第二章:ポケットの中の世界 【PC革命とデジタル個人主義】
■ Altair 8800:革命の点火
1975年、アメリカ・ニューメキシコ州。
雑誌『Popular Electronics』の表紙を飾った青い金属箱。
それが、世界初の“個人向け”コンピュータとされる Altair 8800 だった。
搭載されたCPUは Intel 8080(2MHz)。メモリは256バイトから数キロバイト。
入力はフロントパネルのスイッチ群、出力はLEDの点灯。
モニターもキーボードもない、まるで暗号箱のような代物だった。
だが、この機械を見て人生を変えた若者がいた。
ビル・ゲイツとポール・アレン。
彼らはAltair用のBASICインタープリタを開発し、
「ソフトウェアを売る」という新しい概念を打ち立てた。
これが後の Microsoft の原点である。
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■ Apple IとII:コンピュータに“人格”を与えた男
同じ年、スティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックが作ったのがApple I。
これは木製ケースに収められた基板だったが、テレビ出力とキーボード入力ができたことが画期的だった。
そして1977年、Apple IIが発売される。
•MOS 6502(1MHz)プロセッサ搭載
•カラーグラフィック(280×192)対応
•BASICインタプリタ内蔵
•カセットテープによるプログラム保存
ここで初めて、コンピュータは“家庭に置ける電気製品”となった。
スティーブ・ジョブズの思想は明確だった。
「コンピュータは知識層だけの道具ではない。個人のための“自転車”だ」
つまり、人間の知性を加速するための補助輪として、誰もが直感的に使える存在でなければならなかった。
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■ Xerox PARC:GUIという魔法
1981年、ジョブズはカリフォルニア州パロアルトにある研究所を訪れる。
Xerox PARC(パロアルト研究所)。ここで彼は未来を見た。
•マウス操作
•ウィンドウ
•アイコン
•デスクトップメタファー
GUI(Graphical User Interface)――それは視覚で操作するOSだった。
当時の主流はコマンドライン。MS-DOSに代表される文字入力型インターフェースだ。
GUIは直感的で誰にでも扱え、“対話する機械”という概念を技術的に具現化していた。
ジョブズはそれを取り込み、1983年に Apple Lisa を、1984年には伝説的な Macintosh を発売する。
•System OS(初期Mac OS):完全GUI、ファイル操作もマウス主体
•サウンドとアニメーション効果
•WYSIWYG(見たままが印刷される)
Macintoshの誕生は、「人間中心の情報処理」という大転換を引き起こした。
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■ Microsoftの選択:汎用と支配
一方、MicrosoftはIBM PCにMS-DOSを提供することで圧倒的な普及を果たす。
IBM PCはオープンアーキテクチャであり、他社が“互換機”を作れたため、
Microsoftはソフトウェア市場を独占的に支配する構造を築く。
1985年、Windows 1.0がリリース。
当初はMacの模倣と批判されたが、次第に改良を重ね、
Windows 3.1、Windows 95でGUIの大衆化に成功。
•イベント駆動型プログラム
•マルチタスク風UI
•ファイルエクスプローラー、スタートメニュー
特にWindows 95ではスタートボタンという概念が登場し、GUIの標準化を象徴した。
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■ 技術の根幹:ヒューマンインタフェースとOS構造
この時代の技術的進化は、以下に集約される:
•OS設計:マルチタスク、仮想メモリ、ドライバ管理の発展
•UI/UX:視覚・触覚に訴える“直感性”の追求
•ハードウェア抽象化:BIOSとカーネルによる汎用性の確保
•ファイルシステム:FAT、HFSなどデータ構造の設計美
人間の行動を想定し、“どうやったら機械と会話できるか”という発想が、
この時代のコンピュータには色濃く現れていた。
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■ そして世界は手のひらへ
1990年代、技術はさらなる小型化と消費者化を迎え、
Palm、BlackBerry、そして――2007年、iPhoneが登場する。
それはただの携帯電話ではなかった。
GUIとタッチパネル、センサーと通信、アプリという概念がひとつに融合し、
人類は初めて「コンピュータをポケットに入れた」のだった。




