天才の彼女と凡才の俺
完結させるか迷いましたが・・・第二部ちょっとづつ書いてもいいかなと思いまして・・・
キンコーンカンコーン。と昔は授業が終わるたびに終了の鐘が鳴っていたそうだ。3限目の数学が終わり、俺は部屋のベットの上に倒れ込む。
今の学校はIT技術によって効率化され、この国の全ての授業が同じ教師によるネット配信になっている。昔あったらしい学校という施設は全て壊され、在宅に限らず、どこでもこのタブレット1つで授業が受けられるというわけだ。サボれそうだからいいじゃんだって?もちろん出席しているかはデータに残るし、タブレットについているカメラの所為で放置も居眠りもできない。顔認証ですべて把握されているし、出席率が悪い生徒は更生施設に送られるそうだ。そこに入れば最後・・・近くに住んでいた不良のお兄さんが、今では七三分けをした模範的なサラリーマンになっている。まるで心のない機械のように、毎日同じルーティーンで会社に向かっていくのを見かける。それを見て以来、俺の出席率は100%になったことは言うまでもないのかもしれない。
「次は・・・歴史か・・・今日は確か日本史だったから・・・」
ベットに倒れ込んでばかりいられない、次の授業まであと十分。せっせと次の授業の準備をする。
書き写す用のタブレットを操作し、歴史の授業用に切り替え、教科書の入ったタブレットも日本史の教科書に切り替えておく。
昔まですべて紙だったそうだが、今は全てデータで管理できるように、配布されるタブレットに授業で必要なものは全て入っている。
準備が終わり、授業まであと5分ほどという所で・・・・。
一戸建ての二階にある俺の部屋に向かって走ってくる音が聞こえる。
「聖ちゃん!!教科書タブが逝っちゃった!!どうしよ!?」
俺の部屋がバンッと開けられ、飛び出してきたのは幼馴染の碓氷 凛。同い年の女性だ。もし学校があったなら、間違いなくあだ名は何でもできる委員長といういで立ちなのだが・・・ひどい機械音痴だ。ちなみに俺の名前は星野 聖。
「ちゃん付けはやめろ・・・もう16歳だぞ?」
「そんなことはどうでもいいの!厚生施設だけは・・・・あそこだけは・・・」
「俺の見せてやるから・・・落ち着け。あとそのタブレットは今日中に修理依頼申請しとけよ」
「ありがとう!やっぱり持つべきものは気軽に家に突撃できる幼馴染だよね!」
「せめて呼び鈴くらいは鳴らせよな・・・」
すぐ隣の家に住んでいる凛は幼稚園からの付き合いだ。と言うよりは、今では子供の数も少なく、同い年で顔見知りって言うのも、片手で数えるくらいしかいないだろう。
授業が始まり、真剣に授業を受ける幼馴染の顔を見ながら思う。
(確かこいつは・・・何の問題もなければ、将来はあの大企業の役員になるんだよな・・・)
この世界では生まれた瞬間に遺伝子情報が読み取られ、その人間の得手不得手がある程度把握されている。そして中学卒業時に再度国から診断され、有能は人物は既にある程度の人生が約束される。
凛はそのうちの一人だ。24歳までは学問に取り組み、その後数年の社会経験を得て、役員・・・いわば会社でいう所の上層部の一員になる。
もちろん恋愛においても、より優秀な遺伝子をを残すためにはどの人が適任か。そんなことまでわかる。
すべてにおいて強制ではない。将来の仕事も、恋人もそれが適任だと知らされるだけであって、必ずそうしなければいけないというわけではない。でも大体は親がその適性に応じた英才教育をするため、ほとんどの人が適職に就くのは間違いないんだが・・・。
因みに俺の適性は何でもそつなくこなせる。器用貧乏だそうだ。得意なことがなく、何をやっても平凡。なんにでもなれるという言い方もできるが・・・。特徴がないっていうのは何ともつまんない人生になりそうだ。
「なに?私の顔をじろじろ見て・・・聖ちゃん!真剣に授業うけるように!知識はこの先の人生で絶対に役に立つから!」
「そうとは思わないんだけどな・・・。お前ならまだしも、俺なんてどうせ下働きで飼殺される人生だし」
「すぐにネガティブにならない!聖ちゃんは頑張ればなんにでもなれるんだから、将来私と一緒に働けるかもしれないよ?」
ふひひと俺の顔を見て笑う凛。
そんな未来が来れば・・・俺の人生もちょっとは楽しそうだな・・・っと思うが、そんなことを口に出すとこいつは調子に乗るので、心の中だけでとどめておく。
「会社のお偉いさんとかごめんだな。心労で早死にしそうだしな。お前の主夫とかならいいぞ?炊事洗濯掃除なんでもできるしな!」
「むぅ~!・・・それもいいけど・・・私は聖ちゃんとおんなじ景色が見たいな~?だめ?一緒に前線で戦おう!」
「はいはい・・・。お前が数年後おんなじことを俺に言えたら、その時は考えてやるよ」
3年もすればお互い違う道を歩くだろう。俺はこの幼馴染・・・凛の事が好きだ。しかし格が違うのだ。俺なんかと一緒に居ていい人ではない。
将来はきっと、凜に相応しい男が現れて、そいつと人生を歩むだろう。
今は俺くらいしか同年代の異性を知らないから、俺のことを好きでいてくれているんだろうが・・・きっとこの先、凜には沢山の出会いがあるだろう。その中で、俺なんかよりいい人が絶対にいるはずだ。
そんなことを想うと胸が張り裂けそうになった時期もあったけど・・・。俺は彼女の足枷にはなりたくない。いつしかそういう想いの方が強くなってしまった。
とはいえ・・・俺も俺なりに彼女の横に立つためにがんばるつもりだが・・・。
「数年どころか、数十年たっても言えるよ?私の隣にいてほしいよ聖ちゃん」
そんなことをあっけらかんち言い放つ天才の彼女の期待に応えるべく、凡人の俺はひそかに頭を痛めるのだった。
お読みいただきありがとうございました。モチベが続けば書いていきたいと思います。




