというか導かれてるって言うか。彼奴は、何かをやってくれそうな気がするんだよ。小僧。ミーサを頼んだよ。」
僕は初めての実践という事も忘れて急いだ。
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