プロローグ
吾輩は猫である。
この有名な書き出しに習い、この話しを始めよう。
吾輩は怪物である。名前はまだない。
勿論、この言語を話す事が出来る理由は、元は人間であったからである。
気がついたら怪物になっていたのだ。
身長は150cm程。
顔は豚に近く、小太りな体型をしている。
体は緑色であり、どこか気持ちが悪い。
幸いなのは二足歩行なこと位だろうか。
今後この生物を便宜上「ゴブリン」とでも呼んでおこう。
そんなことを考えていると、自分の物でない記憶が思考に割り込んでくる。
どうやらこのゴブリンの記憶らしい。
しばらくその記憶を分析すると、いくつかの事が分かった。
一つはこのゴブリンという生物は、群れで行動する生物らしい。
何故私が単独かというと、自分以外の群れのゴブリンは人間に殺されたらしい。
逃げていた時に木の根に足を取られ、頭をぶつけたらしい。
その時のショックで私という人格が目覚めたようだ。
二つ目はこのゴブリンという生物は、人類の敵と認識されているらしい。
先程言った通り、自分以外の群れのゴブリンは人間に殺されたのだ。
向こうが攻撃してくる以上反撃はしなくてはならないが、出来れば殺しはしたくない。
こんな怪物の姿になってしまったとはいえ、心は人間なのだ。
それに戦って勝てる保証も無い。
故に極力人間を避けるように行動することに決める。
そして3つ目、元の体とは違い、この体は随分頑丈で力があるようだ。
試しにその辺の丈夫そうな枝、と言っても手で握れる程の枝だが、それを折ってみると簡単に折れた。
そこまで考えたところで、私は今の自分の装備を見なおしてみる。
と言っても装備しているものは2つ。
申し訳程度に腰に巻いている動物の皮とボロボロの短剣だ。
どう見積もっても単独で生きていくには貧弱すぎる。
それに私は短剣で戦う勇気は持ち合わせていない。
しかし、記憶によると自分よりも強いモンスターが相当数この森には居るようだ。
武器なしで生き残れるとは思えない。
とりあえず先ほど折った枝の先端を短剣で尖らせる、簡単な槍の完成だ。
何もないよりはマシだろう。
木の先に短剣をつけることも考えたが、それをしてしまうと短剣単体で使うことができなくなる。
切ったり捌いたり、森でのサバイバルに短剣はある程度必要なのだ。
早速その短剣で樹木に巻き付いていた蔦を切り落とす。
そしてそれでやりを体に結びつけ、私は歩き始めた。
ここでキャンプをしてもいいのだが、人間がまだ近くにいる可能性がある。
一刻も早くここを離れたい。
とりあえず逃げてきた方向とは逆の方向に行くことにした。




