妖精さんの日常
「茸ー、茸ー、茸ー」
ブーン、ブーン。
羽音が森の中に響く。
虫みたいだとは言わせない。
僕は茸を探していた。
夕飯に美味しい茸サンドウィッチを食べるためだ。
「茸ー、茸ーってわあ」
所々に木が生えた、森にしては開けた場所。
といっても、妖精にとっては開けた場所、ってだけなのだけれど。
そこに色とりどりの茸が生えていた。
ジュルリ
「はっ」
ダメダメ、涎を垂らしちゃ。
小さな子供の夢と女王様の優しさがぶっ壊れてしまうよ。
さあ、採ろう採ろう。
『ボクタチトル?』
『ボクタチトル?』
茸達がいっせいにざわつく。
僕たち妖精は植物の声が聞こえる。
しかし、僕たちは草食なのだ。
なんて世界は残酷なんだろう。
そして茸達は僕たちにとって救いだった。
かなり芝居がかった言い方になってしまったけれど、茸達が僕らにとって救いなのは確かだ。
だって
「イイヨー、スキナダケトテッテネ」
この調子だから。
みっんなそうなのだ。
ボクラハホウシデイキツズケル、コガキエルコトハナイ、ダカラダイジョーブ、らしいのだが、
僕にはよくわからない。
カタコトの言葉でしか話せないのに、ときどき哲学を話していたりするところが
茸達の不思議だ。
ポヨンッと茸達の上に着地すると、隣の大きめの茸を抜こうとする。
『止めろッ』
鋭い声だった。
「カタコトじゃない?」
それが僕とドクキノコダとの出会いだった。
***
「ドクキノコダって明らかに毒茸だ、って言っただけだよね」
『違うッ』
「ウフフ」
ドクキノコダは面白い。
名前からして面白いのだけど。
他の茸はカタコトなのにドクキノコダは流暢に喋れるのだ。
茸らしく物知らずなところも多いんだけど、ときどき変に物知りだったりする。
あれっ、茸らしいのか?
***
その日は久しぶりに晴れたので、ドクキノコダに会いに行ったのだ
「ドクキノコダいるー?」
『タイヘン、タイヘン、黒がサラワレタ』
「え、ホント?」
そうしてドクキノコダはいなくなった。




