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『知性の果てで、僕らは問いかける』  作者: α
【第二部:パーソナルとネットワークの時代】
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第一章:情報という名の神

1946年。ペンシルベニア大学・ムーア校舎の地下。


世界初の電子計算機――ENIAC(Electronic Numerical Integrator and Computer)が稼働を始めた。

その姿はまるで工場だった。高さ2.4m、長さ27m、真空管1万8000本、コンデンサ70000個、加熱時の消費電力は150kWにも及んだ。


だがそれは“単なる機械”ではない。


ENIACは「ノイマン型アーキテクチャ」以前のプログラム固定型マシンだった。

各計算手順は配線の差し替えによって設定される。

つまり、加算をしたい時と、乗算をしたい時とで、機械の内部構造そのものを手動で変更する必要があった。


それでもなお、ENIACは前例のない性能を持っていた。

1秒間に5000回の加算、357回の乗算。これは当時の人力計算の1万倍にあたる速度だった。



▶ ノイマンの革命:記憶するマシンへ


ENIACの開発と並行して、数学者ジョン・フォン・ノイマンは画期的な設計思想を発表する。


「プログラムをメモリに記憶させれば、機械を毎回配線しなくて済む」


この発想は、以下の5つの基本構成を持つ汎用計算機を定義した:

1.演算装置(ALU):数値の計算を行う

2.制御装置:命令を解釈し実行を指示

3.記憶装置(Memory):データと命令を格納

4.入力装置(Input):データや命令を外部から取り込む

5.出力装置(Output):計算結果を外部に伝える


この設計は後に「ノイマン型アーキテクチャ」と呼ばれ、現代すべてのコンピュータの基礎となった。



▶ トランジスタの登場:コンピュータの民主化


1947年、ベル研究所のショックレー、バーディーン、ブラッテンによって、トランジスタが発明される。

これは、電気信号の増幅やスイッチングを行う小型素子で、真空管よりも低発熱・高耐久・超小型だった。


トランジスタの登場により、コンピュータは以下のように進化する


•冷却が容易になり、動作安定性が向上

•消費電力が大幅に減少

•機器が小型化し、コストも低下

•集積回路(IC)化の基盤となる


この技術革新が後のパーソナルコンピュータやスマートデバイスへの道を開く。



▶ ARPANET:世界をつなぐ神経網の萌芽


1969年。アメリカ国防総省の研究プロジェクト「ARPANET」が稼働する。

その特徴は、「パケット通信」という新技術にあった。


それまでの通信は「回線交換方式」だった。

電話と同じく、通信中は一つの回線を占有する。これでは非効率だった。


しかしパケット通信では、データを「小さな単位パケット」に分割し、

複数の経路を通って送信し、受信側で再構築するという方法がとられた。


これにより:

•回線が混んでいても、迂回ルートで伝送可能

•一つのネットワークを複数の通信が共有可能

•通信の冗長性と安全性が劇的に向上


ARPANETは最初、わずか4つの大学間で始まった。

しかしこれは、後のインターネットの母体であり、

現代社会における“情報の循環系”の誕生だった。



▶ 情報の時代へ:記録は力となる


20世紀後半、人類は「情報」を神のように扱うようになっていく。


記憶装置は磁気テープからハードディスクへ、さらに半導体メモリへ。

入力装置はパンチカードからキーボードとマウスへ。

コンピュータは部屋の隅から、企業の中枢神経となっていった。


そしてある日、ひとりの若者がこう言い出す。

「これを、個人の手に届けよう」と。


彼の名は、スティーブ・ジョブズ。

そして――ポケットの中の世界が、始まる。

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